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後継者がいない

「継がせる相手がいない」のは、経営の失敗ではありません。


息子さんは別の会社で働いている。番頭さんは自分と年齢が近い。社員に株を買う資力はない。同じ状態が、いま全国の会社の半分で起きています。自分を責める前に、残っている道を一緒に数えませんか。

「うちには誰もいない」の中身

「後継者がいない」という言葉の中身は、会社ごとに少しずつ違います。 ただ、ご相談を伺っていくと、だいたい次の三つに集まります。

  • 息子や娘は別の会社に勤めていて、継ぐ意思がない。無理に呼び戻す気にもなれない
  • 現場を任せられる番頭格はいる。ただ、自分と年齢が近い。継いでもらっても、すぐ次の承継が来る
  • 若い社員はいる。ただ、株を買い取る資力はないし、借入の個人保証を背負わせるのは忍びない

どれかに心当たりがあるはずです。そして多くの社長さんが、これを自分の責任のように話されます。 「もっと早くから育てておけばよかった」「自分の代で終わらせてしまう」と。

その感覚を否定はしません。ただ、事実は別のことを示しています。

後継者がいない会社は、全国の多数派です

全国の後継者不在率は50.1%。半分の会社に後継者がいません。 そして建設業は57.3%で、調査対象8業種のうち最も高い数字です(2025年、帝国データバンク)。 電気工事会社も、この建設業に含まれます。

つまり電設の会社で「継がせる相手がいない」のは、例外ではなく多数派です。 育て方を間違えたのでも、会社に魅力がないのでもありません。 子の世代には子の世代の職業があり、株と個人保証という重い荷物は、意欲だけでは引き受けられない。 構造がそうなっています。

もうひとつ。2025年に代表者が交代した企業では、親族が継いだ同族承継は32.3%で、 社内からの昇格(36.1%)を下回っています(帝国データバンク)。 「会社は子が継ぐもの」という前提のほうが、すでに実態と合わなくなっています。

道は4つ。条件だけでなく、気持ちの面も並べます

後継者がいない会社に残されている道は、制度としては4つです。 比較表は条件の違いしか教えてくれないので、ここでは気持ちの面も一緒に並べます。

会社と屋号 気持ちの面 現実に止まるところ
親族内承継 残る いちばん収まりがよく見える 本人に意思がなければ、そもそも始まらない
従業員承継 残る 「あいつなら」と思える相手に渡せる 株を買う資金と、借入の個人保証
第三者承継(M&A) 残せる 「身売り」という言葉が引っかかる 相手が現れるかどうか。探す期間が要る
廃業 消える 誰にも頭を下げずに終われるように見える 従業員と取引先の行き先。費用も先に出る

条件や費用の面は、この会社に残された道は、いくつあると思いますかで、 ひとつの会社を例に最後まで数えています。このページでは、気持ちの面を順に見ていきます。

親族と社員——「人はいる」のに動かない理由

親族内承継でいちばん多いのは、「継いでほしい」と「継ぎたい」が揃わないことです。 意思のない人に継がせると、同じ問題が数年後に、より難しい形で戻ってきます。 息子さんの「継がない」という返事は、多くの場合、迷った末の結論です。 そこを動かそうとするより、返事を前提に残りの道を数えるほうが、会社も親子の関係も守れます。

従業員承継は、意欲の問題ではなく資金の問題で止まります。 会社を継ぐとは、社長の椅子に座ることではなく、株を持つことです。 そして株には値段が付き、借入には個人保証が付いてきます。 「あいつなら任せられる」と「あいつが株を買い取る資金を用意して、保証まで引き受けられる」の間には、 大きな距離があります。 数年に分けて買い取る、受け皿の会社を作るといった設計はありますが、どれも年数がかかります。

