主任電気工事士がいない・退職したら|2週間以内の選任と、会社を続ける・引き継ぐ道
主任電気工事士が欠けたら、会社は知った日から2週間以内に後任を選任しなければなりません(電気工事業法第19条第3項)。選べるのは、第一種電気工事士か、第二種電気工事士免状の交付を受けてから電気工事の実務を3年以上積んだ人です。社長本人が電気工事士で主任を兼ねてきた会社では、社長が営業所の仕事から退く日が、この2週間の起点になります。
たとえば、主任を兼ねてきた社長が、来年の春で引退すると決めたとします。登録の書類を開くと、主任に当たる欄にあるのは社長ご自身の名前です。辞める従業員の後任を探す話とは違って、自分が座っていた席に誰を座らせるかの話になります。
主任電気工事士が要るのは、一般用電気工事をする営業所だけ
第19条第1項は、登録電気工事業者に対して、一般用電気工事の業務を行う営業所ごとに主任電気工事士を置くよう求めています。求められるのは営業所ごとで、全営業所にではありません。
電気工事業者には四つの区分があり、主任が要るのはそのうち二つです(福島県の手引きの区分表。根拠は第17条の2・第19条・第34条)。
| 区分 | 一般用の工事 | 自家用の工事 | 主任電気工事士 |
|---|---|---|---|
| 登録電気工事業者 | できる | できる | 必要 |
| 通知電気工事業者 | できない | できる | 不要 |
| みなし登録電気工事業者(建設業許可あり) | できる | できる | 必要 |
| みなし通知電気工事業者(建設業許可あり・自家用のみ) | できない | できる | 不要 |
建設業許可があっても、自家用だけの営業所なら主任は要らない。
主任電気工事士が要るのは、一般用電気工事をしている営業所だけだ。
高圧受電設備やキュービクルの工事だけを請ける会社は、自家用電気工事のみの事業者です。この場合は登録を受けなくても、開始の10日前までの「通知」で足り(第17条の2)、主任電気工事士を置く義務もありません。
ただし、一般用の範囲は思ったより広くとられています。電気工事士法でいう「一般用電気工作物等」には、一般用電気工作物のほかに小規模事業用電気工作物が含まれます(電気工事士法第2条)。電気事業法は、小規模な発電設備を、出力が省令の定める値より小さければ一般用、それ以上なら小規模事業用と分けています(第38条)。太陽光の工事を請けている会社は、自家用だけの会社だとは言い切れない場合があります。営業所ごとに、実際に請けている工事の中身で当てはめてください。
選べるのは、第一種か、免状から3年の第二種
第19条第1項の要件は二つです。第一種電気工事士であること。または、第二種電気工事士免状の交付を受けた後、電気工事に関して3年以上の実務の経験を持つ第二種電気工事士であること。どちらの場合も、この法律などに違反して罰金以上の刑を受けてから2年を経過していない人や、登録の取消しから2年を経過していない人は、主任になれません(第6条第1項第1号〜第4号)。
第一種の人を立てるなら、実務経験の心配は要りません。第一種電気工事士免状は、原則として試験に合格したうえで3年以上の実務を経て交付されるもの(電気工事士法第4条第3項、同法施行規則第2条の4)なので、岡山県の変更届の案内も、第一種の免状を持つ人が主任になるときは実務経験証明書を不要としています。見るのは免状の裏面です。第一種は、免状を受けてから5年以内ごとに、自家用電気工作物の保安に関する講習を受ける義務があります(電気工事士法第4条の3)。愛知県は、第一種の免状の写しに、この講習受講履歴欄のコピーを求めています。
難しいのは第二種のほうです。「3年」の数え方に、いくつか癖があります。
- 数え始めるのは、免状の交付を受けた日です。試験に合格した日でも、見習いとして現場に入った日でもありません(神奈川県)
- 数えられるのは、その会社が登録(またはみなし登録の届出)をしていた期間だけです。初回登録より前の期間や、更新せずに失効していた期間は、証明できません(神奈川県)
- 数えられるのは、従業員として雇用されていた期間です。下請けや委託として仕事を請けていた期間は、実務経験として認められません(愛知県)
- 内容は一般用電気工作物の電気工事です。自家用の簡易電気工事を数えるなら、認定電気工事従事者認定証を取得した後に限られます(神奈川県)
