電材卸・電設資材商社のM&A・売却・事業承継
電材卸の値打ちは、メーカーとの取引口座、得意先に貸している売掛金、動いている在庫、朝の現場に間に合わせる配送、それを回す営業の人に分かれます。決算書では「商品」と「売掛金」の2行に入っているだけなので、中身を開けないと価格が決まりません。当社は1950年から電設資材を卸してきた同業でもあります。
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電材卸業界の現在地
数字はすべて官公庁・業界団体の一次資料から引用し、出典と年次を明記しています。 他社の記事に流通している出典不明の数値は使いません。
電材卸の承継で、実際につまずくところ。
許認可と有資格者の整理は、譲渡が成立するかどうかそのものを左右します。 ここを後回しにすると、条件が固まってから話が振り出しに戻ります。
株式譲渡と事業譲渡で、メーカー口座の扱いが変わる
株式譲渡では契約の当事者である法人が変わらないので、メーカーとの取引基本契約はそのまま続きます。事業譲渡は契約上の地位を買い手へ移すことになり、民法539条の2により相手方であるメーカーの承諾が要ります。ここまでは制度の話です。実際の結果は、契約に株主の変動や解除の条項があるか、メーカーが与信を見直すかで変わります。覚書や口頭の取り決めで続いている掛率・リベートもあるため、契約書だけを読んでも条件の全体は分かりません。
仕入高の大きい順に、メーカーとの取引基本契約と、掛率・リベートの通知書類を集め、解除、地位の譲渡、株主の変動に関する条項を確認します。仕入先に差し入れている社長個人の保証や担保の有無も、契約書で見ます。メーカーに誰がいつどの順で話すかは、買い手候補が決まる前に決めておく項目です。
社長の個人保証は、銀行借入と仕入先の取引で別々に残っている
電材卸は買掛金が大きく、仕入先との取引に社長個人の保証や不動産の担保が付いていることがあります。銀行借入の保証とは別の契約なので、銀行との間で解除の話が進んでも、仕入先側に残ったままになりえます。参考までに、金融庁が公表した民間金融機関の2025年度実績では、代表者交代時に、旧経営者の保証が外れて新経営者とも結ばなかったのは16.7%、旧経営者の保証が外れて新経営者が結んだのは40.6%、旧経営者の保証が残ったまま新経営者とは結ばなかったのは39.7%でした(M&Aに限らない代表者交代全体の数字)。
銀行借入の保証と、仕入先に出している保証・担保を一覧にして洗い出します。解除できるかどうかは、金融機関と仕入先それぞれの判断です。最終契約までに、どの保証を誰がどこへ話すかを決めます。銀行側の考え方は、経営者保証を扱ったコラムにまとめています。
工事部門を持つ電材卸は、許可と登録の整理が先
卸が建設業許可(電気工事業)を持って工事も請けている場合、電気工事業法の登録の規定は適用されず、みなし登録電気工事業者として扱われます(電気工事業法34条)。株式譲渡なら法人が変わらないので建設業許可の承継認可は要りませんが、役員の変更は30日以内、経営業務の管理体制や営業所技術者が交代する場合は2週間以内の届出が必要です。工事部門だけを売るなら、承継は事前の認可で、移せるのは許可を受けている建設業の全部に限られます。卸の部門だけを売っても、許可は売り手の法人に残ります。許可がなくても、電材を納めたうえで取り付けまで引き受けているなら、電気工事業法の登録が要る工事に当たらないかの確認が要ります(同法2条1項は、電気工事から除くのを家庭用電気機械器具の販売に付随する工事だけにしています)。
工事の売上比率、建設業許可の有無と業種、電気工事業の登録・届出の状況、主任電気工事士・営業所技術者・経営業務の管理体制を担っている人を、最初に棚卸しします。許可の承継手続きの全体像は「建設業許可・電気工事業登録の承継早見表」に、みなし登録は専用のコラムにまとめています。個別の可否は、行政書士か管轄の窓口で確認してください。
販売するだけでも、電気用品の表示が条件になる
電気用品安全法27条は、電気用品の製造、輸入、販売の事業を行う者は、所定の表示(いわゆるPSEマーク)が付いたものでなければ、販売も販売目的の陳列もしてはならないと定めています。メーカー品を仕入れて売る卸も、販売の事業者として対象です。古い在庫、輸入品、メーカーが廃番にした品のなかに、表示のない電気用品がないかは、買い手の調査の対象になります。
在庫のうち電気用品に当たる品目を拾い、表示の有無を棚卸しのときに確認します。表示がない品や判断がつかない品は、譲渡前に処分するか、対象から外すかを決めます。
ここまで読んで「うちはどうだろう」と思われたら、 そこがご相談のタイミングです。
売却をお決めでなくて結構です。費用はかかりません。匿名でもかまいません。
許可・登録を、もっと詳しく
- 売る・残す・たたむで、許可と登録の行き先はどう変わるか 承継方法別の早見表
