M&A・合併で経審と入札参加資格はどうなる|電気工事会社の承継で確認すること
経審(経営事項審査)と入札参加資格は、別の制度で、窓口も別です。株式譲渡なら、許可を持つ会社が同じなので、経審の結果も入札参加資格も会社に残ります。動くのは届出と人です。事業譲渡・合併・会社分割では、国が決算を待たずに新しい体制の経審を受けることを認めていて、入札参加資格は発注者ごとに、承継か再申請の手続きが要ります。
たとえば、市の電気設備工事を毎年請けている会社が、同業への譲渡の契約書案を前にしているとします。スキームの欄は「株式譲渡」か「事業譲渡」か。この一語で、次の経審の受け方と、市の資格の扱いが変わります。
経審は点数を出す審査で、入札参加資格は発注者が決める格付けである
公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者は、経審を受けなければなりません(建設業法27条の23)。結果は、発注者の請求に応じて、許可行政庁が総合評定値として通知します(同27条の29)。国土交通省の説明では、各発注機関は、欠格要件に当たらないかを審査したうえで、経審という客観的事項と自分の主観的事項を点数にして、順位を付けて格付けします。経審は許可行政庁が出す点数で、資格は発注機関が決める格付けです。
経審には使える期間があります。契約を結ぶ日の1年7月前の日の直後の事業年度終了の日以降に、受けていなければなりません(建設業法施行規則18条の2)。3月決算の会社なら、審査基準日は3月31日で、そこから1年7か月後の10月末が目安です。だから経審は毎年受けます。
東京都の令和9・10年度の公報も、申請日から1年7か月以内の審査基準日の経審と、申請に必要な種類の総合評定値を持っていることを、資格の申請条件にしています。国の地方整備局の公示は、合併等のあとに資格を再申請できるのは、合併等後の経審を受けた者に限ると書いています。順番は、経審が先で、資格はその後です。
株式譲渡は会社が同じなので、経審の結果も入札参加資格も残る
建設業法17条の2の承継の対象は、建設業の譲渡・合併・分割で、株式の売買は入っていません。許可を持つ法人が変わらない以上、その法人が受けた経審の結果も、その法人が持つ資格も、そのまま残ります。国土交通省や自治体が株式譲渡のときの経審と資格に触れた文書は、確認できていません。この整理は、法令の構造からの整理です。許可の側の扱いは、建設業許可は買えるのかに書きました。
残る手続きは、届出です。国土交通省の地方整備局の資格では、本店代表者の氏名や役職が変わると変更届が要り、登記事項証明書を添えます。資本人的関係に変更があるときは、業態調書も併せて出します。買い手が親会社になるなど、資本関係の記載が変わるなら、この届出の対象になりえます。許可のほうでも、役員が変われば30日以内に変更届を出します(建設業法11条1項)。ほかの発注者が何を届出の対象にしているかは、発注者ごとに違います。窓口で確認してください。
株式譲渡で残るのは、過去の結果だ。次の経審の点数は、次の審査基準日にいる人と、その決算の数字で決まる。
譲渡の日に技術者の半分が辞めれば、結果通知書は有効なまま手元にあっても、次の経審では点数が下がる方向に働きます。
事業譲渡・合併・会社分割では、決算を待たずに新しい体制の経審を受けられる
国土交通省の通知(平成20年3月10日)は、合併のあとの経審を、合併後最初の事業年度終了の日を待たずに受けられるとしています。審査基準日は、吸収合併なら合併期日、新設合併なら合併登記の日です。事業譲渡にも同じ仕組みがあります。営業所・従業員・のれんなどを、業種別や地域別に一括して譲り渡し、譲渡人への企業評価の全部または一部を譲受人が引き継ぐべきだと考えられるときです。譲受人が新設の法人なら設立登記日が、それ以外は、契約上の譲渡の期日以降で、新しい経営実態が備わったと認められる日が、審査基準日になります。
受けるのは義務ではありません。通知は、合併直前の決算日を基準日とする経審を受けていれば、合併時経審を受けなくても建設業法違反にならず、次の決算の経審まで直前の経審が有効だとしています。ただし、受けるなら、公共工事を請け負う可能性のあるすべての業種で受けます。業種を選んで受けることはできません。
国の地方整備局は、資格の再申請を、合併等後の経審を受けた者に限っています。法律上は任意でも、国の工事を取り続けたい会社には、実質的に必要です。
東京都知事許可の会社は、この経審を「特殊な経営事項審査」として受けます。東京都の説明書(令和8年9月)は、合併・譲渡・会社分割・承継(法人成り)のあとを対象にして、事前相談から本審査までを次の順に定めています。