実務の3年は、免状を受け取った日から、登録された会社の従業員として数える。
証明者が倒産している場合は、同業他者2者による証明も有効とする県があります(愛知県)。一人親方として独立し、登録をしないまま他社の仕事を下請けしていた期間のある人は、年数が足りているつもりでも、数えられない部分が出ます。
引退の時期から逆算すると、後任候補の免状はその3年前までに要ります。
日付は計算の例です。免状を受けた日(交付年月日)は、免状の表面に書かれています。試験の日程から免状の交付までの期間も、この前に加わります。
社長が主任を兼ねる会社は、社長が退く日から2週間が動く
第19条第2項には例外があります。登録電気工事業者本人(法人は役員のうちいずれか)が第一種電気工事士、または免状から3年以上の第二種で、その営業所の業務に自ら主として従事するなら、その営業所に主任電気工事士を別に置かなくてよい。社長が電気工事士の小さな会社が、主任を別に雇わずに登録を維持できているのは、この例外のおかげです。
この例外は、期限の条文とつながっています。第3項第2号は、選任が必要になる場合として、こう書いています。
主任電気工事士が欠けるに至つたとき(前項の特定営業所について、第一項の規定が適用されるに至つた場合を含む。)
例外が外れて原則に戻った日も、主任が欠けた日と同じに扱われます。
社長が退く日が、主任電気工事士のいなくなる日になる。
例外の条件は「自ら主としてその業務に従事する」営業所であることです。退任のほかに、体調で現場を離れるとき、経営に専念して営業所の仕事から外れるときも、条文の読み方としては外れる側に入ります。どこからが「主として」に当たるかの線引きは、登録を受けた県などの窓口に確かめてください。
営業所ごとの話でもあります。本社は社長の例外で通っていても、支店が一般用の工事をしているなら、その支店には別に主任が要ります。役員にもう一人有資格者がいて、その人が主として従事している営業所なら、社長が退いても例外は続きます。
期限は二つある。選任は知った日から2週間、届出は変更の日から30日
二つの時計は別々に動きます。選任は会社が決めること、届出は役所に知らせることです。
| 登録電気工事業者 | みなし登録電気工事業者 | |
|---|---|---|
| 選任の期限 | 知った日から2週間以内(第19条第3項) | 同じ。第19条は業務の章にあり、第34条第1項が外すのは登録の章(第二章)と取消しの部分で、ここは含まれない |
| 変更の届出 | 変更の日から30日以内(第10条第1項) | 遅滞なく(第34条第4項)。福島県の手引きは「概ね30日以内」 |
| 更新 | 5年ごと(第3条第2項) | 登録の更新はなし。建設業許可の更新ごとに変更届(宮崎県) |
| 登録の取消し | 規定あり(第28条) | 取消しに係る部分は適用されない(第34条第1項) |
選任の起点は退職日でなく「知った日」。届出の起点は選任の日でなく「変更の日」。
2週間という長さの理由は、条文に書かれていません。建設業法の営業所技術者の交代も2週間で、期限の長さはそろっています。確かなのは、2週間が選任の期限であり、書類をそろえる期間も含んでいることです。福島県の手引きでは、主任を変更するときの届出に、新しい主任に関する書類(誓約書、雇用証明書、免状の写しなどのうち必要なもの)を添えます。第二種の人なら、実務経験証明書も加わります。後任が他社から来る場合、前の勤め先の証明は相手の都合に左右されるので、日数を見込んでおく必要があります。
2週間を過ぎて選任しなかったとき、届出を怠ったとき、条文は次のように定めています。
- 2週間以内に主任を選任しなかった:3万円以下の罰金(第39条第1号)。会社にも罰金が科される(第41条)。登録の取消し、または6か月以内の事業停止を命ずることができる(第28条第1項第3号)。みなし登録の会社は、取消しの部分が適用されず、事業停止の命令が対象になる(第34条第1項)
- 変更の届出をしない、または虚偽の届出をした:2万円以下の罰金(第40条第1号)。登録の取消し・停止の対象にもなる(第28条第1項第2号)
登録の取消し・事業停止は、どちらも「できる」という書き方の規定です。実際にどの程度の処分が行われているかは、一次資料で確かめられていないので、ここでは書きません。
