社長が亡くなったとき、会社と許可と借入に何が起きるか
このたびは、心からお悔やみ申し上げます。法人の許可と借入は、社長が亡くなっただけでは消えません。許可と登録で2週間の期限が動くのは、社長が経営業務の管理責任者・営業所技術者・主任電気工事士を兼ねていたときです。亡くなった日を入れると、日付入りの期限表ができます。
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法人の許可は会社に残る。動くのは、社長が座っていた資格の席
葬儀の前後に、銀行や元請や社員から「会社はどうするのか」と聞かれて、このページを開かれたのだと思います。 先にお伝えできることがあります。会社は法人で(会社法3条)、許可や登録を持っているのは会社です。社長が亡くなって入れ替わるのは、株式の持ち主と、役員の顔ぶれです。 会社法が挙げる解散の事由に、社長の死亡は入っていません(同471条)。
電気工事の会社で話が変わるのは、社長ひとりが資格の席をいくつも埋めていたときです。席は3つあります。
- 建設業許可の経営業務の管理責任者(経管)
- 営業所ごとに置く営業所技術者(旧称は専任技術者)
- 電気工事業の主任電気工事士
どれかが欠けると、2週間以内の届出や選任という期限が動き出します。
個人事業主の場合は、持ち主が本人なので話が違います。建設業許可は、相続人が事業を続けるなら死亡後30日以内に認可を申請します(建設業法17条の3)。 下の期限表は、法人と個人事業主で行が入れ替わります。
亡くなった日を入れると、日付入りの期限表ができます
並んだ期限を、今日すべて片づける必要はありません。顧問の税理士・行政書士・司法書士に渡せば進められる手続きが多く、この表は、何がいつまでにあるかを先に見渡すためのものです。 入れた内容は外に送らず、この端末の中だけで計算します。道具を使った回数だけを数え、入力した日付や選択は含みません。 亡くなったことを知った日が亡くなった日と違うときは、「知った日」も入れてください。税の期限や相続放棄は、知った日から数えます。
経管・営業所技術者・主任電気工事士:欠けたときの期限は2週間
建設業法は、経管か営業所技術者の基準を満たさなくなった許可を、行政庁が「取り消さなければならない」と書いています(29条1項1号)。 裁量で取り消すかどうかを選ぶ書き方ではありません。後任を置くまでの扱いは条文に書かれていないので、2週間のうちに許可行政庁の窓口へ相談するのが近道です。 電気工事業法の側は、主任電気工事士の選任義務に違反したとき、登録を取り消し、または6か月以内の事業停止を命ずる「ことができる」という書き方です(28条1項3号)。建設業許可に伴うみなし登録では、登録の取消しの部分は適用されず、事業停止の命令が対象になります(34条1項)。
主任電気工事士を置くのは、一般用電気工事の業務を行う営業所(特定営業所)ごとです(19条1項)。そこに、気づきにくい入口があります。事業者(法人は役員のいずれか)が第一種電気工事士、または第二種電気工事士で3年以上の実務経験があり、その営業所の業務に自ら主として従事しているなら、主任を置かなくてよいという例外があります(19条2項)。 社長がこの例外で主任を置かずに済ませていた営業所では、社長が亡くなると例外が使えなくなり、2週間の選任の義務が生まれます。条文は、この場合を明示して選任の対象に含めています(19条3項2号)。 ほかの役員が有資格者で自ら従事しているなら、選任は要らない場合があります。
有資格者が社長だけで、主任を置かずに済ませていた営業所では、社長の死亡がそのまま、2週間の選任義務の始まりになる。
経管は、社長ひとりが満たす形だけではありません。建設業で5年以上、経営業務の管理責任者としての経験などをもつ常勤役員等が1人いる形のほかに、建設業で2年以上の役員等の経験を含め、役員等などとして通算5年以上の経験をもつ常勤役員等が1人いて、財務管理・労務管理・業務運営の経験者を直接の補佐者として置く形も認められています(施行規則7条1号イ・ロ)。 社内で組み立てられるかは、許可行政庁と行政書士に確かめてください。 許可の承継全般は建設業許可・電気工事業登録の承継早見表に、席ごとの詳しい話は 経営業務の管理責任者、営業所技術者、主任電気工事士のコラムにあります。 建設業許可を持つ会社の電気工事業は「みなし登録」になり、変更の届出は条文上「遅滞なく」です(電気工事業法34条4項。みなし登録電気工事業者)。
