他のM&A仲介会社と話が進んでいる方へ|契約書で確かめる10項目(専任・テール条項・解約)
他のM&A仲介会社と話が進み、契約書の案が手元にあるとき、確かめる点は国の物差しで10項目に整理できます。中小企業庁の中小M&Aガイドライン(第3版)は、仲介会社が契約前に書面で説明すべき事項を17項目挙げていて、手数料、専任、テール条項、解約、秘密保持はその中心です。今の契約を破る必要はありません。署名の前なら条文の中身を、署名の後なら「どこまでの相談が許されているか」を確かめます。続けながら他へ意見を聞くことも、相談先を選べば成り立ちます。
たとえば、顧問税理士の紹介で面談が3回進み、メールで「仲介契約書(案)」と「重要事項説明書」のPDFが届いたとします。専任の期間、テール期間、手数料の算定基準が並んでいる。ただ、それが一般的なのか、片寄っているのかが、読んでも分かりません。比べる相手がいないのは、読む側の落ち度ではありません。
国は契約前に17項目を書面で説明させていて、読む側の物差しもその中にある
ガイドライン第3版(2024年8月改訂。2026年10月14日時点でも最新で、第4版はありません)は、仲介者とFA(一方の側だけを支援する財務アドバイザー)に、契約を結ぶ前に重要事項を書面で説明するよう求めています。メール送付でも構いません。説明は契約を結ぶ権限のある人、法人なら代表者か委任を受けた人に行い、説明のあとには検討する時間を与えるべきだとも書かれています。
契約書だけが届いて、説明書面がまだなら、先にそちらを求めてよい。
国は、書式のサンプル(重要事項説明書)と、依頼者向けのチェックリストも公開しています。この記事の10項目は、その並びを、社長が実際に聞く順に組み替えたものです。
国が書面で説明させる17項目を見る
- 仲介とFAの違いと特徴(双方から手数料を受け取る場合はその旨)
- 提供する業務の範囲・内容(工程ごと、提供しない業務も)
- 担当者の保有資格、経験年数、成約実績
- 手数料(算定基準、金額、最低手数料、支払時期など)
- 手数料以外に払う費用
- 仲介の場合は、相手方の手数料
- 秘密保持
- 直接交渉の制限
- 専任条項(セカンド・オピニオンの可否など)
- テール条項(期間、対象となるM&A)
- 契約期間と更新
- 契約の解除、中途解約
- 責任(免責)
- 契約終了後も効力が残る条項
- 仲介の場合は、両当事者の利益が対立すると想定される事項
- 譲り渡し側への説明として、譲り受け側に実施する調査の概要
- 譲り渡し側への説明として、業界内の情報共有の仕組みへの参加の有無
もう一つ、先に押さえておくことがあります。ガイドラインは法令ではなく指針で、条文の有効無効を決めるものではありません。本文の「2年から3年」「6か月から1年」は、どれも「目安」と書かれています。目安から外れていても、それだけで不当と言える根拠にはなりません。理由を尋ねる根拠にはなります。この記事も、「この条文があれば危険」とは言いません。国が何を求めているかを示し、何をどう聞けばよいかを書きます。
10項目は、国の資料の並びを聞く順に直したもの
| 順 | 確かめる項目 | 国が示している物差し | 書面で聞くこと |
|---|---|---|---|
| 1 | 手数料の基準と最低額 | 料率より、成立する譲渡額ごとの支払総額を見る | 譲渡額が複数の場合の支払総額の表 |
| 2 | 着手金・月額・中間金 | 成功報酬に含まれる内金か、別建てかを確認する | 発生時期と、成約しなかったときの扱い |
| 3 | 買い手からも受け取るか | 相手方の手数料も契約前に書面で説明する | 買い手側の基準・最低手数料と、禁止行為を定めた条項の場所 |
| 4 | 専任の範囲・期間・更新 | 対象は限定、期間は最長でも6か月〜1年が目安 | 禁じる行為の具体と、更新の方法 |
