取引先から承継の話を聞いたとき、電設業で先に確かめること
たとえば、運転資金の更新面談の終わりぎわに、電設業の社長が言う。来年で70になる、誰かに引き継げないか。ここから先、窓口で確かめられること、自機関で支えられること、専門の機関に渡すところを、監督指針・法令・公的資料の範囲で書きました。
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取引先の承継の相談は、メインバンクの窓口にも届いている
金融庁の企業アンケート(2026年1月調査、回答7,803社)で、事業承継・M&Aの相談先は、会計事務所・税理士法人が42.0%で最多、メインバンクが37.8%で2位でした。自社の役員・社員が21.6%、M&Aの専門業者(仲介・FA)が16.2%、事業承継・引継ぎ支援センターが7.0%、商工会・商工会議所が5.9%と続き、誰にも相談していない・できないも18.4%あります。この設問は、いま相談している先と、これから相談したい先の両方を含む複数回答です。債務者区分が上位の会社ほど、メインバンクを挙げる割合が高いと、金融庁は整理しています。
状態のよい会社ほど、メインバンクを相談先に挙げる。そうだとすれば、承継の相談で最初に聞く立場になるのは、融資の担当者です。ところが、稟議に回す書類の中に、その答えはほとんど載っていません。
電設業の取引先では、与信を決める書類と、承継の値打ちを決める書類が、別々の紙に載っている。
決算書、試算表、借入明細は与信の紙です。承継の値打ちを左右するのは、許可通知書、資格者の免状、メーカーとの契約書です。
融資の書類に載らない、電設業の7つの確認点
電設承継パートナーズ(松本電業株式会社)|電設業の取引先の承継で確かめる7点|2026年10月14日時点|条文は2026年10月14日に確認
| 確かめること | 見る書類 | 理由と根拠 |
|---|---|---|
| 1許可の業種と、元請・公共の比率 一般か特定か。主な元請は何社か。公共工事の入札に参加しているか | 許可通知書、経営事項審査の結果通知、入札参加資格の通知、工事別の売上の内訳 | 承継の認可を受けると、承継人は過去の監督処分や経審の結果も引き継ぎます(国土交通省 建設業許可事務ガイドライン)。経審の技術力の項目に、元請完成工事高があります(埼玉県の制度解説)。入札参加資格の手続は発注者ごとに違うので、発注者に確認します |
| 2経営業務の管理体制(経管) 要件を満たす常勤役員が社長ひとりか。補佐者を置く形か | 許可通知書、登記簿の役員欄、役員変更の届出控え | 基準を欠くと2週間以内の届出が必要で、許可行政庁は許可を取り消さなければなりません(建設業法11条5項・29条1項1号)。要件には、常勤役員等の1人が満たす形のほか、補佐者を置く形があります(建設業法施行規則7条1号)。株式譲渡のあとに前社長が退任するなら、後任の体制を2週間以内に書類で示せるよう、先に整えておきます(同7条の2第2項) |
| 3営業所技術者(旧:専任技術者) 営業所ごとに誰か。社長と同じ人か。退職の予定はないか | 資格者証、雇用の記録 | 代わりの人がいれば2週間以内に書類を出し、基準を欠くと同じく取消しの対象です(建設業法11条4項・5項、29条1項1号)。条文上の名称は、2024年12月13日から「営業所技術者」です |
| 4主任電気工事士と、登録(みなし登録) 一般用電気工事を行う営業所ごとに選任されているか。社長本人が有資格者で、そのために選任していない営業所はないか | 電気工事業の登録(または届出)の控え、免状、実務経験の記録 | 社長が第一種電気工事士などで、その営業所の業務に自ら主として従事する場合は選任が不要です。社長が抜けると選任が必要になり、欠けたときは知った日から2週間以内に選任します(電気工事業法19条)。建設業許可を持つ「みなし登録」の会社にも同じ規定が適用されます(同法34条) |