番頭さんの年齢が近い、という悩みについて

「継いでもらっても10年もたない」と、この道を最初から消してしまう方がいます。 ただ、番頭さんが継ぐことと、番頭さんが経営の要件を満たしておくことは別の話です。 役員に入っていれば、建設業許可の「経営業務の管理責任者」の要件を満たす人が社長以外にもいる状態になり、 第三者承継を選ぶ場合にも会社の評価を支えます。継がせない場合でも、意味のある一手です。

廃業——静かに見えて、ひとりで背負う道

廃業を選びたくなる気持ちは、よく分かります。誰にも会社を渡さず、頭も下げず、自分の代で始末をつける。 責任感の強い方ほど、この道を「潔い」と感じます。

ただ、廃業は「何もしない」選択ではありません。 事務所や倉庫の原状回復、在庫や工具の処分、従業員への解雇予告手当と退職金、 仕掛工事の後始末、借入の返済。費用を払い、資産を目減りさせて、はじめて終わります。 そして、従業員の次の職場と、取引先の次の仕入先・施工先は、自分では決められません。

それでも廃業が合理的な場合はあります。清算して手元に残る額が譲渡で得られる額を上回る場合や、 従業員の行き先がすでに確保できている場合です。 ご相談を受けて「たたんだほうがいい」とお伝えすることもあります。 ただそれは、4つの道を並べて比べたうえでの結論であってほしいのです。 1つしか見ずに選んだ廃業と、全部見てから選んだ廃業は、同じ廃業でも意味が違います。

第三者承継——親族にも社員にも頼らずに、会社を残す道

第三者承継(M&A。会社の株式を別の会社に譲り、経営を引き継いでもらうこと)は、 4つの中で唯一、「継がせる相手が社内にいなくても、会社を残せる」道です。

「身売り」という言葉が引っかかる方は多い。 ただ実際の中身は、屋号を残し、従業員の雇用を引き継ぎ、取引先との商流を保ったまま、 株主と経営者だけが替わるという取引です。 電設の場合、買い手の中心は同業や隣接業種——人が採れずに困っている会社です。 彼らにとって、有資格者と職人がそのまま来ることは採用の代替になります。 誰が、なぜ買うのかはこの会社を欲しがる会社は、いると思いますかに書きました。 読んでから戻ってきていただくと、この道の実感が変わるはずです。

この道を残すために、ひとつだけ先に確認を

建設業許可の「経営業務の管理責任者」の要件を、社長以外にも満たす人がいますか。 社長しか満たしていない会社では、退任と同時に許可が維持できなくなり、 買い手にとっての価値が根本から崩れます。対策はありますが、時間が必要です。 制度の中身は社長が引退すると建設業許可が消える会社があるをご覧ください。

どの道を選ぶにしても、順番は同じです

4つの道のどれかが正解と決まっているわけではありません。ただ、選ぶ順番は共通しています。 まず、自社に何が残っているかを数える。親族に意思があるか。社内に株と保証を引き受けられる人がいるか。 渡せる価値——許可、有資格者、取引先、仕入口座——が何本あるか。清算したら、いくら残るか。 どれを選ぶかは、数えたあとで決めれば十分です。

数えるための道具は用意してあります。 企業価値の目安を出す診断は、入力内容が送信されず、お名前も不要です。 承継準備チェックリストは、印刷してそのまま社内でお使いいただけます。 電気工事会社に固有の論点は電気工事会社の事業承継とM&Aにまとめました。 費用の心配は要りません。売り手の方からは相談料・着手金・中間金・月額報酬をいただかず、 成約した場合の成功報酬のみです(手数料のページにすべて書いてあります)。

私たちは1950年から電設資材を扱ってきました。 資材を納める側から、番頭さんが会社を回している姿も、 息子さんが別の道を選んだあとの会社も、ずっと見てきました。 だから「継がせる相手がいない」という言葉の重さは、数字より先に、現場で知っています。

売却をお決めでない段階で結構です。 まず、自社に残っている道を数えるところから始めましょう。 ご相談は、その整理だけでも構いません。

「まだ決めていない」で、かまいません。

話を聞いたからといって、進めなければいけないことはありません。

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