| 5 | テール条項の期間と範囲 | 最長でも2〜3年が目安、対象は紹介した相手のみ | 紹介済みの相手を確定する手順 |
| 6 | 解約と、終了後に残る条項 | 任意の中途解約の明記が望ましい。直接交渉の制限は契約終了まで | 解約の通知方法と、終了後も続く条項の一覧 |
| 7 | 秘密保持 | 士業・公的窓口への共有が許されているか確認する | 顧問税理士・弁護士・引継ぎ支援センターに見せてよいか |
| 8 | 買い手の選定への関わり | 譲り受け側の調査の概要を契約前に説明する | 誰が何を調べ、結果を報告するか |
| 9 | 成約後の責任 | 責任(免責)条項と、クロージング後の支援の限界を説明する | 免責の範囲と、成約後の窓口 |
| 10 | 担当者の資格と経験 | 保有資格、経験年数、成約実績を説明する | 担当者本人の数字を書面で |
どれも、国が書面で説明するよう仲介会社に求めている項目。聞くのは失礼ではない。
手数料まわりは、算定基準、着手金、双方からの報酬の3つを並べて比べる
1. 手数料の基準と最低額は、支払総額の表で聞く
料率だけでは比べられません。国の資料は、同じ料率でも、報酬の基準額(譲渡額、純資産、移動総資産など)と最低手数料が違えば支払額が変わると書き、階層ごとの料率だけでなく、成立する譲渡額ごとに最終的に払う報酬の額そのものを確認するよう求めています。2026年9月の国の公表資料にも、成功報酬は売却代金の5%と聞いていたのに最低報酬金額が適用され、想定より高い手数料を払うことになった、という事例が載っています。
聞き方は一つです。「譲渡額が1億円、3億円、5億円のとき、消費税と実費を含めて私が払う総額はいくらか」を表にしてもらいます。基準による差の計算はレーマン方式の基準を見るに書いたので、ここでは繰り返しません。納得できなければ、業務や手数料の交渉を申し入れてよく、国は仲介者に誠実な検討を求めています。
2. 着手金・月額報酬・中間金は、成功報酬の内金かどうかで聞く
国の資料は、手数料の形として、着手金(契約時)、月額報酬(毎月)、中間金(基本合意の締結など案件完了前の節目)、成功報酬(クロージング時など)の4つを挙げます。請求する会社としない会社に分かれ、成功報酬だけの会社も相当数あるとされています。ある・ないは善し悪しの話ではありません。確かめるのは、成功報酬に含まれる内金なのか、別に積み上がるのかです。国の資料も、含まれるかどうかの確認が必要だと書いています。
請負工事の中間払いには出来高という根拠があります。M&Aの中間金は、基本合意のような節目で発生します。その節目までに何をしてもらえるのかを、国が整理した工程ごとの業務(バリュエーション、マッチング、基本合意など)の表と並べて聞いてください。成約しなかったときに返るかどうかは、手数料に一般的な法規制がないため、各社の契約次第です。月額報酬があるなら、国の資料は契約期間の確認を求めています。次の専任の更新と掛け算になるからです。
3. 買い手からも受け取る仲介は、買い手側の手数料と禁止行為の条項を見る
仲介は売り手と買い手の双方と契約し、双方から手数料を受け取るのが通常です。国の資料は、この構造を次のように説明します。買い手が用意できる予算の範囲内で、譲渡額と買い手側の手数料が決まる。国の説明のとおりに読めば、予算が決まっている買い手の手数料が大きいほど、譲渡額に回る金額は小さくなる方向に働きます。売り手の判断に直接効くのは、譲渡額から自分の手数料を引いた受取額です。国が、仲介者に、買い手側の報酬率、基準額、最低手数料、支払時期も契約前に書面で説明するよう求めているのは、このためです。
もう一つ、仲介契約書そのものに関する求めがあります。国は、仲介者がしてはならない行為として次を挙げ、これらをしない旨を仲介者の義務として仲介契約書に定めなければならないとしています。
