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公開: 最終更新: 電気工事

小さな電気工事の石綿調査記録を引き継ぐ|100万円未満でも確認したいこと

この記事にはモデルケースが含まれます

記事中のモデルケースは、理解を助けるための架空の例です。 当社の成約実績ではありません。

配線を通すため、既存の壁に穴をあける。照明や警報設備の位置を変える。こうした小さな改修の記録まで、会社の引継ぎ資料に入っているでしょうか。

石綿の確認を整理するとき、最初に分けたいのは、工事前の調査と、行政への調査結果の報告です。建築物の改修で「100万円未満だから報告対象ではない」と判断できる場合でも、それだけで事前調査まで不要になるわけではありません。会社承継では、この区別を理解している人と、根拠となる記録の両方を次へつなぎます。

この記事は、2026年10月19日時点の制度をもとにした記録の引継ぎの整理です。

調査・分析・除去を自分で行うための手順ではありません。個別工事の判断は、必要な資格を持つ調査者と所管窓口へ確認してください。

工事金額の前に、どこへ何をするのかを確かめる

厚生労働省の改修・リフォーム業者向け案内は、照明器具、警報設備、幹線などの電気設備を例示しています。対象となる解体・改修工事では、規模を問わず、作業に関係する部分の材料について事前調査が必要です。建物を丸ごと解体する会社だけの話ではありません。

例えば、40万円の配線改修で壁に新しい穴をあける計画を想定します。これは説明用の仮定で、実際の工事事例ではありません。見積額を確かめるだけでは、石綿への対応は判断できません。どの建材に、どのような作業をするかが必要です。大阪府の公式Q&Aも、石綿使用の可能性がある壁面等への電動工具による穴あけは、「極めて軽微な損傷」の除外に当たらず事前調査が必要と説明しています。大阪府Q&A・質問68

一方、すべての電気工事を工種名だけで同じ扱いにすることも避けます。調査の対象や方法の判断に必要なのは、実際に触れる部位と工事内容です。後継者へは、工事名だけの一覧より、部屋・天井・壁など対象部分が分かる図面や写真と一緒に渡します。

100万円は、建築物改修の報告基準の話

環境省は、建築物を改造・補修する工事について、請負代金の合計が100万円以上の場合を調査結果の報告対象に挙げています。この額には材料費と消費税を含み、事前調査の費用は含みません。同じ者が工事を分割して請け負う場合の扱いも定められています。環境省「石綿事前調査結果の報告について」

ここで混ぜないようにしたいのが、「調査をしたか」「結果を行政へ報告したか」「必要な記録を保管しているか」です。

報告システムの控えがない工事でも、報告対象外という判断と調査記録が必要になる場合があります。反対に、報告したという画面だけで、調査した範囲や判断根拠がすべて分かるとは限りません。

先ほどの仮想例でも、少額であることは記録を残さない理由にはなりません。承継時の一覧では、「報告なし」と一つの欄にせず、報告対象外と判断した根拠、調査資料の所在、未確認の事項を区別すると、次の担当者が再確認できます。

元請が持つ記録と、自社が施工する範囲をつなぐ

下請として入る現場なら、元請から調査結果を受け取っているかを確かめます。その際、「この建物は調査済み」という説明だけでは、自社の作業部分まで含まれるかは分かりません。

仮に、一階廊下の改修について調査資料を受け取ったあと、二階の別室へ配線を追加する依頼が来たとします。この場合、建物名が同じというだけで以前の記録を当てはめず、新たな工事範囲を資格者や元請と確認します。工事の変更と、調査の対象範囲を照合できる形にしておくことが必要です。

ここからは承継のための資料整理案です。

法定の記録項目に代わるものではありません。工事番号を起点に、対象箇所、元請・発注者、調査者、調査日、結果と根拠資料、後から変わった工事範囲をたどれるようにします。分析結果だけが保存されているなら、それがどの採取箇所・材料に対応するかまで確認します。別の担当者が資料を開き、現場のどこについて判断した記録なのか説明できるかが目安になります。

建築物の調査には定められた資格要件があり、対象となる工作物の事前調査者の要件も2026年1月から適用されています。電気工事士の免状を持つことだけで調査を担当できると考えず、対象に応じて確認します。工作物の種類や資格区分まで本稿の説明を一律に当てはめないでください。厚生労働省の調査者要件の案内

保存は「石綿関係は全部3年」でまとめない

大気汚染防止法に基づく事前調査記録について、京都市の案内は、元請業者・自主施工者に、解体等工事が終了した日から3年間の保存が必要と説明しています。調査箇所、調査者、材料ごとの判断根拠など、記録項目も示されています。京都市「記録の保存について」

ただし、石綿関係の書類を全部一緒にして、3年たったら処分する運用にはしません。調査記録、施工状況の写真、労働者ごとの作業記録などは、対象とする義務が違います。公式の法令対応早見表も、作業従事者ごとの記録を40年と区別しています。石綿則の該当する労働者別記録では、その事業場で常時その作業に従事しなくなった日を起点とするため、単純に工事完了年へ40を足す扱いとも異なります。厚生労働省・石綿則の解説

引継ぎ時には、記録の種類、義務を負う者、保存期間の起算日、保管場所、管理担当を分けます。法令ごとに起算日や保存対象が異なる点は、安全衛生担当者や所管窓口と確認してください。退職した社長のパソコンにだけ残っている場合は、必要な人が適切な権限で参照できる会社の保管先を整えます。個人の作業記録を、買い手候補へ一括で配る資料に混ぜることも避けます。

見つからない記録は、不明のまま担当を決める

古い工事の記録が見当たらないときに、「問題はなかったはず」と空欄を埋めるのは避けます。

探した場所、元請などへ確認した結果、まだ分からないことをそのまま残します。後から作ったメモを、当時の調査記録に見せてはいけません。

まず、進行中・着工予定の改修と、完了した工事を分けます。これから触れる場所について判断資料が足りないなら、工期を優先して作業を進めず、有資格者や所管窓口へ確認します。過去の案件に不足がある場合も、追加調査の要否や必要な対応は状況により異なるため、専門家と確認する対象として整理します。

承継後まで確認が残るものは、誰が元請へ照会するか、資料が見つかったらどこへ保存するか、追加の費用をどう協議するかを決めます。記録を渡したことと、法令上・契約上の責任がどうなるかは別途確認が必要です。売買契約の一文だけで整理したつもりにならず、保存義務と実際の管理体制を専門家と照合します。

次の担当が、工事を受ける前に探せる状態へ

石綿の記録を整理する価値は、買い手へ見せる資料が増えることだけではありません。

同じ得意先から次の修繕を頼まれたとき、どこまで確認済みで、どこを新たに調べる必要があるか、相談の出発点をつくれます。過去の調査をそのまま再利用できるという意味ではなく、対象範囲を確かめるための材料になります。

承継準備のチェックリストや買い手が確認する項目と併せ、進行中の改修一覧、調査記録の所在、照会が必要な案件をそろえてください。相談窓口へ伝える際にも、調査済みと不明を分けた情報が役立ちます。現場の安全判断は資格者と所管窓口へ、承継に伴う費用や管理分担は契約の専門家へ。それぞれの確認が、担当交代の途中で止まらないようにしておきます。

参照した一次資料

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執筆:松本電業株式会社(電設承継パートナーズ)

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