- 建設業指導担当に日程を連絡して、事前相談をする
- 修正財務諸表を作る(公認会計士または税理士の証明が必要)
- 登録経営状況分析機関に分析を申請する
- 修正財務諸表、工事経歴書、合併・事業譲渡等の契約書の写し、技術職員名簿、資格者証の写し、常勤の資料を持ち込んで事前審査を受ける
- 本審査を受ける
事業譲渡では、売り手も同時に新しい経審を申請しなければならない。契約書に譲渡の期日を書く前に、売り手の経審の段取りも決めておく。
譲受人が譲渡時経審を申請するときは、譲渡人も、譲渡後の新しい実態に即した経審を、譲受人と同時に申請しなければならない、と通知にあります。譲渡直前の決算日を基準日とする経審をすでに受けているなら、義務ではありません。
合併時の経審では、完成工事高が合算され、営業年数は存続会社で数える
吸収合併の合併時経審では、項目ごとの数え方が、通知で決まっています。事業譲渡の経審も、企業評価を引き継ぐと考えられるときは、完成工事高や自己資本などをこの吸収合併の取扱いに準拠して算定します。
| 項目 | 吸収合併の合併時経審 | 株式譲渡 |
|---|---|---|
| 年間平均完成工事高・元請完成工事高 | 審査基準日の翌日の直前2年または3年の、存続会社と消滅会社の完成工事高を合計する | 変わらない(法人が同じ) |
| 技術職員数 | 審査基準日の状況で数える。恒常的な雇用関係の有無は、消滅会社での雇用も含めて審査する | 次の経審の審査基準日の状況で数える |
| 自己資本・EBITDA・経営状況・研究開発費 | 当期は審査基準日の財務諸表。前期は存続会社と消滅会社の財務諸表を合算する(原則、公認会計士または税理士の証明が必要) | 次の決算で更新される |
| 営業年数 | 存続会社の営業年数 | 変わらない(法人が同じ) |
完成工事高と元請完成工事高は、2社分が合算されます。元請完成工事高は、技術職員数と並んで、経審の技術力の評価に入る項目です。評点にどれだけ響くかは、告示の別表の区分で決まります。
もう一つ、通知は営業年数を「存続会社の営業年数」と定めています。創業の古い会社を消滅会社にすると、その年数は営業年数に入りません。どちらを存続会社にするかは、登記や許可の都合だけでなく、経審の営業年数でも差が出ます。
合併後最初の決算を過ぎたあとの経審でも、審査対象の事業年度の開始日から2年(3年平均を選ぶと3年)以内に合併があった会社は、消滅会社の営業期間の完成工事高を加えて算定できます。建設業を譲り受けた会社も、譲渡人の分を同じように加えられます。
技術職員は審査基準日の在籍で数え、1級の技術者ほど数値が大きい
経審の技術職員は、審査基準日以前に6か月を超える恒常的な雇用関係があり、雇用期間を限定せず常時雇用されている人です。常勤の役員も含みます。吸収合併では、この6か月の数え方に、消滅会社での雇用も含められます。事業譲渡で移った人の数え方は、通知からは確認できません。窓口に確認してください。
技術職員数値は、区分ごとの人数に係数をかけて足します。
人数は計算例の仮の数。一級監理受講者が1人欠けると、27は21になる。ほかの係数は、監理技術者補佐が4、基幹技能者・レベル4技能者が3。1人の職員が技術職員として申請できる業種は2つまで。出典:経営事項審査の事務取扱いについて(令和8年7月1日適用)。
一級監理受講者は、一級技術者のうち、監理技術者資格者証を持ち、講習を受けた年の翌年から5年がたっていない人です。たとえば1級電気工事施工管理技士が、この条件を満たせば当たります。1級電気工事施工管理技術検定の第二次検定の合格者は、令和7年度で6,607人でした。新しく加わる人数が限られるので、採用だけで1級の人を増やすのは簡単ではありません。
電気工事業は指定建設業なので、特定建設業の営業所技術者や監理技術者になれるのは、1級の国家資格者等に限られます。電気通信工事業は指定建設業ではありません。人が辞めたときの届出と許可の要件は、営業所技術者が退職したときに書きました。業種ごとの違いは、電気工事業のM&Aと電気通信工事業のM&Aのページにあります。
経審の点数は、人で動く。承継の日に、1級の人が何人在籍しているかを、先に数えておく。
承継の認可を受けると経審の結果は移るが、新体制の経審は別に受ける
建設業法17条の2の認可を受けて地位を承継した人は、被承継人の経審の結果も承継します(国土交通省の事務ガイドライン)。認可の中身と、方法ごとの許可の行き先は、承継早見表にまとめています。