| 5社会保険の適用事業所の届出 全営業所で、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の届出を済ませているか | 年金事務所・公共職業安定所への届出の控え | 2020年10月以降、全営業所での届出が許可の基準に入っています。労働者ごとの加入までは基準にしていません(建設業法施行規則7条2号) |
| 6運転資金の中身 完成工事未収入金、未成工事支出金・未成工事受入金、買掛金。決算日に未完成の工事はどれだけあるか | 試算表、工事別の原価台帳、元請別の未収入金、仕入先別の買掛金の残高 | 建設業の財務諸表には、未成工事支出金、未成工事受入金、工事損失引当金の専用の科目があります(国土交通省、2009年)。決算日に未完成の工事の原価と前受金を、工事ごとの原価の裏づけと、赤字の見込みの工事への引当の有無で確かめます(一般論) |
| 7メーカー・代理店の口座と、保守契約 特約店・代理店の契約はあるか。保守契約の相手方と期間、解約の条件はどうか | 特約店・代理店の契約書、保守契約書、仕入先別の買掛金の残高 | 株式譲渡では会社そのものは変わりませんが、契約書によっては、株主の変更に承諾を求める条項があります。条項の有無は契約ごとに違うので、契約書で確かめます(一般論) |
この表の根拠のうち、条文を示した行は2026年10月14日にe-Govで確認しました。個別の可否は、行政書士と許可行政庁の窓口で確認してください。
メインの取引口座を預かる金融機関には、書類にないものも見えています。元請ごとの入金と、仕入先ごとの支払いが、月ごとにどんな間隔で動いているか。決算書には年に一度の断面しか出ませんが、口座には毎月の動きが残っています。
1つでも「社長ひとりの名義」という答えが出たら、承継の話はそこから始まります。株式譲渡・事業譲渡・廃業で、許可と登録がどう残るかは許可・登録の承継早見表に、印刷用の1枚でまとめました。主任電気工事士の論点は主任電気工事士がいないとき、営業所技術者の退職は営業所技術者が辞めるとき、経管は経営業務の管理責任者に書きました。
業種が違えば、名義や契約が載っている場所も違う
電設業と一口に言っても、取引先が持っている許可と資格は同じではありません。条文に根拠がある行と、一般的な見方の行があり、後者には(一般論)と付けました。
| 業種 | 名義や契約が載っている場所 | 先に確かめる一点 |
|---|---|---|
| 電気工事 | 建設業許可(電気工事業)の経管・営業所技術者。電気工事業法の主任電気工事士 | 社長が主任電気工事士を兼ねているために、選任のない営業所がないか |
| 電気通信工事 | 建設業許可(電気通信工事業)の経管・営業所技術者 | 特定建設業の許可があるか。電気工事業は指定建設業なので、特定建設業の営業所技術者は1級の国家資格者等(または国土交通大臣が同等以上と認定した人)に限られます。電気通信工事業は指定建設業ではないため、一定の指導監督的実務経験を持つ人でもなれる場合があります(建設業法15条2号、同法施行令5条の2) |
| 消防設備工事・点検 | 消防設備士の免状(工事は甲種、整備は甲種・乙種)、点検資格者 | 免状を持つのが誰か。講習は、免状交付日以後の最初の4月1日から2年以内、その後は講習日以後の最初の4月1日から5年以内ごとに受けます(消防法17条の5・17条の6・17条の10、同法施行規則33条の17) |
| 電材卸・電気機器卸 | メーカーとの特約店・代理店の契約。仕入先別の買掛金と在庫(一般論) | 契約の承継・解除・株主変更の条項。電線の在庫は銅建値の影響を受け、年度平均は2019年度の1トン68万1,600円から2025年度の169万5,400円へ約2.5倍(日本電線工業会)。帳簿の金額と市場の値が離れていないか |
| 配電盤・制御盤製造 | 受注ごとの仕掛品の原価と検収。設計者と技能者(一般論) | 検収待ちの案件の原価の裏づけ。設計できる人の年齢構成 |
| 計装工事 | 計装士などの資格者。工場・プラント側との保守契約(一般論) | 保守契約の相手方・期間・更新の条件 |
