電気通信工事会社のM&A・売却・事業承継
LAN配線、光ファイバ、防犯カメラ、入退室管理。電気工事と一体で請けている会社もある一方で、許可は別で、技術者になれる資格も別です。電気通信工事は指定建設業ではなく、特定建設業の技術者にも実務経験で就ける道があります。許可と技術者を先に整理しておくと、買い手に何を渡せる会社かが見えてきます。
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電気通信工事業界の現在地
数字はすべて官公庁・業界団体の一次資料から引用し、出典と年次を明記しています。 他社の記事に流通している出典不明の数値は使いません。
電気通信工事の承継で、実際につまずくところ。
許認可と有資格者の整理は、譲渡が成立するかどうかそのものを左右します。 ここを後回しにすると、条件が固まってから話が振り出しに戻ります。
電気工事業と電気通信工事業は、別の許可
建設業法上、電気工事(発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備など)と電気通信工事(有線・無線の電気通信設備、ネットワーク設備、情報設備、放送機械設備など)は別の業種です(国土交通省の業種区分の資料)。現場では一体で施工していても、許可は別です。工事一件の請負代金が500万円未満なら許可は要りません(建設業法施行令1条の2)が、500万円以上の工事を、持っていない業種の許可のまま請けていた場合、承継の調査で見つかると評価が下がります。
直近3年の受注案件を、請負代金と工事内容で、電気工事、電気通信工事、500万円未満の軽微な工事に分けます。許可の追加が必要なら、承継の前に取得しておくほうが、調査での説明が楽になります。防犯カメラやインターホンのように、区分の例示に名前がない工事は、許可行政庁に確認します。
経営業務の管理体制と営業所技術者(旧:専任技術者)
建設業許可の維持には、経営業務の管理体制と、営業所ごとの営業所技術者が要ります。前者は、常勤役員等の1人が建設業の経営経験を満たす形のほか、直接補佐者を置く形もあります。社長しか要件を満たさない会社では、社長の退任と同時に許可が維持できなくなります。要件を満たさなくなったときは2週間以内の届出が必要で、許可行政庁は許可を取り消さなければなりません(建設業法11条、29条)。
最優先で確認します。ほかに要件を満たす人がいない場合は、社長が一定期間残るか、要件を満たす人を先に確保する設計が必要です。技術者の交代の手続きは、専用の記事にまとめています。
特定建設業と監理技術者。電気通信は実務経験でも就ける
元請として下請に出す工事の総額が5,000万円以上になる場合は、特定建設業の許可が要ります(建設業法施行令2条)。特定建設業では、営業所技術者も現場の監理技術者も、一般より重い要件になります。電気工事業は指定建設業なので、1級の国家資格者などに限られます。電気通信工事業は指定建設業ではないため、1級電気通信工事施工管理技士や技術士のほか、一般建設業の技術者の要件を満たしたうえで、発注者から直接請け負った4,500万円以上の工事で2年以上の指導監督的な実務経験を持つ人も、技術者になれます(建設業法15条2号ロ、施行令5条の2、5条の3)。
特定建設業の許可を持っている場合は、技術者の資格の根拠が1級の資格なのか実務経験なのかを確認します。実務経験の場合は、その工事の契約書や注文書が残っているかが、承継の調査で問われます。許可を持っていない場合は、元請として下請に出す金額が5,000万円に近づいていないかを見ます。
電源側の工事まで請けているなら、電気工事の登録も要る
LANや防犯カメラの配線で、電源側の工事まで請けていると、電気工事に当たる部分が出ます。電気工事業を営むには登録が要り、建設業許可を持つ会社は、登録ではなくみなし登録電気工事業者として扱われます(電気工事業法34条)。通信専業のつもりで、軽微な電気工事も請けていた、という整理漏れが生じやすい領域です。
売上を工事種別に分け、電気工事に当たる工事について、許可・登録の状況と主任電気工事士の有無を突き合わせます。みなし登録は専用の記事にまとめています。