株式は相続人の共有になり、議決権は1人にまとめるまで使えない
相続人が数人いるとき、社長の株式は相続人の共有になります(民法898条1項)。 共有のままでは、権利を行使する人を1人決めて会社に通知しない限り、会社が同意した場合を除き、議決権などを使えません(会社法106条)。 社長が過半数の株式を持っていた会社では、この話がつくまで、株主総会で新しい取締役を選ぶことが難しくなります。決め方に迷うときは、弁護士に相談します。
取締役が社長ひとりだった会社には、もうひとつの問題があります。 会社法346条1項には、役員が欠けたとき「なお役員としての権利義務を有する」人の定めがありますが、対象は「任期の満了又は辞任により退任した」役員です。亡くなった場合は書かれていません。代表取締役も同じです(351条1項)。 こういうときは、利害関係人の申立てで、裁判所が一時役員(代表取締役なら一時代表取締役)の職務を行う人を選任できます(346条2項・351条2項)。 取締役がほかにもいる会社は、取締役会を置かない会社なら、定款・取締役の互選(定款の定めに基づくもの)・株主総会の決議のいずれかで代表取締役を定められます(349条3項)。取締役会を置く会社は、取締役会が取締役の中から選定します(362条2項3号・3項)。
取締役・代表取締役が変わったら、2週間以内に本店の所在地で変更の登記をします(会社法915条1項)。登記の代理は司法書士に頼めます(司法書士法3条1項1号)。 譲渡制限株式については、定款に定めがある会社は、相続で株式を取得した人に、その株式を会社へ売り渡すよう請求できます。請求の前に株主総会の決議が要り、請求できるのは、会社が相続があったことを知った日から1年以内です(会社法174条・175条・176条1項)。 相続人から見ると、株式の行き先を会社の側から決められる場合がある、ということです。定款の定めの有無を、先に確かめておきます。
借入と社長個人の保証は別のもの。相続放棄は、その両方に関わる
会社の借入は会社の債務です。株式を相続しても、株主の責任は出資額が限度です(会社法104条)。 社長が個人で保証人になっていたなら、その保証債務は、相続人が受け継ぐ対象になります(民法896条)。 保証には種類があります。借入ごとの保証と、継続的な取引全体を保証する根保証です。根保証は、保証人が亡くなったときに元本が確定します(民法465条の4第1項3号)。個人の根保証は、極度額を定めていなければ効力を生じません(同465条の2第2項)。 保証契約を結んだ時期によって適用される規定が違う場合があるので(平成29年法律第44号の附則21条1項)、契約書の保証欄で、どの借入に、どの種類の保証が、いつ結ばれているかを確かめます。
相続放棄をすると、初めから相続人でなかったものとみなされます(民法939条)。保証債務も株式も受け継ぎません。 保証を避けたい気持ちと、株式を手放したくない気持ちが、同じ決断の中にあります。 期限は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月です(民法915条1項)。見通しが立たないときは、3か月の期間内に、家庭裁判所へ期間の伸長を申し立てられます。 放棄を考えるなら、預金を解約して使うなど、相続財産の処分に先に手をつけないでください。処分すると単純承認とみなされることがあります(民法921条1号。保存行為は除く)。
金融機関の側にも、期待されている対応が示されています。事業承継時の「経営者保証に関するガイドライン」の特則(2019年12月)は、原則として前経営者と後継者の双方から二重には保証を求めないとし、後継者に当然に保証を引き継がせず、保証の必要性を改めて検討するよう求めています。 そこには例外も書かれています。前経営者が亡くなり、相続が確定するまでの間、亡くなった前経営者の保証を解除せずに後継者から保証を求める場合は、事務手続の完了後に解除が予定されている一時的な二重徴求として認められる事例とされています。 金融庁は2026年5月1日に「M&A・事業承継時における経営者保証情報ネットワーク」を開設しました。相談できるのは、M&A・事業承継を検討・実施中の経営者や、法人の経営を承継することが予定されている後継者などです。ご遺族が当てはまるかは、窓口に確かめてください。 保証についての相談は経営者保証を外す話にもあります。
税の期限は2つ。死亡退職金の非課税枠は、放棄した人には使えない