| 防犯・防災(弱電) | 施工する工事の種類ごとの許可と資格(一般論) | 許可通知書で、どの業種の許可で施工しているか |
電気工事業の公的な数字は、下調べの物差しにとどめる
事業性評価の下調べには、国土交通省の「令和6年度建設業構造実態調査」の数字が使えます。建設業専業企業の標本調査を、推定の母集団(電気工事業31,329社)に復元した値なので、個別の会社の評価に当てはめる数字ではありません。
| 指標 | 電気工事業 | 建設業全体 |
|---|---|---|
| 1社あたり平均完成工事高 | 2億7,440万円 | 3億4,400万円 |
| 売上高経常利益率 | 8.473% | 5.793% |
| 経常損失(赤字)の会社の割合 | 18.07% | 21.82% |
| 経営上の課題に「人材不足」を挙げた割合 | 78.92% | 78.94% |
| 経営上の課題に「後継者問題」を挙げた割合 | 38.77% | 38.91% |
| 今後の経営方針が「現状維持」の割合 | 60.48% | 61.64% |
| 今後の経営方針が「撤退」の割合 | 1.614% | 2.581% |
電気工事業単独の後継者不在率は、公開資料では確認できません。建設業全体では、帝国データバンクの2025年の調査で57.3%でした。後継者問題を課題に挙げた電気工事業者が38.77%、組織変更の意向で他社との合併を挙げたのが2.663%、協業化や業務提携を挙げたのが12.11%(同じ調査)という並びを見ると、課題に感じていても、合併まで考える会社は少数です。年次と出典つきの一覧は電設業界の事業承継データにあります。
経営者保証は、最終契約に入れる条項まで金融機関の着眼点になった
金融庁が集計した民間金融機関529機関の2025年度の実績では、代表者が交代したとき、旧経営者の保証を解除して新経営者とも結ばなかったのは16.7%(6,710件)でした。旧経営者の保証を解除せず、新経営者とも結ばなかった、つまり旧経営者に保証が残ったままのものは39.7%(15,932件)。旧経営者を解除して新経営者と結んだのが40.6%(16,304件)、両方に残った二重徴求が3.0%(1,224件)です。M&Aに限らない、代表者交代全体の数字です。新規融資のうち、経営者保証に依存しない融資の割合は55.7%(2025年度。前年度は52.9%)でした。
ルールの土台は、「経営者保証に関するガイドライン」の事業承継時の特則(2020年4月適用)です。前経営者と後継者の双方から二重に保証を求めないことを原則とし、前経営者は実質的な経営権を持たない限り「第三者」にあたる可能性があるとして、保証解除に向けた見直しを求めています。
金融庁は、2026年4月1日から適用する「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」の改正で、M&A・事業承継の場面の着眼点を足しました。今回加わったのは次の3点です。
- 前経営者の保証債務を後継者に当然に引き継がせず、保証契約の必要性を改めて検討するにあたって、前経営者に丁寧な意向聴取を行うこと
- M&A・事業承継の成立前に、経営者保証の取扱いについて事前相談を勧め、相談があれば丁寧に対応する態勢(自らM&A・事業承継の支援を行っている場合をはじめ、状況に応じて)
- 前経営者の保証の解除や後継者への移行が行われる場合に、最終契約でクロージング条件として明確に定めること、解除・移行がされなかった場合を想定した条項を設けることに向けた、調整や支援の態勢
前経営者から解除を求められたときの判断の材料(前経営者が実質的な経営権・支配権を持ち続けているか、保証以外の手段による既存債権の保全の状況、法人の資産・収益力による返済能力)は、従来から指針にある書き方です。M&A・事業承継を把握した既存の保証契約についても、どの部分が十分でないために保証が必要なのか、どう改善すれば変更・解除の可能性が高まるのかを説明し、記録することが求められています。