結果が移っても、新体制の経審が要らなくなるわけではありません。和歌山県の入札参加資格の承継手続は、その順番をそのまま書いています。認可で許可と経審の総合評定値を承継した業種は、認可の効力発生日から、入札参加資格も承継します。客観点数は、承継した総合評定値です。そのうえで、承継人は速やかに、認可の効力発生日以降を審査基準日とする経審を受けて、再算定を申請します。
認可を受けない事業譲渡は、許可が動きません。和歌山県の手引き(2021年1月作成)は、承継会社が許可を取り、経審を受け、再算定を受けるまで入札に参加できず、入札に参加できない期間が生じると書いています。和歌山県のように、認可の有無が、入札できない期間の有無に直結する発注者があります。公共工事の比率が高い会社が事業譲渡を選ぶなら、認可を受けるかどうかは、契約書より先に決める項目です。
入札参加資格は発注者ごとの制度で、承継の仕組みが違う
入札参加資格に、全国共通の承継ルールはない。同じ合併が、国と東京都と和歌山県で、三通りに扱われる。
| 発注者 | 合併・事業譲渡・会社分割の扱い | 経審との関係 |
|---|---|---|
| 国土交通省地方整備局(道路・河川・官庁営繕・公園関係)。令和9・10年度の公示 | 合併の存続会社・新設会社、営業を譲り受けた会社、会社分割で営業を承継した会社が、地方整備局等の長が定める手続で、再度の資格審査を申請できる | 建設工事の申請は、合併等後の経審を受けた者に限る |
| 東京都(都の発注)。令和9・10年度の公報 | 有資格者が再審査を受けられる。合併は、合併後の法人の客観的審査事項と、存続会社または消滅会社の主観的審査事項で審査する。最高完成工事経歴は、審査上最も有利なものを使う。有資格者が存続会社なら、主観点数に10%を加算する。営業譲渡は営業譲渡を受けた者、会社分割は承継会社の客観的審査事項を使う | 合併時経審を受けていれば、合併後の法人の経審が使われる。未取得なら存続会社の経審 |
| 和歌山県(県内建設業)。令和8・9年度の承継手続 | 認可の有無にかかわらず、承継を認める。要件は、直前の経審の審査基準日時点の被承継会社の技術者の半数以上が承継会社に移ること、工事施工に係る資産を承継すること、直近3年間毎年度の工事の施工実績が250万円以下でないこと、被承継会社が資格を辞退すること(合併は建設業の廃業も)。申請は事由発生日から3か月以内。被承継会社が引き続き入札に参加することは認めない | 客観点数は、承継の事由発生日以降を審査基準日とする経審の総合評定値 |
| 島根県 | 合併、会社分割、営業譲渡などで、承継を希望する資格に係る営業の一切が承継者に移転したと認められるとき、承継を申請できる | 県のページには記載がない |
国は再申請、東京都は再審査、和歌山県は承継申請です。呼び方の違いは、そのまま、何を条件に見るかの違いです。東京都は、合併後の法人の経審に加えて、存続会社か消滅会社の、有利なほうの最高完成工事経歴を使えます。和歌山県は、経審の審査基準日にいた技術者が半分以上移っているかを見ます。
「全省庁統一資格」は、物品の製造・販売等の資格で、建設工事・測量等の競争参加資格とは別です(近畿財務局のFAQ)。電気工事会社の工事の資格は、発注者ごとに別々に持っています。
東京都の令和7・8年度(現行)の取扱いと、区市町村の取扱いは、確認できていません。実際に資格を持っている発注者の窓口に、承継か再申請か変更届のどれになるかを、契約書を決める前に聞いてください。
日程は、承継の日と資格の受付期から逆算する
- 許可の承継認可の申請:東京都は、承継予定日の前日の2か月前から25日前まで。申請日と承継予定日の間に、開庁日が25日必要です(令和8年度の手引き)。関東地方整備局は、承継予定日の90日前までに申請します
- 経審の審査基準日:合併なら合併期日、譲渡なら譲渡の期日以降の、新しい実態が備わった日です。契約書に書く効力発生日が、そのまま審査基準日の候補になります
- 資格の受付期:国の地方整備局の令和9・10年度は、定期が令和8年12月1日〜令和9年1月15日、随時が令和9年1月16日以降です。東京都の建設工事等(一般)の定期は、令和8年11月24日〜令和9年1月29日です。和歌山県の承継申請は、事由発生日から3か月以内です
- 資格の有効期間:国も東京都も、令和11年3月31日までです
- 許可の有効期間:承継した許可と、承継人がもともと持っていた許可の有効期間は、承継の日の翌日から改めて数えます
いまは、国と東京都の令和9・10年度の定期受付の直前です。合併や事業譲渡の効力発生日を、この受付期間の前に置くか後に置くかで、手続きの順番が変わります。受付期間と自社の決算日を重ねて、発注者の窓口で確認してください。
効力発生日は、許可の認可の締切、経審の審査基準日、資格の受付期の3つから逆算して置く。
