配電盤・制御盤メーカーのM&A・売却・事業承継
盤メーカーの値打ちは、工場の設備よりも、盤を設計できる人、図面を出してくれる取引先、品質を示す認定にあります。決算書にはどれも載りません。運営の松本電業は1950年から電設資材を卸してきた会社で、部材を扱う側から、この3つを一つずつ確かめる方法を整理しました。
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- 相談は無料
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盤製造業界の現在地
数字はすべて官公庁・業界団体の一次資料から引用し、出典と年次を明記しています。 他社の記事に流通している出典不明の数値は使いません。
盤製造の承継で、実際につまずくところ。
許認可と有資格者の整理は、譲渡が成立するかどうかそのものを左右します。 ここを後回しにすると、条件が固まってから話が振り出しに戻ります。
盤の製造そのものに事業の許可は見当たらない。だから認定と人が評価の中心になる
建設業許可や電気工事業の登録のように、事業そのものに付く許可の制度は、盤の製造・販売では見当たりません(使う部材や納入先によって適用される規格や法令は別にあります)。買い手から見た参入障壁は、設計できる人、図面が来る取引先、品質の証明の3つに絞られます。
JSIA優良工場認定、ISO 9001、主要な取引先との取引年数、設計者の保有資格と経験年数を、文書にして並べます。許可がない業種では、これらを書類にできるかどうかが、買い手にとっての信用の根拠になります。
据付や接続まで請けているなら、工事の許可・登録・通知を確かめる
工場で作った盤を現場に据え付け、電線をつなぐところまで請けているなら、その部分は電気工事に当たる可能性があります。電気工事業法の「電気工事」は、電気工事士法上の電気工事から、家庭用電気機械器具の販売に付随する工事を除いたものです(同法2条1項)。電気工事業を営むには登録が要り、自家用電気工作物の工事だけなら事前の通知で足ります(同法3条、17条の2)。建設業許可を持っていれば、登録ではなくみなし登録電気工事業者として扱われます(同法34条)。一件500万円未満の工事なら建設業許可は要りません(建設業法施行令1条の2)。一般用電気工事を行う営業所には主任電気工事士の選任が要りますが、役員のうちの1人が第一種電気工事士(または第二種で実務3年以上)で、その営業所に主として従事していれば、選任は不要です(同法19条)。社長が兼ねている会社は、社長が退くと体制が欠けます。
売上を「製造」と「据付・工事」に分けて、工事側の許可、登録または通知、主任電気工事士を担っている人を最初に棚卸しします。個別の判断は、行政書士か管轄の窓口で確認してください。みなし登録と主任電気工事士は、専用の記事にまとめています。
JSIA優良工場認定は、技術者の在籍で成り立っている
認定の審査基準には、設計・製造・検査に関する国家資格等を持つ技術者の在籍義務が入っています(JSIAの制度説明)。社長や古参の設計者の資格で認定を維持している場合、その人が退くと要件を満たせなくなるおそれがあります。株式譲渡で法人が変わらなくても、人が変われば認定の前提が変わります。認定の名義の扱いや再審査が要る場面は、JSIAの規程で決まるので、手元の資料だけでは判断できません。
認定を維持している技術者の名前、資格、年齢、次に引き継ぐ人を一覧にします。そのうえで、譲渡の形式ごとに認定がどう扱われるかをJSIAの事務局に確認する手順を、承継のスケジュールに入れます。
ここまで読んで「うちはどうだろう」と思われたら、 そこがご相談のタイミングです。
売却をお決めでなくて結構です。費用はかかりません。匿名でもかまいません。
許可・登録を、もっと詳しく
- 建設業許可・電気工事業登録は、売る・たたむ・相続でどうなるか(早見表) 据付や接続の工事を請けている場合の、許可の承継方法ごとの違い
- みなし登録電気工事業者とは 建設業許可を持つ会社の、電気工事業法上の扱いと届出
- 主任電気工事士がいない・退職したら 2週間以内の選任と、会社を続ける・引き継ぐ道
決算書に出ない、盤製造の値打ち。
盤を設計できる人が何人いて、何歳か
単線結線図を読み、シーケンスを組み、部材を選んで収まりまで決められる人が、社内に何人いるか。この業種の値打ちはそこに集まります。金融機関が与信で使う『業種別審査事典』も、競争力の決め手として、CADやシーケンスプログラミングの技術を高めて設計力を強化することを挙げています。JSIA優良工場の認定にも、設計・製造・検査に関する国家資格等を持つ技術者の在籍が、審査基準に入っています(JSIAの制度説明)。