電設業の場面に置くと、こうなります。社長ひとりに許可と資格が載っている電気工事会社で、株式譲渡をして社長が退く。借入は会社に残り、保証は社長個人に残る。社長の退任後は、買い手が経管と営業所技術者の後任を立てられるかが許可の条件で、同時に、社長が「実質的な経営権のない第三者」になるかどうかが保証の論点になります。
金融庁は、中小M&Aガイドラインが、保証の解除や譲り受け側への移行を想定する場合に、仲介者・FAに対して、最終契約で譲り受け側の義務として明確に位置づけることの検討を求めている、と説明しています。当社は、この検討を契約の前に進めるよう取引先に案内します。解除するかどうかを決めるのは貸し手で、当社が約束できることではありません。
保証を外す条件は、売却を決めてからではなく、最終契約の前に貸し手と話しておく。
国にも窓口が増えました。金融庁は2026年5月1日、「M&A・事業承継時における経営者保証情報ネットワーク」を開設しています。経営者・後継者が相談シートをメールで送ると、関係省庁を経由して、保証契約のある金融機関や信用保証協会に状況が共有されます。金融機関・信用保証協会の側からも、保証契約の取扱いを協議中の相手に向けて相談できます。ここでいう金融機関は、全国の銀行、信用金庫、信用組合のほか、日本政策金融公庫と商工組合中央金庫です。共有には必要な関係者の承諾が要ります。個別の案件のあっせん・仲介・調停を行うものではなく、保証の解除を確約するものでもないと、金融庁は明記しています。
信用保証協会の保証付き融資については、2022年12月の「経営者保証改革プログラム」に、保証料の上乗せ負担により、経営者が保証の提供を選択できる信用保証制度を「2024年4月~」に創設する、と記載されています。現在の要件と料率は、各保証協会の公表資料で確認してください。経営者保証の考え方は、社長向けに会社を売ったら社長の個人保証は外れるかにまとめています。
窓口で支えられること、当社が補うこと、専門機関に渡すところ
役割は競合させずに分けます。当社が見ているのは、電設業の評価と、買い手探しです。融資の判断、保証の解除の可否、税額の計算、許可の申請書の作成、法律の判断は、いずれも当社は行いません。
| 場面 | 金融機関・支援機関の窓口 | 当社 | 公的・専門機関 |
|---|---|---|---|
| 社長の意向の聞き取り 売る・親族や社員に継ぐ・たたむ・現状維持 | 定期の面談で聞く。保証の説明の機会に、承継の予定を確かめる | 売る場合の進め方と、売らない道を同じ重さで説明する。売ると決まっていなくても相談できる | 親族・従業員への承継は、引継ぎ支援センターが事業承継計画の策定などを支援。税務は税理士 |
| 電設業の評価 許可・資格者・口座 | 上の7点で、名義が1人に集中していないかに気づく | 買い手が何を確かめるかを説明する | 許可の確認と申請書は行政書士 |
| 買い手探し・条件の調整 | 自機関での支援、提携先の選定、プラットフォームの活用 | 電設業の買い手の探索と、秘密を守った条件の調整 | 引継ぎ支援センター(第三者承継のマッチング)、後継者人材バンク、ほかの仲介・FA |
| 経営者保証 | 事前相談の受付、解除の判断、最終契約への調整・支援 | 最終契約に解除の条項と期限を入れる検討を案内する。法律上の判断はしない | 契約書の確認は弁護士。国の経営者保証情報ネットワーク、信用保証協会 |
| 資金 株式の買取資金、運転資金 | 融資の判断 | 融資は扱わない | 信用保証協会 |
| 承継認可、届出、登記 | 特になし | 手続の時期と順番を説明する | 行政書士・司法書士・税理士 |
顧問税理士との連携は顧問税理士・会計事務所の先生へに書きました。窓口と税理士の双方に相談が届いている取引先では、同じ5〜7点を、どちらからでも確かめられます。
引継ぎ支援センターと後継者人材バンクは、併用できる公的な窓口