ここまで読んで「うちはどうだろう」と思われたら、 そこがご相談のタイミングです。
売却をお決めでなくて結構です。費用はかかりません。匿名でもかまいません。
許可・登録を、もっと詳しく
- 建設業許可・電気工事業登録は、売る・たたむ・相続でどうなるか(早見表) 株式譲渡・事業譲渡・合併ごとの、許可の承継の違い
- 営業所技術者(旧:専任技術者)が退職したら 2週間以内の手続きと、後任がいないときの許可
- 経営業務の管理責任者が退任・死亡したら|建設業許可を残す3つの手と2週間の期限(経営業務の管理責任者) 常勤役員等が1人で満たす形と、補佐者を置く形
- みなし登録電気工事業者とは 電気工事も請けている場合の、電気工事業法上の届出
決算書に出ない、電気通信工事の値打ち。
営業所技術者になれる人と、その根拠書類
電気通信工事業の営業所技術者(旧:専任技術者)になれる主な資格は、1級・2級の電気通信工事施工管理技士、技術士(電気電子部門)のほか、電気通信主任技術者の資格者証を受けて電気通信工事に5年以上、工事担任者(第一級アナログ通信・第一級デジタル通信、または総合通信)の資格者証を受けて3年以上の実務経験がある人です(建設業法施行規則7条の3)。学歴や実務経験で満たす道もあります。
電気通信工事業は指定建設業ではないので、特定建設業の技術者にも実務経験で就ける道があります(後述)。電気工事業より資格の縛りが緩い分、買い手が見るのは資格の数よりも、実務経験を契約書や注文書で示せるかどうかです。経験年数を示す書類が散らばっていると、人がいても、要件を満たすと示せません。
保守契約の本数と、売上に占める割合
国土交通省の業種区分の資料は、すでに設置された電気通信設備の改修・修繕・補修は電気通信工事に当たる一方、保守(機能や耐久性の確保のための点検、整備、修理)に関する役務の提供は電気通信工事に該当しない、と整理しています。保守契約の売上は、建設業の許可の対象となる工事の外側にある収益です。
工事は案件ごとにゼロから積み直しで、保守は契約が続きます。買い手は売上を、新設工事、改修・補修、保守の3つに分けて見たがります。分けて出せる会社は、将来の売上を読みやすく、許可の要不要の整理も同時に済んでいます。
発注元の構成(元請か、通信キャリアの下請か)
通信キャリアやゼネコンの下請が中心か、エンドユーザーから直接請けているか。下請の次数が深いほど、価格を自分で決めにくくなります。通信大手の側は、エクシオグループが中期経営計画(2026-2030)で各通信キャリアの事業動向に合わせた施工力の向上と担い手確保を掲げているように、施工を担う人の確保を課題にしています。
元請比率は粗利に直結します。キャリア依存が高いと、単価の改定を一度に受けます。一方で、協力会社として長く工事を任されてきた実績は、担い手を探している側にとっては、取引先ごと引き継ぎたい資産です。その関係が社長個人のものか、施工品質と対応力によるものかで、評価が分かれます。
光・5Gの整備が進んだあとの仕事の中身
光ファイバの世帯カバー率は97.09%(2023年度末)、5Gの人口カバー率は98.4%(2024年度末)まで進んでいます。新しく通す工事の余地が小さくなるにつれ、仕事の中心は、既設の増強、更新、保守に移っていくとみられます(当社の推測)。
買い手が知りたいのは、どの種類の工事が今後も続くかです。新設中心の会社と、改修・保守の比率が高い会社では、同じ売上でも先の読み方が違います。過去3年の売上を、新設、改修、保守に分けて出せると、説明がしやすくなります。
データセンター・大規模案件の施工実績
データセンターの構内配線や光ファイバ敷設の実績は、買い手が欲しがる経験のひとつです。国内の事業者データセンターの建設投資は、民間調査会社IDC Japanの2025年4月の予測で、2028年に1兆円を超えるとされています(企業内のデータセンターは含みません)。
