会社売却・M&Aの流れと期間。
電設会社は、値段の前に許可を確かめます。
ご相談から成約まで、工程を設計する目安は半年から1年です(実績の平均値ではありません)。 電設の会社では、買い手探しより先に、許可と登録の日程が決まっています。 その日程を含めて、順に説明します。
最終更新:
- 1
匿名でのご相談
1日〜社名を伏せたままで構いません。「いくらぐらいか」「後継者がいないがどうすべきか」の段階で足ります。ご連絡の方法と時間帯は、最初に伺います。
- 面談の場所は、事務所以外もご相談できます
- この段階で契約書を交わすことはありません
- 売る前提でなくて構いません。親族や社員への承継、廃業、現状維持も同じ重さで整理します
- 2
許認可と有資格者の棚卸し
1〜2週間最初にやるのはここです。建設業許可の経営業務の管理体制を社長以外が満たしているか、営業所技術者は誰か、営業所ごとの主任電気工事士は誰か、電気工事業は登録かみなし登録か。株式譲渡か事業譲渡かで手続の順序が変わるので、方式の見当もここで付けます。
- 社長しか要件を満たしていない場合は、後任の体制づくりに時間が要ります
- 基準を満たさなくなったときは2週間以内の届出が要り、許可は取り消されます(建設業法11条5項・29条1項1号)
- 早く分かれば、補佐者を置く、資格を取るといった手を先に打てます
- 3
企業価値の整理と資料づくり
2週間〜1か月決算書に出ない価値を、買い手に伝わる形にします。在庫の品種別の年齢、仕入口座の一覧、有資格者の内訳、保守契約の本数、工事台帳の粗利が材料です。
- 役員報酬・保険料など、実質的な利益に戻せるものを整理します
- 当社の診断は、年買法(純資産+実質営業利益×年数)で目安を出します。基準の年数は3年で、定性評価で1.5〜5.0年の間で増減させます
- この段階で、譲渡価格の幅の見通しをお伝えします
- 4
買い手候補の選定
1〜2か月打診してほしくない先(同業、取引先、メーカーなど)があれば、最初に伺って候補から外します。まず社名を伏せた概要(ノンネーム)で打診し、関心を示した先とだけ秘密保持契約を結んで、詳細を開示します。
- 秘密保持契約を結ぶ前に、社名・所在地は出しません
- 打診の順番と範囲は、売り手の方が決めます
- 5
トップ面談・条件のすり合わせ
1〜2か月経営者同士でお会いいただきます。価格の話の前に、従業員をどうするか、屋号を残すか、社長がいつまで関わるかを確かめます。ここが合わないと、価格が合っても後で壊れます。
- 価格以外の条件(雇用・屋号・引き継ぎ期間)を先に詰めます
- 基本合意では、一定期間ほかと交渉しない約束(独占交渉)を求められることが多くあります。これは売る義務ではなく、期間が過ぎれば外れます
- 降りるなら、早いほど買い手との摩擦が小さくなります
- 6
デューデリジェンス
1〜2か月買い手による調査です。会計・法務・労務が中心で、電設の会社では許可と登録も対象になります。役員変更届の出し忘れのような点は、買い手に見つかる前に自分で直しておくと、ここで揉めにくくなります。
- 指摘が出た場合は、事実を隠さず、対応策とセットで説明します
- 外部の専門家に依頼する費用が発生する場合は、事前にご説明します
- 7
最終契約・引き継ぎ
1か月〜契約を締結し、譲渡を実行します。経営者保証の扱い(解除する、買い手が引き継ぐ)は、最終契約までに合意して、書面に残します。
- 実行のあとにも届出があります。建設業の役員の変更は30日以内、電気工事業の登録事項の変更は30日以内です(事業譲渡の承継は、承継の日から30日以内)
- 従業員・取引先への開示の順序とタイミングを一緒に設計します(従業員にいつ伝えるか)
- 譲渡後の引き継ぎ期間中も、必要に応じてご相談を受けます
許可と登録の日程は、買い手探しより先に決まっている
同じ電気工事の会社でも、建設業許可と電気工事業の登録とでは、承継の順序が逆です。
建設業許可の承継は事前に認可を受け、電気工事業の承継は後から届け出ます。
| 売り方 | 建設業許可 | 電気工事業の登録 |
|---|---|---|