事業承継・引継ぎ支援センターは、国が47都道府県(48か所)に設置した公的な相談窓口です。後継者のいない経営者には、第三者承継のマッチングと成約に向けたサポートを行っています。後継者人材バンクは、創業を目指す個人と後継者不在の会社を引き合わせる事業で、全国のセンターが運営しています(中小企業基盤整備機構)。
令和7年度の実績は、新規相談者が24,030者で過去最多、第三者承継の成約が2,265件で過去最多でした。後継者人材バンクの成約も114件で過去最多です。成約した譲渡企業の業種では、建設業が11.1%でした。譲渡企業の売上は1億円以下が68.5%を占めます(3,000万円以下36.9%と、3,000万円超〜1億円以下31.6%を、当社が合算した値です)。
当社は、この窓口の代わりではありません。取引先の状況によって、先に案内したほうがよい窓口が変わります。
- 売上の規模が小さく、当社の最低成功報酬300万円(手数料のページに全額を公開しています)が重い会社。センターを先にお勧めします
- 創業希望者に会社を引き継ぎたい会社。後継者人材バンクが向きます。個人が電設業の会社を継ぐときの許可の壁は建設業許可は買える?に書きました
- 親族や従業員への承継で、事業承継計画の策定から始めたい会社。センターが向きます
- 電設業の許可・資格者・メーカー口座の承継が条件の中心になる案件。当社も選択肢になります
センターは、M&Aの実行に関するセカンドオピニオンにも応じるとしています(中小企業基盤整備機構)。どちらに先に相談するかは、取引先が決めて構いません。
金融機関側の制約は、当社が代わりに判断できない
窓口が紹介に踏み出すときに気になるのは、他業の禁止、金融商品取引法、利益相反、紹介の対価、情報共有の同意の5点です。当社が一次資料で確認できたことと、できていないことを分けました。確認できていない欄は、貴機関の法務・コンプライアンス部門の判断事項です。信用保証協会、商工会議所、引継ぎ支援センターには、それぞれの設置根拠の法令と規程があり、ここでは扱っていません。
| 論点 | 確認できたこと | 確認できていないこと |
|---|---|---|
| 他業の禁止と付随業務 | 銀行法12条は、銀行が営める業務を10条・11条の業務などに限っています。10条2項は、固有業務のほかに銀行業に付随する業務を認めています。金融庁の監督指針は、取引先企業に対して行うM&Aに関する業務を「その他の付随業務」に該当すると明記し(Ⅲ-4-2-2(1))、優越的地位の濫用の防止、提供するサービスの内容・対価の書面での明示、付随業務で得た顧客情報の目的外使用の防止について態勢を求めています。信用金庫には、信用金庫法53条3項に付随業務の規定があり、監督指針は信用金庫にも準用されています(Ⅴ-3-6) | 紹介にとどまる関わり方か、媒介まで行う関わり方かで、付随業務に収まるかどうか。機関ごとの判断で、当社は可否を述べません |
| 金融商品取引法 | 33条1項は、銀行、協同組織金融機関その他政令で定める金融機関が、有価証券関連業または投資運用業を行うことを禁じています(ただし書あり) | 非上場株式の譲渡の媒介がこの規制にどう関わるかを整理した一次資料は、当社では確認できていません |
| 利益相反 | 銀行法13条の3の2は、顧客の利益が不当に害されないよう、業務に関する情報を適正に管理し、実施状況を監視する体制の整備を求めています(監督指針Ⅲ-4-12)。金融庁は、銀行が新経営者側から委任を受けて取りまとめを行う場合には、利益相反管理を適切に行ったうえで対応する必要がある、と2026年2月の公表資料で述べています | 貸し手、保証の当事者、紹介者が重なる場面の具体的な線引きは、機関ごとの方針によります。当社も、売り手・買い手の双方から手数料を受け取る仲介者です。当社自身の利益相反の扱いは利益相反管理方針に書きました |
| 紹介に対する対価の受領 | 監督指針は、M&Aに関する業務を付随業務としたうえで、取引先に提供するサービスの内容や対価などの契約内容を、書面などで明示するよう求めています(Ⅲ-4-2-2(1)②) | 第三者から紹介の対価を受け取る場合の扱いを直接定めた記述は、当社が読んだ監督指針の本編(令和8年10月版)には見つけられませんでした。受け取りの可否は貴機関の規程によります |