大規模案件は、過去の実績がないと入札や協力会社の選定に参加できない場合があります。実績をつくるのには時間がかかるので、すでに持つ会社を取り込むほうが早いと考える買い手がいます。実績は、元請名、工事内容、請負金額、竣工年で整理しておくと、そのまま説明資料になります。
電気通信工事を、誰が買うのか。
売り手の方が最初に知りたいのは価格ではなく、「本当に相手がいるのか」です。 この業種の買い手になりうる会社を、類型ごとに整理しました。
電気工事会社・同業(電気と通信を一貫で請ける体制づくり)
電気工事と電気通信工事を一貫で請けられる体制を作るための統合です。電気工事業は特定建設業の技術者を1級の資格者に限る一方、電気通信工事業は実務経験でも就けるため、電気側の会社が通信の技術者を取り込む動機があります。
通信建設大手(施工力と担い手の確保)
エクシオグループは2026-2030年の計画で、5年累計3,000億円の成長投資のうち1,000億円程度の事業成長・拡大投資の用途に、新たな技術領域の補完や担い手確保等に向けたM&Aを挙げています。コムシスホールディングスは2025〜2030年度の6年間で成長投資2,000億円以上を計画し、M&Aの規模によっては追加で資金を調達するとしています。いずれも個別の買収対象は示されていません。地域の施工会社が対象になるかは、計画からは読み取れません。
ビルメンテナンス・セキュリティ事業者(施工力の取り込み)
管理する建物の通信・セキュリティ設備の工事と保守を、自社で持つ狙いです。保守契約を多く持つ会社は、継続収入が見えるため、こうした買い手に向いています。
- ハリマビステム(ビルメンテナンス、東証スタンダード)は2025年7月16日、東京都内で電気工事・電気通信工事業を中心に事業展開する武蔵野通信の全株式を取得し、子会社化することを決議した。取得価額は非公表。 出典
※ 公表情報をもとにした業界動向の紹介であり、いずれも当社が関与した案件ではありません。
ITインフラ・システム会社(物理配線の内製化)
ネットワークの設計や運用を請ける会社が、配線や機器の設置まで自社で持ちたい場合です。上流と現場が同じ会社にあると、仕様変更への対応が早くなります。
親族・社内への承継(売らない選択肢)
2025年に代表者が交代した企業の承継手段は、全業種の速報値で内部昇格36.1%、同族承継32.3%、M&Aなど20.6%、外部招聘7.6%でした(帝国データバンク)。電気通信工事でも、技術者の実務経験を社内で積ませて承継する道は、まず比べておく選択肢です。
最初の一歩は、匿名の相談で結構です。
- 1
匿名でご相談
社名の入力は任意です。売却をお決めでない段階のご相談を歓迎します。相談に費用はかかりません。
- 2
許認可と有資格者の棚卸し
電気通信工事の承継で最初に確認すべき許認可・資格の状況を整理します。ここに問題があると後の工程がすべて崩れるため、最優先で行います。
- 3
企業価値の整理と資料づくり
決算書に出ない価値を、買い手に伝わる形の資料に整えます。ここが評価額を最も大きく動かします。
- 4
買い手候補の選定と打診
打診してほしくない先を最初に伺い、候補から外します。秘密保持契約を結ぶまで、社名や所在地は買い手候補に伝えません。
- 5
条件交渉・最終契約・引き継ぎ
価格だけでなく、従業員の雇用、代表者保証の解除、引き継ぎ期間まで含めて条件を設計します。
電気通信工事業界の主な団体
- 一般財団法人 日本データ通信協会(電気通信国家試験センター)
- 総務省の指定を受けて、電気通信主任技術者試験と工事担任者試験の事務を行う機関
- 一般社団法人 日本電設工業協会(JECA)
- 電気設備工事業の業界団体。調査研究や統計資料を公表
電気通信工事の承継について、よくいただく質問。
電気工事と通信工事を両方やっています。どちらで相談すればよいですか。
電気通信工事の営業所技術者(旧:専任技術者)には、どんな資格でなれますか。
保守契約が売上の大半です。工事の許可は要りますか。
キャリアの下請が中心です。評価は低くなりますか。
業者数が増えている業種だと、売却は不利になりますか。
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