設計者は案件の図面を実際に描ける人で、育てるには案件を何本もこなす年数がかかります。受注があっても描ける人が足りなければ売上は上がらないので、買い手は設備よりも先に、この人たちが辞めずに残るかを確かめます。たとえば60代の設計者が2人で下に誰もいない会社と、50代・40代・30代が並ぶ会社では、同じ売上でも買い手が置く値段は変わります。
図面が来る取引先の数と、続き方
『業種別審査事典』は、この業種の事業性評価の着眼点として、ゼネコン・ハウスメーカー等の建設業者、電気工事事業者、設備機器メーカー、部材メーカー、キャビネットメーカー等とのチャネルを豊富に有しているかを挙げています。盤は受注生産で、見込みで作り置きができません。事典は、見込み生産が難しいので規模の経済が働きにくいと推測しています。売上は、図面を出してくれる取引先の数と、その取引の続き方で決まります。
新しい取引先は、最初の図面が来るまでに実績づくりの時間がかかります。買い手が自力で作るより会社ごと買うほうが早い、という計算が成り立つのはここです。見るのは取引先の数だけでなく、上位の取引先ごとの売上の推移と、窓口が社長個人なのか、設計と営業の複数人なのかです。
JSIA優良工場認定と、ISO 9001
JSIAの優良工場認定は、発注する側が配電盤メーカーを選ぶときの判断材料として設けられた制度です。ISO 9001は品質マネジメントのしくみを審査するもので、製品の品質自体は証明しません。そのため配電盤の技術力も評価できるようにした、とJSIAは説明しています。審査基準は、品質保証体制、国家資格等を持つ技術者の在籍、指定講習会の受講、PL保険への加入などで、認定工場の製品にはefマークを付けられます。
認定は工場の体制に付くもので、技術者が抜けると要件を満たせなくなりえます。買い手は認定の有無と同時に、誰の資格で維持しているかを見ます。取得するには品質保証体制の整備が要るので、すでに持つ会社を買うほうが早いと考える買い手もいます。
過去の図面が資産として残っているか
過去の図面、部品表、客先ごとの仕様の癖が、検索できる形で残っているか。それとも特定の設計者の記憶と机の中にあるか。再利用できる図面が多い会社は、見積の段階で設計工数を読めます。
見積の精度は利益に直結します。図面が資産として残っていれば、設計者が1人抜けても過去の案件を元に見積が出せます。残っていなければ、抜けた時点で見積の根拠も一緒に消えます。図面の置き場所と命名のルールを譲渡の前に整えておくと、買い手への説明資料としても使えます。
現金回収までの長さと、仕掛品の中身
受注から設計、製造、検査、納品、検収を経て掛取引の入金まで、半年以上かかる場合がある、と『業種別審査事典』は書いています。手形決済が根強く残っていることも指摘しています。その間の部材代と人件費は先に出ていくので、決算書の売掛金と仕掛品の中身が、運転資金の必要額を決めます。
運転資金が読めないと、買い手は買収後に追加で入れる資金を見積もれません。事典は黒字倒産のリスクにも注意するよう書いています。案件ごとに受注額、原価、請求、入金の時期が追える会社は、数字を信用してもらいやすくなります。
盤製造を、誰が買うのか。
売り手の方が最初に知りたいのは価格ではなく、「本当に相手がいるのか」です。 この業種の買い手になりうる会社を、類型ごとに整理しました。
電材商社・電気機器商社(盤を取り込んで付加価値を上げる)
資材を納めている側が、盤メーカーを取り込む形です。部材の仕入れと盤の納入が同じ会社になるので、取引先の工事店に盤まで含めて提案できます。公表された事例は、事例集のページにまとめています。
同業の盤メーカー(設計者と生産能力の確保)
受注はあるが設計者が足りない会社と、設計者がいて工場に余裕がある会社の組み合わせです。受注が重なる時期の逃がし先にもなります。売り手にとっては、設計者が引き続き働ける場を確保できるかが、相手を選ぶ基準の一つになります。
電気工事会社・サブコン(盤の内製化)
盤の納期は、現場の受電や試運転の日から逆算して決まります。外注先の納期が読めないと工程全体が遅れるので、盤を自社の管理下に置く目的で取り込みを検討することがあります。
産業機械メーカー・FA関連(装置に組み込む盤の内製化)