| 情報共有の同意 | 個人情報保護法27条1項は、法令に基づく場合などの例外を除き、あらかじめ本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供してはならないと定めています。法人の情報そのものは個人情報ではありませんが(同法2条1項は生存する個人に関する情報)、社長個人の保証債務や資産、家族の情報は含まれます | どこまでの情報を、どんな形(書面か、口頭か)の同意で渡せるかは、貴機関の規程によります。 |
東京都の事業と国の補助金は、紹介先の登録状況で扱いが変わる
東京都は2026年9月7日から、地域金融機関と連携する「事業承継ネットワーク構築支援事業」で、M&Aによる第三者承継の支援を始めました。内容は、地域金融機関から紹介を受けた中小企業診断士等による伴走支援、譲渡企業がM&A支援機関に登録したときの奨励金(10万円)、M&A成立時に譲渡企業が支払う手数料への補助(上限200万円、補助率3分の2)です。奨励金と補助金を受け取るのは譲渡企業で、金融機関ではありません。対象となる企業の所在地や、紹介元の金融機関の条件は、発表資料に書かれていません。窓口が紹介する前に、事業の事務局で確認してください。
都の発表では、この支援に参加するM&A支援機関は、公募で選ばれた株式会社トランビと株式会社バトンズの2機関で、マッチング支援を受けるにはこの2機関を利用するように書かれています。当社は参加機関ではありません。当社を経由した手数料が都の補助の対象になるかは確認できていないため、対象になるとは案内しません。
国の事業承継・M&A補助金(16次公募)も同じ構造です。専門家活用枠で、仲介・FAの手数料が補助対象になるのは、M&A支援機関登録制度に登録された事業者への支払いだけです。登録の確認は交付決定時で、契約・発注は交付決定日以降でなければなりません。申請受付は2026年10月2日から11月6日17時です。当社は現時点で登録が完了していないので、当社の手数料は補助の対象になりません。登録状況は手数料のページに載せ、変わったら更新します。
金融庁の監督指針は、金融機関がM&A支援を行う場合に、取引先が安心してソリューションの提供を頼めるよう、M&A支援機関登録制度の活用を含む適切な説明・広報を実施することが重要だとしています(Ⅱ-5-2-1(2)の(注2))。紹介先を選ぶとき、登録の有無を確かめるのは、この趣旨に沿った見方です。
都の補助を使いたい取引先には2機関、公的窓口を使いたい取引先にはセンター、電設業の許可・資格者・口座の承継が条件の中心になる案件には当社、というように、取引先が選べる形が望ましいと考えています。取引先がすでにプラットフォームに案件を載せている場合でも、電設業の評価の点だけを当社に聞く、という使い方ができます。
紹介の型は3つ
- 匿名の事前相談。業種、地域、従業員の規模、困りごとだけで相談できます。担当者のお名前も、返信を受け取れる呼び名で構いません。入口は金融機関・支援機関向けの相談窓口です
- 取引先の同意を得た紹介。取引先が当社と会うと決めたら、窓口から当社へ連絡します。社名と連絡先は、同意のあとにお知らせください
- 勉強会・共同面談。支店や担当者向けの説明、取引先との面談への同席です。融資と保証の話は窓口が、買い手側の見方は当社が受け持ちます
社名や連絡先を渡してよいかどうかは、貴機関の規程と、取引先の同意で決まります。このページの案内は、貴機関の規程の代わりではありません。
ご紹介の条件
ご紹介の条件は、現時点では公開していません。このページには、金額も率も書いていません。取引先が当社に支払う手数料は、手数料のページに、売り手・買い手の双方の金額を全額公開しています。
当社の立場