亡くなった年の1月1日から亡くなった日までの所得は、確定申告が必要な場合に、相続人が準確定申告を出します。期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です(所得税法125条1項、国税庁 No.2022)。 前年分の確定申告を出さないまま、年明けの確定申告期限(原則3月15日)までに亡くなった場合は、前年分も同じ期限です(No.2022)。 相続税の申告と納付は、知った日(通常は死亡の日)の翌日から10か月以内です。国税庁は「1月6日に死亡した場合にはその年の11月6日が申告期限」と案内しています(No.4205)。出すのは、取得した財産の価額の合計額(債務などを引いた額)が基礎控除額(3,000万円+600万円×相続人の数)を超えるときで、小規模宅地等の特例を使う前の額で判定します(相続税法15条1項・27条1項、No.4205)。 国税の期限が土曜日・日曜日・祝日などに当たるときは、翌日が期限とみなされます(国税通則法10条2項)。相続税の提出先は、相続人の住所地ではなく、被相続人の住所地の税務署です。 個人事業主で消費税の課税事業者だったときは、消費税の申告も、同じ4か月です(消費税法45条3項)。
死亡退職金は、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものが相続税の対象で、相続人が受け取った分には「500万円×法定相続人の数」の非課税限度額があります。 相続を放棄した人は、この非課税の対象に含まれません。ただし、法定相続人の数には、放棄をした人も数えます(相続税法12条1項7号・15条2項、国税庁 No.4117)。 相続放棄を考えている相続人が、死亡退職金を受け取る立場にもあるときは、税理士と弁護士の両方に確かめる箇所です。
相続放棄の3か月は「知った時から」、準確定申告の4か月と相続税の10か月は「知った日の翌日から」と書かれていますが、数え方は同じです。知った日は数えず、翌日から数えます。 月で定める期間は、応当する日の前日に満了し、応当日がなければ月末に満了します(民法140条・143条、国税通則法10条1項)。 平年の2月28日に知った場合の3か月後は、同じ日付の5月28日ではなく5月31日になります。うるう年の2月28日なら5月28日です。期限表は、この数え方で計算しています。
閉じると決める前に、値段がつくかどうかだけ確かめることもできます
東京商工リサーチによると、2026年度上半期(4〜9月)の「後継者難」倒産263件のうち、代表者の死亡が120件、体調不良が105件で、合わせて85.5%を占めました。 帝国データバンクの集計では、同じ期間の「経営者の病気、死亡」を主因とする倒産は204件で、2000年度以降で初めて200件を超えています。 集計の定義は両社で違うので、数字を足し合わせることはできません。どちらも倒産した会社だけを数えたもので、この数字から、ご自身の会社がそうなる見込みは読み取れません。社長の不在が会社の行き詰まりにつながる例がある、という範囲の話です。
電気工事の会社の値段を左右するのは、許可・登録・有資格者・取引先の口座になりがちです。 廃業の届出で許可がなくなったあとは、新しく申請して、経管・営業所技術者・財産的基礎などの基準を満たし直すことになります。 閉じると決める前に、会社に値段がつくかどうかを確かめることはできます。確かめた結果が、親族や社員への引き継ぎ、現状のままの維持、廃業のどれに戻っても構いません。 廃業か譲渡かと小さな会社の値段のページに、比べる材料があります。
相談料は無料です。電話でも、フォームでも、匿名でも相談できます。 社名も金額も出さずに目安だけ見たいときは、企業価値の診断があります。 株式の行き先が決まる前でも、許可と資格者の状況だけは整理できます。
専門家の分担:登記は司法書士、許可は行政書士、保証と相続は弁護士、税は税理士
当社はこの4つの資格者ではなく、個別の事案についての法律上・税務上の助言はしません。このページは、条文と官公庁の資料にもとづく一般的な整理で、個別の可否や税額を断定するものではありません。 顧問の税理士や行政書士がいらっしゃれば、まずその先生に、この期限表を見せてください。
社員の方へ:最初の1週間に、確かめておけること
社長が経理をひとりで担っていた会社なら、通帳や印鑑の場所が分からないこともありえます。 最初の1週間に、社員の方が確かめられることから挙げます。