装置に組み込む制御盤を、設計から組立まで近くに置きたい会社です。盤の設計と装置の設計は仕様のやり取りが多いので、同じ会社の中で進められれば手戻りが減ります。
親族・社内への承継(売らない選択肢)
製造業の後継者不在率は42.4%で、帝国データバンクの業種別では最も低くなっています。2025年に代表者が交代した企業の承継手段は、全業種の速報値で内部昇格36.1%、同族承継32.3%、M&Aなど20.6%、外部招聘7.6%でした。盤メーカーでも、売らずに続ける道が数字の上では多数派と考えられます。その場合も、設計者の世代交代は同じ課題として残ります。
この業種では、実際に買い手が動いています。
各社の公表情報のまとめであり、当社の成約実績ではありません。
2024年11月
カナデン〈8081〉 が 髙島電機株式会社 を譲受
エレクトロニクス技術商社 → 山形市。山形県を中心に東北地方で、電設資材やFA機器をはじめ、制御機器、高低圧受配電盤の設計・製造・販売。全株式(議決権100%)を取得
髙島電機は、電設資材やFA機器の販売と、高低圧受配電盤の設計・製造を、同じ会社で行っていました。買ったのは電設の同業ではなく、エレクトロニクス系の商社です。開示された目的は、主力のFAシステム事業の事業領域の拡大で、カナデンのFAシステム事業との連携による商材の拡大や技術力の増強なども挙げられています。株式譲渡の実行日は2024年12月2日とされていました。
2022年8月
河村電器産業 が Syntech Switchgear & Engineering(シンガポール) を譲受
配電盤・分電盤などのメーカー → シンガポールの配電盤メーカー。産業用・住宅用配電盤の製造・販売・メンテナンス。全発行済株式の70%の取得に合意(2022年7月12日締結)
配電盤のメーカーが、海外の配電盤メーカーの全発行済株式の70%を取得した事例です。リリースは、2023年3月末までに連結子会社とする予定としています。買収は100%取得だけではない、という一例です。
2022年6月
リックステクノ(リックス〈7525〉の連結子会社) が 株式会社CEM を譲受
産業用機械の製造・販売・メンテナンス → 石川県白山市。産業用機械の制御盤の製作、搬送機械の設計・製作・調整、ソフト開発など。全株式を取得し、子会社化
報じられた目的は、電装部分の多くを外注していたため、電装を内製化して「グループ内での機電一体」を実現することです。機械の会社が、自社の機械に載せる制御盤の作り手を買った事例です。
最初の一歩は、匿名の相談で結構です。
- 1
匿名でご相談
社名の入力は任意です。売却をお決めでない段階のご相談を歓迎します。相談に費用はかかりません。
- 2
許認可と有資格者の棚卸し
配電盤・制御盤製造の承継で最初に確認すべき許認可・資格の状況を整理します。ここに問題があると後の工程がすべて崩れるため、最優先で行います。
- 3
企業価値の整理と資料づくり
決算書に出ない価値を、買い手に伝わる形の資料に整えます。ここが評価額を最も大きく動かします。
- 4
買い手候補の選定と打診
打診してほしくない先を最初に伺い、候補から外します。秘密保持契約を結ぶまで、社名や所在地は買い手候補に伝えません。
- 5
条件交渉・最終契約・引き継ぎ
価格だけでなく、従業員の雇用、代表者保証の解除、引き継ぎ期間まで含めて条件を設計します。
盤製造業界の主な団体
- 一般社団法人 日本配電制御システム工業会(JSIA)
- 正会員は名簿上350社超。JSIA優良工場認定制度を運営し、盤の金額の統計を公表
- 東京配電盤工業協同組合(TSICS)
- 『業種別審査事典』5067が業界団体として掲載。東京都港区
- 東海配電盤工業協同組合
- 『業種別審査事典』5067が業界団体として掲載。名古屋市
盤製造の承継について、よくいただく質問。
制御盤メーカーのM&Aでは、会社の値段は何で決まりますか。
後継者はいますが、盤を設計できる人が高齢です。それでもM&Aを考える意味はありますか。
設計できるのが社長1人です。売れますか。
JSIA優良工場の認定を持っています。評価に影響しますか。
制御盤の需要は伸びていますか。人手不足はどうなっていますか。
盤の据付工事も請けています。許可や登録は譲渡で引き継げますか。
川上と川下も、まとめて見ています。
電材卸から電気工事、盤の製造、計装まではひとつの商流です。 だから、業種をまたいで買い手をお探しできます。
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