松本電業は1950年創業、東京都台東区の電設資材の商社です。工事店や盤メーカーに資材を納める側にいるので、電設業の会社が、少ない人数の許可と資格で回っていること、元請の入金と仕入の支払いの時間差に資金繰りが左右されることは、仕事の構造として知っています。個別の会社の事情を知っているという意味ではありません。
M&A支援機関登録制度への登録は、現時点で完了していません。当社は電設資材の商社なので、売り手や買い手が本業の取引先であることがあります。当社自身が買い手の候補になりうる場面も含めて、利益相反管理方針に先に書きました。中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」への対応は、遵守の内容として具体的に開示しています。
窓口で使える資料
- 事業承継の準備チェックリスト:印刷して、登録なしでそのまま使えます
- 企業価値の目安の簡易診断:匿名で試算できます。税務上の評価ではありません
- 許可・登録の承継早見表:売る・たたむ・相続するときに、許可と登録がどうなるか
- 電設業界の事業承継データ:公的統計を、年次と出典つきでまとめています
- 手数料:売り手・買い手とも全額を公開しています
- 中小M&Aガイドラインの遵守と利益相反管理方針
- 論点別の記事: 経営者保証、 みなし登録、 電気工事会社・電材卸の売却相場
取引先の選べる道は、売るだけではない
親族や社員に継ぐ、たたむ、いまのまま続ける。どれも、取引先にとって同じ重さの選択肢です。売る以外の道は廃業以外の道に、借入が残っている場合は借金があっても売れるか、廃業を選ぶ取引先には廃業届を出す前に確かめることをまとめています。
よくある質問
取引先を紹介すると、融資や保証の判断に当社が関わることになりますか。
紹介料はいくらですか。金融機関は受け取れますか。
社名や担当者名を出さずに相談できますか。
引継ぎ支援センターや後継者人材バンクに案内したほうがよい取引先は、どんな会社ですか。
東京都の事業や補助金を使いたい取引先は、当社に紹介できますか。
出典
- 金融庁「企業アンケート調査の結果」(2026年6月30日公表、2026年1月調査):資料PDF
- 金融庁「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」(本編、令和8年10月):PDF。2026年4月1日適用の改正の概要と新旧対照表:2026年2月20日公表ページ(コメントに対する金融庁の考え方を含む)
- 金融庁「『M&A・事業承継時における経営者保証情報ネットワーク』の開設について」(2026年5月1日):ページ
- 金融庁「『経営者保証に関するガイドライン』等の活用実績(2025年度)」:PDF。「経営者保証改革プログラム」(2022年12月23日):PDF
- 全国銀行協会掲載「事業承継時に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」:PDF
- e-Gov法令検索:銀行法、信用金庫法、金融商品取引法、個人情報の保護に関する法律、建設業法、建設業法施行規則、電気工事業法、消防法(2026年10月14日に確認)
- 国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」【第17条の2関係】:PDF。「建設業法施行規則の一部改正等について」(2009年12月、勘定科目):PDF
- 国土交通省「令和6年度建設業構造実態調査」:ページ
- 埼玉県「経営事項審査制度とは」:ページ
- 帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」:ページ
- 日本電線工業会「国内銅建値(月平均)推移表」:PDF
- 中小企業基盤整備機構「令和7年度 事業承継・引継ぎ支援センターの実績について」(2026年5月29日):PDF。「事業承継・引継ぎポータル」:ページ
- 東京都産業労働局「『地域金融機関による事業承継ネットワーク構築支援事業』M&Aによる第三者承継支援を新たに開始します」(2026年9月4日):報道発表資料
- 事業承継・M&A補助金事務局(16次公募):公募ページ