主任の氏名は登録の申請事項で、変更があれば届け出る対象です(第4条第1項第4号)。社長の例外で通している営業所は、「その旨と該当者の氏名」を届け出ています。自社の届出内容の控えが見当たらないときは、登録簿の閲覧や謄本の交付を、誰でも請求できます(第16条)。
後任がいないとき、会社を続けたまま主任を置く道は4つある
社内の第二種を、免状から3年で主任に立てる
社内で完結する道ですが、時間がかかります。免状を受け取った日から3年を数え、その間の在籍先が登録業者であることが条件になります。社長の引退までに3年以上あるなら、第二種の免状を持つ人を探すか、持っていない人に受験してもらうところから始めます。
第一種を外から雇うのは、母数の小ささとの勝負になる
令和7年度の試験結果は、次のとおりです(電気技術者試験センター)。
第一種は、合格してから実務3年を積んで、ようやく免状が交付されます。主任に立てられる人は、この人数よりさらに限られます。
経済産業省が令和6年度に電気工事業者へ行ったアンケートでは、電気工事士などの人手が「大いに不足」「やや不足」と答えた会社が7割、6割超が採用活動をしているものの、8割近くが採用目標を達成できていません。主任になれる人を募集で見つけるのは、人手一般よりもう一段厳しい条件を、同じ市場で探すことです。雇う場合は雇用関係が前提になり、役員以外の人を主任にするときは雇用証明書を添えます。
社員を役員にすれば、主任の選任は要らなくなる
第19条第2項の例外は、社長に限りません。役員のうちいずれかが有資格者で、その営業所の業務に主として従事しているなら、例外が使えます。有資格の社員を役員に迎える形で、従業員として選任する代わりに、役員の例外で整えることもできます。役員の氏名の変更は、登録事項の変更として30日以内に届け出ます(第4条第1項第3号、第10条第1項)。
要件は従業員として選任するときと同じです。第一種、または免状から3年の第二種であること。そして、主として営業所の業務に従事し続けることです。建設業許可の経営業務の管理責任者の要件は別に考える必要があり、経営業務の管理責任者が退任・死亡したら|建設業許可を残す3つの手と2週間の期限で整理しています。
一般用の工事から手を引けば、主任そのものが要らなくなる
先ほどの区分表のとおり、自家用電気工事だけを営む事業者は、通知電気工事業者として主任を置く義務がありません。住宅や小さな店舗の工事の比率が低い会社なら、一般用から手を引く選択はあります。
代わりに、現場に出られる人が変わります。自家用の電気工事の作業に従事できるのは第一種電気工事士です(ほかに、簡易電気工事の認定電気工事従事者、特殊電気工事の特種電気工事資格者)。第二種の従業員が中心の会社は、今の人員のままでは現場が回らなくなります。一般用をやめたときの手続きは県によって扱いが違いうるので、登録先に確認してください。
名前だけを借りる道は選べない
外部の人に名前を借りて主任に立てる道は、制度が想定していません。宮崎県の資料は、各営業所に専任で置く必要があり、兼任は認められないとしています。役員以外の人を主任にする届出には雇用証明書が付き、虚偽の届出は先ほどの罰金と取消し・停止の対象です。名義を考える前に確かめておきたい点は、名義貸しを考える前にに書きました。
引き継ぐ・残す・たたむは、主任の有無だけでは決まらない
続ける道と手放す道では、主任の問題の片づき方が違います。
| 道 | 主任電気工事士の問題はどうなるか | 電気工事業法の手続き |
|---|---|---|
| 採用・育成で続ける | 後任を立てる。第二種なら免状から3年 | 選任2週間、変更届30日 |
| 親族・社員に継がせる | 後継者が有資格なら、役員として例外を使える。無資格なら上の道へ | 役員の変更届30日 |
| 会社ごと引き継いでもらう | 買い手の有資格者を、その営業所の役員か従業員として立てられる | 株式の譲渡なら、役員や主任に変更があれば変更届。事業の全部の譲渡・合併・分割・相続なら、登録の地位を承継して30日以内に届出(第9条) |
| たたむ | 主任は要らなくなる | 廃止の日から30日以内に廃止届(第11条)。登録は効力を失う(第13条第3項) |
株式の譲渡は、第9条第1項の承継の列挙に入っていません。会社が同じなら登録の主体も同じ、という法令の構造からの整理で、直接それを述べた条文を見つけたわけではありません。みなし登録の場合は第二章(承継の定めを含む)が適用されないので、手続きが変わります。みなし登録の扱いは別のコラムで書いています。
