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体調に不安がある方・ご家族へ

社長が入院・病気・認知症になったとき、会社と許可に起きること


意識がない社長に代わって、ほかの役員や社員が代表の行為をすることはできません。許可の要件は2週間で動き、株式の扱いは、判断できるうちにしか使えない手段が多くあります。治療が先で構いません。会社の側の順番を、条文の範囲で並べます。

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治療が先で、会社の準備は人に任せられる

体調を崩したうえで、会社のことが頭を離れない。 従業員、取引先、家族、借入と、考えることが重なって、治療に気持ちが向かなくなります。 会社の準備の多くは、人に任せられます。 治療だけは、ご本人にしか担えません。

経営者の病気は、統計にも出ています。 東京商工リサーチの集計では、2026年度上半期の「後継者難」倒産263件のうち、代表者の死亡が120件、体調不良が105件で、合わせて85.5%でした。 体調不良は、死亡に近い数です。 帝国データバンクの集計でも、同じ期間の「経営者の病気、死亡」を主因とする倒産は204件で、2000年度以降で初めて200件を超えました。

始めることと、決めることは別です。 相手を探す期間、条件を話し合う期間、許可と登録を整える期間は、どれも縮めるのに限度があります。 その一方で、売るかどうかの判断は最後まで留保できます。 早く始めて変わるのは、決めるときに選べるものの数です。

意識がない間の代表の行為は、代表者にしかできない

意識がない社長に代わって、ほかの役員や社員が代表の行為をすることはできません。

東京商工会議所の公開相談事例は、社長が意識不明のとき、役員と従業員は現場の運営を分担して支えるほかなく、代表行為はできないと説明しています。 入院が長引いて重要な契約が必要になったら、代わりに代表行為をする人を選ぶ必要があります。 確かめる点は三つです。

  • 代わりに代表者になれる人がいるか
  • 定款で、代表取締役がどう定められているか
  • その人が取締役でないなら、取締役を選ぶ株主総会を開けるか

株主が社長ひとりの会社では、社長の意思表示ができない間、株主としての決定をする人がいません。 この空白を埋める手段として検討されるのが、後見などの制度です。

許可と登録は、社長が抜けた日から2週間で動く

法人の建設業許可は会社が持っているので、社長が倒れても許可そのものは続きます。社長が亡くなっても、許可は相続の対象になりません。 問題は、社長が満たしている要件が欠けたときです。

社長ひとりが担っているもの 欠けたときに起きること 先に確かめること
建設業許可の経営業務の管理責任者 基準を満たさなくなったときは、2週間以内の届出が要り、許可は取り消されます(建設業法11条5項・29条1項1号) 社長のほかに満たす人がいるか、補佐者を置く形で満たせるか(規則7条1号)。経営業務の管理責任者のコラムへ
営業所技術者(旧:専任技術者) 欠けて、代わる人もいなければ、2週間以内の届出が要り、許可は取り消されます(建設業法11条5項・29条1項1号)。代わる人がいれば、2週間以内にその書面を出します(同法11条4項) 代わりになれる資格者と実務経験の人が、社内にいるか。営業所技術者が退職したときへ
主任電気工事士 社長が有資格者で自ら主として従事する営業所は、選任が不要です。欠けたときは、知った日から2週間以内に選任します(電気工事業法19条) 入院が続いて自ら従事できなくなったときの扱いは、登録を受けた経産省または都道府県に確認。主任電気工事士がいないときへ
借入の個人保証 亡くなったときは、保証も相続の対象です(民法896条)。極度額を定めた根保証は、保証人の死亡で元本が確定します(同465条の4第1項3号)。相続の承認か放棄は、知った時から3か月以内に選びます(同915条1項) 保証の一覧。事業承継時の保証は、後継者に当然には求めず、必要性を慎重に判断するよう、金融機関に求められています(経営者保証ガイドラインの特則)。経営者保証の外し方へ
株式 相続で共有になると、権利を行使する人を1人定めて会社に通知しないと、議決権などを行使できません(会社法106条) 遺言で行き先を決めるか、判断できるうちに動かすか。次の節の表へ

個人事業の建設業者の場合は、扱いが別です。 亡くなったあと30日以内に相続人が認可を申請すれば、認可か不認可の通知までは、被相続人の許可が相続人に対するものとみなされます(建設業法17条の3)。 許可と登録の全体は承継早見表にあります。

判断できるうちと、判断が難しくなったあとで、手段が変わる

契約は、結ぶ時点で判断できる人にしか結べません。

意思表示をした時に意思能力がなかった法律行為は無効です(民法3条の2)。 株式の譲渡も、任意後見契約も、信託契約も、結ぶ時点で本人が判断できることが前提になります。 判断が難しくなってから新しく使えるのは、家庭裁判所が関わる法定後見です。契約を結んでおいた任意後見や信託は、そのあとに動き出します。