| 株式譲渡 | 承継の認可は要りません。許可を持つ法人が変わらないためです(法令の構造からの整理で、国土交通省が株式譲渡に触れた文書は確認できていません)。 役員の変更は30日以内の変更届、経営業務の管理責任者や営業所技術者が代わるときは、後任の書類を2週間以内に出します(建設業法11条、規則7条の2) | 登録事項(役員、主任電気工事士など)の変更は、変更の日から30日以内に届け出ます(電気工事業法10条1項)。建設業許可を持つ会社のみなし登録は、変更を遅滞なく届け出ます(同法34条4項) |
| 事業譲渡 | 許可に係る建設業の全部を譲る場合に、あらかじめ認可を受ければ、譲受人が引き継ぎます。許可の空白は出ません(建設業法17条の2)。 承継した許可の有効期間は、承継の日の翌日から数え直します | 譲受人が登録電気工事業者の地位を承継し、承継の日から30日以内に届け出ます。建設業法のような事前認可ではありません(電気工事業法9条)。建設業許可がある会社のみなし登録は扱いが別なので、早見表で確かめます |
認可の申請先と受付の締切は、窓口ごとに違います。 令和7年度の承継認可は全国で1,092件あり、そのうち国土交通大臣の認可は28件、知事の認可は1,064件でした。 大半は都道府県の窓口で、処理期間は都道府県ごとに違い、90日とは限りません。
| 窓口 | 受付の締切と処理期間 |
|---|---|
| 国土交通大臣許可(関東地方整備局の案内) | 承継予定日の90日前まで受付。標準処理期間は90日。新規許可と同じく、書類到達からおおむね90日程度で、補正の期間は含みません |
| 東京都(知事許可) | 承継予定日の2か月前から25日前まで受付。申請日と承継予定日の間に、開庁日が25日必要です。承継予定日は、双方の許可の有効期間が満了する日の30日前より前にするのが原則です |
| 大阪府(知事許可) | 効力発生日の30日前まで受付。45日前を目途にすることを推奨。標準処理期間は受付から30日です |
国土交通省の事務ガイドラインは、承継の認可申請が見込まれる建設業者に、なるべく早く申し出て事前打ち合わせをするよう、地方整備局が指導すると定めています。 最終契約で譲渡の日を決める前に、許可を受けている窓口へ相談しておくと、日程を逆算できます。 許可・登録・みなし登録・経審が、株式譲渡・事業譲渡・合併・分割・相続でどうなるかは、 許可・登録の承継早見表に条文つきでまとめました。 許可を残したまま売る考え方は、建設業許可を残したまま会社を売るコラムへ。
よくあるご質問
全体でどれくらいの期間がかかりますか。
途中でやめられますか。
従業員にはいつ伝えるのですか。
代表者の保証はどうなりますか。
売ると、建設業許可や電気工事業の登録はどうなりますか。
公的な窓口だけで進められますか。
読み物で追いたい方には、どこから後戻りできなくなるかを工程表で示した 入門ガイドの第5回があります。 手数料は手数料のページに全部書いてあります。 準備の項目は承継準備チェックリストに並べました。
出典
- e-Gov 建設業法(第11条・第17条の2・第29条)/施行規則(第7条・第7条の2)
- e-Gov 電気工事業の業務の適正化に関する法律(第9条・第10条)
- 国土交通省「建設業許可業者数調査の結果について」(令和8年3月末現在)表-7
- 国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」【第17条の2関係】
- 関東地方整備局「事業承継等の事前認可制度」
- 東京都都市整備局「建設業許可申請の手引」(令和8年度)Ⅳ「事業承継等に係る認可の制度」
- 大阪府「建設業許可 事業承継等 認可申請の手引」(令和7年3月版)
- 金融庁「『経営者保証に関するガイドライン』等の活用実績(2025年度)」
- 全国銀行協会掲載「事業承継時に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」
- 中小機構「令和7年度 事業承継・引継ぎ支援センターの実績について」
条文は e-Gov 法令検索の2026年10月14日取得分です。受付の締切は窓口が改めることがあります。申請の前に、許可を受けている窓口で確認してください。