- 給料日、取引先への支払い日、リースや手形の期日を一覧にする。
- 稼働中の現場の工期と、元請の連絡先を整理する。
- 建設業許可通知書、電気工事業の登録の控え、電気工事士免状、資格者証のしまってある場所を確かめる。
- 社長が経管・営業所技術者・主任電気工事士だったかを、許可通知書の記載や登録の控えで確かめる。
- 融資の契約書と、社長が個人保証をしている借入の一覧のありかを、遺族に伝える。
経管や営業所技術者の席に社員が座れるかは、資格や実務経験の年数、常勤であることなどの書類で決まります。経管は常勤の役員等が務める形なので(施行規則7条1号)、役員でない社員がそのまま座ることは、原則としてできません。社内で組み立てられるかは、許可行政庁と行政書士の確認が前提です。 主任電気工事士なら、第一種電気工事士か、第二種電気工事士で3年以上の実務経験がある人が対象です(電気工事業法19条1項)。社員のどなたが当てはまるかを、免状の交付日で確かめます。 給料と雇用についての考え方は従業員の雇用のページにあります。
遺族に「会社を売るという道もあります」と切り出すのは、社員の方にとって勇気の要ることです。急ぐ話ではありません。許可と資格者の状況が整理できていることを伝えるだけにして、続けるか、譲るか、閉じるかは、遺族が決めるのを待ってください。 社員の方から伺った内容は、ご遺族の同意なく買い手などの外に出しません。ご相談はフォームか電話でどうぞ。 社長がまだ元気なうちの準備は社長が病気になったらに書きました。
根拠と確認先
- 会社法(第3条・第104条・第106条・第174条・第175条・第176条・第346条・第349条・第351条・第362条・第471条・第911条・第915条):e-Gov法令検索
- 民法(第140条・第143条・第465条の2・第465条の4・第896条・第898条・第915条・第917条・第921条・第924条・第938条・第939条):e-Gov法令検索
- 建設業法(第5条・第11条・第12条・第17条の3・第29条):e-Gov法令検索/同施行規則(第7条・第7条の2):e-Gov法令検索
- 電気工事業の業務の適正化に関する法律(第4条・第9条・第10条・第19条・第28条・第34条):e-Gov法令検索
- 所得税法(第125条):e-Gov法令検索/消費税法(第45条):e-Gov法令検索/相続税法(第12条・第15条・第27条):e-Gov法令検索/国税通則法(第10条):e-Gov法令検索
- 国税庁 タックスアンサー No.2022「納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」:ページ/No.4205「相続税の申告と納税」:ページ/No.4117「相続税の課税対象になる死亡退職金」:ページ(いずれも令和8年4月1日現在法令等)
- 裁判所「相続の放棄の申述」:ページ/「相続の承認又は放棄の期間の伸長」:ページ
- 日本年金機構「従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き」(2026年10月1日更新):ページ
- 経営者保証に関するガイドライン研究会「事業承継時に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」(2019年12月):PDF(全国銀行協会掲載)/金融庁「M&A・事業承継時における経営者保証情報ネットワーク」の開設について(2026年5月1日):ページ
- 東京商工リサーチ「2026年度上半期の『後継者難』倒産」(2026年10月6日):ページ/帝国データバンク「倒産集計 2026年度上半期報(4月~9月)」:ページ
- 民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)附則第21条:e-Gov法令検索(民法の附則に収録)
- 司法書士法(第3条)/行政書士法(第1条の3)/税理士法(第2条)/弁護士法(第3条):e-Gov法令検索
条文は e-Gov 法令検索の2026年10月14日取得分です。期限表の日付は、祝日と年末年始を計算に入れていません。 「知った日」の起算や、新しい役員が加わる変更の起算など、窓口で扱いが分かれうる箇所は、期限表に「目安」と付けてあります。 労災保険・雇用保険の届出は、事業主の死亡を直接扱った一次資料を確認できていないため、日付を載せていません。