手段 使える時期 制度の中身(法令・法務省の資料の範囲)
任意後見 判断できるうちに契約する 公正証書で契約します(任意後見契約に関する法律3条)。判断能力が不十分になったときに、本人や家族などの申立てを受けて家庭裁判所が任意後見監督人を選び、その時から効力が生じます(同2条1号・4条)。任せる範囲は契約で決めます。法務省は、任意後見では全件で監督人が選任されると案内しています
家族信託 判断できるうちに契約する 家族信託は通称で、法律上は信託です。財産を特定の人に託し、定めた目的に従って管理・処分してもらう契約を、信託契約といいます(信託法3条1号)。会社の株式を託す設計も考えられますが、定款の譲渡承認、借入の保証、税が絡むため、設計は専門家と詰めます
遺言 遺言をする時に、その能力があるうち 法律の方式に従わなければできず(民法960条)、遺言者は遺言をする時に能力を有する必要があります(同963条)。効くのは亡くなったあとなので、生きている間に判断できなくなる場面は、ほかの手段で備えます
株式の生前の譲渡・贈与 判断できるうちに契約する 持ち主を変える方法です。会社の承認が要る株式かどうかは小さな会社・有限会社の売却に条文を整理しました。税は税理士に確認します
法定後見 判断能力が不十分になったあと 本人、配偶者、四親等内の親族などが、家庭裁判所に申し立てます(民法7条・11条・15条)。選ばれた成年後見人は、本人の利益を考えながら代理し、家庭裁判所に報告して監督を受けます(法務省)

法定後見の後見人は、本人の利益を軸に動きます。 会社の事情や家族の希望が先に立つ制度ではありません。 後見人がいる場合に株式を売れるか、売るなら家庭裁判所がどこまで関わるかは、事案によって変わるので、断定できません。

社長自身が後見開始の審判を受けた場合の取締役の地位にも、論点があります。 委任は、受任者が後見開始の審判を受けたことで終了する旨の規定があり(民法653条3号)、 成年被後見人が取締役に就任するための手続も別に定められています(会社法331条の2)。 会社と役員の関係は委任に従う(同330条)ので、両方が絡みます。 代表取締役の登記を含めて、司法書士か弁護士に確認する領域です。

もうひとつ、制度は動いています。 2026年6月24日に公布された民法等の改正法(令和8年法律第45号)は、後見と保佐を廃止して補助に一元化する見直しを含みます。 施行日は、公布から2年6月を超えない範囲で政令で定める日で、2026年10月14日時点で確認できていません。 いま検討する場合は、現行の制度を前提に専門家と進め、施行後の扱いも併せて聞いておきます。

順番は、現状の把握、専門家への分担、許可の備え

一般論として、順番は次のとおりです。 個別の可否は、状況ごとに専門家が判断します。

  1. 会社の現状を一枚にする。次の節のとおり、ご家族が持っておく情報です。ご本人が書けない日は、ご家族が埋めても構いません
  2. 手段の選択を、専門家に分けて聞く。後見の申立て書類の作成や登記は司法書士、相続・保証・信託の設計や紛争は弁護士(信託は司法書士も)、株式の評価や贈与・譲渡の税は税理士、許可と登録の届出は行政書士に聞くのが一般的です。 法務省は、成年後見の相談先として弁護士会、司法書士会、社会福祉士会を挙げています
  3. 許可と登録の2週間に備える。社長が担っている要件を、社内の誰が代われるか決めておきます
  4. 売る・残す・閉じるの判断は、最後まで留保する。親族や社員への承継、廃業も同じ重さで比べます。会社に残された道に整理があります

当社が受け持てるのは、売る場合の買い手探しと条件の整理です。 後見、信託、遺言、税、届出は、上の専門家の領域で、当社が代わりに判断することはありません。

ご家族には、次の6点の場所だけ共有しておく

判断はまだ要りません。次のものがどこにあるかを、ご家族が知っていれば足ります。

  • 株主名簿と、株式の持ち分、定款
  • 登記事項証明書(代表取締役がだれか、ほかに取締役がいるか)
  • 建設業許可、電気工事業登録、みなし登録などの書類
  • 借入の一覧と、個人保証の有無
  • 顧問税理士と、取引金融機関の担当者の連絡先
  • 会社の先について相談している相手がいること

確認項目は承継準備チェックリストにあります。 ブラウザの中で完結し、入力は送信されません。 亡くなったあとの手続は、ご家族向けの社長が亡くなったときのページに、期限順にまとめます。

体調に合わせて、進め方を組み直せる

通院や入院と並行する場合は、標準のやり方に合わせる必要はありません。

  • 面談は、電話やオンラインでも進められ、事務所へお越しいただく必要はありません
  • 確認したいことは事前に書面でお渡しし、一度の面談の負担を抑えます
  • 決算書や許可関係の書類は、コピーをお預かりして整理し、ご確認だけいただく形にもできます
  • ご家族の同席は、初回からでも構いません
  • 体調の波に合わせて、止めることも、再開することもできます

相談から成約までの標準の流れは進め方のページにあります。 費用は、売り手の方からは成約時の成功報酬だけで、手数料のページに全部書いてあります。

ご家族の側の気持ちの整理は会社の先を家族に話すときに、 子の立場からは親の会社を継ぐか迷ったときに書きました。 ご家族向けの入口はこちらです。

まず、現状を一枚にまとめるところから

売却を決めていない段階で構いません。 株・許可・保証・連絡先という会社の現状を、一枚にまとめるところから始められます。 ご連絡は、ご本人でなく、ご家族からでも受け付けています。 どうか、お大事になさってください。

出典

条文は e-Gov 法令検索の2026年10月14日取得分です。制度は改正されます。 この表は一般的な整理で、個別の可否を決めるものではありません。実際に進める際は、司法書士・弁護士・行政書士・税理士に確認してください。

「まだ決めていない」で、かまいません。

話を聞いたからといって、進めなければいけないことはありません。

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