- みなし登録電気工事業者とは 工事部門を持つ卸の届出
決算書に出ない、電材卸の値打ち。
メーカーとの取引口座と、その条件
電材卸は、商品の流通、商品情報の提供、信用の供与という卸機能を担う業態です(全日電材連の説明)。価値になるのは、口座があること自体よりも、その口座で積み上がった仕切りの掛率、リベート、支払サイト、与信枠です。どのメーカーを組み合わせて扱っているかも、商圏での強みになります。
取引条件は仕入実績に応じて決まることが多く、新しく開いた口座は実績のない条件から始まります。ただし買い手がすでに同じメーカーと取引していれば、口座の値打ちは「いまの条件との差」と「商圏が広がること」に縮みます。同じ会社でも買い手によって値打ちが変わる項目なので、仕入高の大きいメーカーから順に、買い手候補が持つ口座との重なりを見ます。
売掛金の質と、与信を管理する仕組み
電材卸の得意先は工事店です。工事店は元請から入金されるまで支払いを待つ立場にあり、卸は掛売りで、その間の資金を実質的に立て替えています。売掛金が回収できるか、与信枠を誰がどう決めているか、過去に貸倒があったか。決算書の売掛金の額面は、この中身を教えてくれません。
建設業の倒産は2025年に2,021件で、4年連続で増えました(帝国データバンク)。得意先の工事店が1社倒れると、その分の売掛金がそのまま貸倒になります。純資産をもとに価格を考える方法では売掛金が資産として入るので、回収の見込みが低い分は価格から引かれます。売掛金の年齢表(締め日から何日たっているか)と貸倒の履歴を出せる会社は、与信管理ができている会社として見られます。
在庫の質と、銅建値で動く電線在庫
棚卸金額が同じでも、定番品が回っている在庫と、何年も出荷のない特注品の山では価値が正反対です。電線はそこに銅建値が加わります。国内銅建値の年度平均は2019年度の681.6千円/トンから2025年度の1,695.4千円/トンへ約2.5倍になり、2025年度の中でも上期平均1,461.4、下期平均1,929.5千円/トンと約3割開きました(日本電線工業会、出所はJX金属)。
帳簿の在庫は仕入れた時の価格で載るのが通常なので、建値が上がったあとは、電線在庫の帳簿価額と実際の売値に差が開きます。買い手がどちらで評価するかは交渉の論点になり、建値が下がる局面では逆の評価損になります。もう一つ、建設・電販その他内需向けの銅電線の出荷量は2021年度から2025年度で約9%減っているので、電線の売上が横ばいでも、数量では減っている可能性があります。電線の売上を数量と単価に分けて出せるかどうかが、説明の材料になります。
得意先の数と、上位への集中度
売上の大半が上位数社に依存している場合と、地域の工事店に薄く広く分散している場合では、リスクの性質が違います。電材は同じ商品を他の卸からも買えるので、取引が続く理由が、納期や在庫の厚みや与信への対応力にあるのか、社長個人との関係にあるのかが問われます。
代替わりや担当者の異動で上位の取引先が動くと、売上が一度に減ります。逆に、特定の人を介さずに日々注文が入る形ができていれば、それ自体が引き継げる資産として評価されます。
配送と現場対応(朝便・昼便・現場直送)
工事店の工程は現場の都合で決まります。たとえば前日夕方に決まった追加分を、翌朝の現場に入れられるか。自社便を持ち、現場直送に対応できるかは、仕入先として選ばれる理由そのものです。
配送は、ドライバー、車両、在庫の置き場所が揃って成り立つ機能で、どれかが欠けると再現できません。自社便を外注に切り替えると原価も納期も変わるので、買い手は「いまの配送を続けるのに何人・何台が要るか」を数えます。
営業担当の属人性(番頭問題)
取引先との関係が特定の営業担当に集中していると、その人が辞めたときに売上が動きます。見積の掛率を担当者の判断で決めている会社ほど、取引条件が担当者の頭の中にあります。
買い手は、担当者別の売上表で「誰が辞めたら何%動くか」を確認するのが通常です。社長自身が最大の営業担当である会社では、社長が抜けた時点で同じ問題が起きるので、引き継ぎ期間の長さが条件交渉の中心になります。担当が変わっても受注が続く仕組み(受発注の記録、掛率の基準表)があれば、加点の材料です。
電材卸を、誰が買うのか。
売り手の方が最初に知りたいのは価格ではなく、「本当に相手がいるのか」です。 この業種の買い手になりうる会社を、類型ごとに整理しました。
電設資材の専門商社(隣接する商圏の同業)
買い手として想定しやすいのは、商圏が隣り合い、扱うメーカーが重なる同業です。重なる部分は口座が二重になり、重ならない部分はそのまま取扱品の拡張になります。ただし、電材卸が電材卸を買収した事例は、公表資料では確認できていません。次の1件はグループ内の合併です。電設資材などの販売を手がける会社を、エレクトロニクス系の商社が買った例は、このページ下の公表事例にあります。当社も電設資材の卸であり、同業として買い手候補になる場合があります。この立場の重なりは、利益相反管理方針のページに開示しています。