公共工事の比率が高い会社の評価は、国の集計に出ていない
公共工事の比率や経審の点数が、譲渡の価格にどう効くかを示す国や公的機関の集計は、この記事を書くために確認した範囲にありませんでした。高く売れる、安くなる、のどちらも言い切れる材料はありません。
公共比率や経審の点数が価格に効くかは、確認できた範囲では言えない。
見えているのは、買い手の動機です。セキュアは、2026年7月1日の適時開示で、これまでグループに迎えた会社を、官公庁実績と専門人材を擁する会社などと説明し、施工体制や地方・官公庁の販路を拡充してきたと書いています。この一例からは、買い手が官公庁の販路を、施工体制と並べて見ていることが分かります。
売り手の側で準備できるものは、経審の結果通知書、総合評定値通知書、技術職員名簿、直近の資格の格付けの通知です。買い手が買う前に確かめる項目の全体は、電気工事会社を買う前に確認する12項目にまとめています。
契約書の前に、窓口へ確かめることは三つに絞れる
冒頭の会社に戻ります。スキームの欄が「株式譲渡」なら、経審の結果も市の資格も残り、変更届と人の在籍が残る課題です。「事業譲渡」なら、認可を受けるか、新体制の経審をいつ基準日にするか、市の資格を承継にするか再申請にするかを、決めてから契約書の期日を書くことになります。
- 許可行政庁に:承継の認可の受付期限と、特殊な経審の事前相談の窓口、必要書類
- 資格をもらっている発注者それぞれに:承継か再申請か変更届か、期限、求められる経審の基準日
- 自社の技術者について:審査基準日に在籍する人数と、常勤性を示す資料
事業譲渡で移った技術者の雇用期間の数え方、東京都の現行年度の扱い、区市町村の扱いは、この記事では確認できていません。この3点は、窓口の回答を待ってください。
参照した一次資料
- e-Gov法令検索「建設業法」(第27条の23、第27条の29、第11条、第17条の2) (2025年12月12日施行版)
- e-Gov法令検索「建設業法施行規則」(第18条の2) (2026年7月1日施行版)
- 国土交通省「経営事項審査及び総合評定値の請求について」 (2026年10月14日閲覧)
- 国土交通省「経営事項審査の事務取扱いについて」(平成20年国総建第269号。令和8年国不建第177号による改正後) (2026年7月1日適用)
- 国土交通省「建設業者の合併に係る建設業法上の事務取扱いの円滑化等について」(平成20年3月10日国総建第309号) (平成20年)
- 国土交通省「建設業の譲渡に係る建設業法上の事務取扱いの円滑化等について」(平成20年3月10日国総建第311号) (平成20年)
- 国土交通省「建設業許可事務ガイドラインについて」(第17条の2関係) (2025年2月1日最終改正)
- 東京都都市整備局「経営事項審査申請説明書」(P.87 特殊な経営事項審査について) (令和8年9月)
- 東京都都市整備局「建設業許可 申請・変更の手引 令和8年度」(事業承継等に係る認可) (令和8年度)
- 国土交通省「競争参加者の資格に関する公示」(令和9・10年度を有効期間とする地方整備局) (2026年10月1日公示)
- 国土交通省「申請した内容(代表者等)に変更が生じたときには」 (2026年10月14日閲覧)
- 東京都「令和9・10年度 東京都公報(特定調達公告版)」建設工事等競争入札参加資格 (令和8年10月7日)
- 東京都電子調達システム「令和9・10年度 東京都競争入札参加資格審査(定期受付)」 (2026年10月14日閲覧)
- 和歌山県「令和8・9年度入札参加資格(県内建設業)の承継手続について」 (令和8・9年度)
- 和歌山県「入札参加資格承継(合併、会社分割、事業譲渡)の手引き」 (2021年1月作成)
- 島根県「建設業者等の合併等に係る入札参加資格の手続きについて」 (2026年10月14日閲覧)
- 近畿財務局「競争参加資格審査よくあるご質問」 (2026年10月14日閲覧)
- 関東地方整備局「事業承継等の事前認可制度」
- 建設業振興基金「令和7年度 1級電気工事施工管理技術検定 試験結果」 (令和7年度)
- 株式会社セキュア「子会社の異動(株式取得)完了に関するお知らせ」 (2026年7月1日)
よくあるご質問
株式譲渡をすると、経審の結果はなくなりますか。
合併すると、入札参加資格は自動的に引き継がれますか。
合併時経審は必ず受けなければなりませんか。
事業譲渡のとき、売り手側も経審を受ける必要がありますか。
技術者が辞めると、経審の点数は下がりますか。
知りたかったことは分かりましたか
執筆:松本電業株式会社(電設承継パートナーズ)