買い手側に有資格者がいれば、その人を営業所の役員や従業員として置いて、主任に立てられます。主任になれる人は募集で見つかりにくいので、会社ごと引き継ぐ話は、買い手にとって採用の代わりになる面があります。売り手にとっては、自分が退いたあとの主任の問題を、引き継ぐ側に渡せるということです。ただし、それは会社を手放してよいと決めたときの道です。続ける、継がせる、たたむ道が、同じ重さで残っています。
主任電気工事士と営業所技術者は、別の制度で別々に届け出る
建設業許可を持つ会社には、営業所技術者(旧・専任技術者)という別の要件があります。名前が似ていて、同じ人が両方の要件を満たしていることもありますが、根拠の法律も届出先の書類も別です。
| 主任電気工事士 | 営業所技術者(旧・専任技術者) | |
|---|---|---|
| 根拠 | 電気工事業法第19条 | 建設業法第7条第2号 |
| 欠けたとき | 知った日から2週間以内に選任 | 交代するときも2週間以内に届出 |
| 満たさなくなったときの扱い | 登録の取消し・事業停止を命ずることが「できる」。建設業許可のある会社は、取消しの部分が適用されず事業停止(第28条、第34条第1項) | 許可行政庁は許可を取り消さなければならない(建設業法第29条第1項第1号) |
片方を整えても、もう片方は残る。届出は別々に出す。
営業所技術者が辞めるときの届出と、後任がいない場合の許可の扱いは、営業所技術者が退職したらで書いています。
自社の届出で、今日確かめることは5つある
- 登録電気工事業者か、みなし登録電気工事業者か。登録証または届出の受理通知書に書かれています
- 営業所ごとに、一般用の工事をしているか。太陽光の工事も含めて数えます
- 営業所ごとの主任の欄が、社長の例外なのか、別の人の名前なのか。控えがなければ、登録簿の閲覧や謄本の交付を請求できます
- その人は第一種か第二種か。第二種なら、免状の交付年月日はいつか
- その人は、あと何年、現場に立つ予定か
主任の話は、期限と書類の話に見えて、誰がいつまで現場に立つかの話です。社長の名前が載っていたあの書類に、別の名前を書ける日が来るのは、後任が第一種なら免状を確認できた日、第二種なら免状を受け取ってから3年後です。
辞められても続ける、継がせる、引き継いでもらう、たたむ。どの道を選ぶにしても、出発点はこの5つの答えです。
参照した一次資料
- e-Gov法令検索「電気工事業の業務の適正化に関する法律」(第4条・第9条〜第11条・第13条・第16条・第17条の2・第19条・第28条・第34条・第39条〜第41条) (2026年10月14日に現行版を確認)
- e-Gov法令検索「電気工事士法」(第2条・第3条・第4条・第4条の3) (2026年10月14日に現行版を確認)
- e-Gov法令検索「電気工事士法施行規則」(第2条の3・第2条の4) (2026年10月14日に現行版を確認)
- e-Gov法令検索「電気事業法」(第38条) (2026年10月14日に現行版を確認)
- 愛知県「みなし登録電気工事業者の開始届出」(主任電気工事士の実務経験の扱い) (2026年3月10日更新)
- 神奈川県「実務経験証明書作成の手引き」 (2021年7月作成)
- 福島県「電気工事業に係る手続き、注意事項、様式(記入見本)の手引き」 (令和6年3月作成)
- 宮崎県消防保安課「みなし登録電気工事業者に関する留意事項」
- 岡山県「登録電気工事業者登録事項変更(廃止)届出について」
- 電気技術者試験センター「第二種電気工事士試験の試験結果と推移」 (令和7年度)
- 電気技術者試験センター「第一種電気工事士試験の試験結果と推移」 (令和7年度)
- 経済産業省 電気保安制度ワーキンググループ(第16回)資料1-2(電気工事業者へのアンケート) (2026年2月公表(令和6年度調査))
よくあるご質問
主任電気工事士がいない期間があると、すぐに罰則を受けますか。
非常勤の第一種電気工事士や、外部の人に名前だけ借りて主任にできますか。
建設業許可があるみなし登録電気工事業者でも、主任電気工事士は必要ですか。
第二種電気工事士の従業員が3年の実務を積んだことは、どう証明しますか。
知りたかったことは分かりましたか
執筆:松本電業株式会社(電設承継パートナーズ)