- 高見澤は2025年4月1日、連結子会社の昭和電機産業(電設資材・産業機器・空調システム等の販売)が、その子会社の岐阜電材(電設資材・空調システム等の販売)を吸収合併することを決議した。目的は、岐阜エリアの営業力向上と事業運営の効率化。グループ内の再編で、第三者からの買収ではない。 出典
※ 公表情報をもとにした業界動向の紹介であり、いずれも当社が関与した案件ではありません。
設備工事会社・サブコン(川下の大手)
大手の設備工事会社は、中期経営計画でM&Aを成長投資の手段に挙げています。きんでんは2021〜2026年度の計画で、関電工は2024〜2026年度の計画で、いずれもM&Aを用途に含めています。ただし目的は施工力や事業領域の拡大で、電材卸の買収を明言した記述は、確認した範囲ではありません。工事会社が資材の調達機能を持つ目的で卸を買う、という動機は考えられますが、公表事例としては確認できていません。
社内・親族への承継(売らない選択肢)
番頭や幹部への承継、親族への承継は、買い手を探す前に比べておく選択肢です。帝国データバンクの調査では、2025年に代表者が交代した企業の承継手段は、内部昇格36.1%、同族承継32.3%、M&Aなど20.6%、外部招聘7.6%でした(全業種)。売らずに続ける道が、数字の上でも多数派です。
この業種では、実際に買い手が動いています。
各社の公表情報のまとめであり、当社の成約実績ではありません。
2024年11月
カナデン〈8081〉 が 髙島電機株式会社 を譲受
エレクトロニクス技術商社 → 山形市。山形県を中心に東北地方で、電設資材やFA機器をはじめ、制御機器、高低圧受配電盤の設計・製造・販売。全株式(議決権100%)を取得
髙島電機は、電設資材やFA機器の販売と、高低圧受配電盤の設計・製造を、同じ会社で行っていました。買ったのは電設の同業ではなく、エレクトロニクス系の商社です。開示された目的は、主力のFAシステム事業の事業領域の拡大で、カナデンのFAシステム事業との連携による商材の拡大や技術力の増強なども挙げられています。株式譲渡の実行日は2024年12月2日とされていました。
2018年12月
藤井産業(現・藤井産業ホールディングス) が 株式会社サンユウ を譲受
宇都宮市。グループで電設資材・情報機器・建設資材などの卸売、施工・保守を行う → 埼玉県ふじみ野市。産業機械の電気設備工事、制御盤・分電盤の設計及び製作。藤井産業の出資比率100%
資材を扱うグループが、盤の製作と電気設備工事の会社を100%子会社にした事例です。藤井産業の沿革には「買収し100%子会社とする」とあり、2018年12月の記載です。
最初の一歩は、匿名の相談で結構です。
- 1
匿名でご相談
社名の入力は任意です。売却をお決めでない段階のご相談を歓迎します。相談に費用はかかりません。
- 2
許認可と有資格者の棚卸し
電材卸・電設資材商社の承継で最初に確認すべき許認可・資格の状況を整理します。ここに問題があると後の工程がすべて崩れるため、最優先で行います。
- 3
企業価値の整理と資料づくり
決算書に出ない価値を、買い手に伝わる形の資料に整えます。ここが評価額を最も大きく動かします。
- 4
買い手候補の選定と打診
打診してほしくない先を最初に伺い、候補から外します。秘密保持契約を結ぶまで、社名や所在地は買い手候補に伝えません。
- 5
条件交渉・最終契約・引き継ぎ
価格だけでなく、従業員の雇用、代表者保証の解除、引き継ぎ期間まで含めて条件を設計します。
電材卸業界の主な団体
- 全日本電設資材卸業協同組合連合会(全日電材連)
- 全国11ブロックの29組合が会員。各組合に所属する電設資材卸会社は約700社
- 日本電線工業会
- 銅電線の出荷量と、国内銅建値の月平均推移表を公表している電線メーカーの団体
電材卸の承継について、よくいただく質問。
電材卸のM&Aでは、会社の値段は何で決まりますか。
特約店契約や取引口座は、売却すると引き継げますか。
在庫が多いのですが、マイナス評価になりますか。
売上の6割が1社に集中しています。売れますか。
運営しているのが同業の電材商社だと、相談しにくいのですが。
息子や番頭に継がせるのと売るのと、どう考えればよいですか。電材屋に将来性はありますか。
川上と川下も、まとめて見ています。
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読む →電材卸のことは、電材卸を知る相手に。
売却をお決めでない段階で結構です。
「うちはいくらぐらいなのか」だけでも、お答えできます。
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