- 買い手から追加の手数料を受け取り、その買い手に便宜を図る(マッチングの優先、不当に低い譲渡額への誘導など)
- 繰り返し依頼してくる買い手を優遇する
- 売り手の希望額より高く成約したとき、正規の手数料とは別に、差額の一定割合を報酬として求める
- 一方から頼まれたことを他方に伝えない、または、言っていないことを伝える
- 一方にだけ有利または不利な情報を知りながら、その当事者に伝えず隠す
契約書案を開いて、この義務がどの条にあるかを、仲介会社の担当者に指で示してもらってください。見つからなければ、それが質問になります。あわせて国は、仲介者がバリュエーション(企業価値の評価)やデュー・ディリジェンス(買い手による調査)の結論を自分では決めず、必要なら士業の意見を求めるよう伝えることも求めています。
拘束まわりは、専任、テール条項、解約、秘密保持を日付で足し算する
4. 専任は、範囲と期間と更新の3点で見る
専任条項そのものは、国も一定の合理性を認めている。問われるのは範囲と期間である。
ガイドラインが専任条項に合理性を認める理由は具体的です。同じ買い手候補に複数の業者が重ねて同じ会社を打診すると、候補先の心証を害し、売り手の情報も広がります。その一方で、依頼した業者の助言に疑問を持ったとき、他へ意見を聞けなければ、売り手は助言の妥当性を判断できません。そこで国は、条項の対象範囲を可能な限り限定し、専任を置くなら契約期間は最長でも6か月から1年以内を目安とし、依頼者がいつでも中途解約できると明記する条項も設けることが望ましい、としています。
聞くことは3つです。禁じられる行為は具体的に何か(他社への依頼、ノンネーム・シートの提示、意見を聞くこと)。更新は自動か、書面の合意か。中途解約の条項はあるか。国の資料は、意見を求めたい部分を明確にして、妨げる合理的な理由がなければ、セカンド・オピニオンは許容すべきだと書いています。
5. テール条項は、期間より先に、誰が対象かを聞く
テール条項は、契約が成約しないまま終わったあとの一定期間内にM&Aを行った場合、契約が終わっていても仲介会社が手数料を請求できるとする取り決めです。ガイドラインは、期間を最長でも2年から3年以内とすることを目安とし、対象を、その仲介会社が関与・接触して譲り渡し側に紹介した相手に限るべきだとしています。対象を無限定にすると、売り手が手数料の発生や争いを恐れて、新しいM&Aを断念せざるを得なくなるからです。
社名が相手に出ていない段階の候補先は、テール条項の対象に入れるべきでないと、国は書いている。
具体的には、ロングリストやショートリスト、ノンネーム・シート(会社名を伏せた概要書)を見せただけの相手は対象にすべきでなく、少なくとも、企業概要書を送って売り手の名称を明かすネームクリアを済ませ、売り手に紹介された相手に限定すべきだとされています。しかも、ネームクリアは売り手の同意を取り、候補先と秘密保持契約を結んでから行う必要があると、国は書いています。専任のない契約で複数の業者から同じ候補先を紹介された場合、選ばれなかった業者がテール条項を根拠に請求すべきではない、という記述もあります。ただし国のQ&Aは、これらの要件を満たせばテール条項がすべて有効になる、とは言っていません。
聞き方は次の3つです。紹介済みの相手の一覧は、誰が、どの段階で確定し、書面で通知されるのか。社名を相手に出す前に、自分の同意を取る手順になっているか。条項の「M&A」に、社員への株式譲渡や親族への承継は含まれるのか。契約が終わったあとに、長年の取引先の電材卸や同業の工事会社から「うちで引き取りたい」と声がかかることは、電設の会社にはありえます。その相手が紹介済みの一覧になければ、国の目安に沿う限り、テール条項の対象には入らないはずです。入る書き方になっているなら、理由を尋ねます。
専任の更新とテールは、足し算で見るとイメージがつきます。
数字はすべて仮の例です。国の目安は、専任の契約期間が最長でも6か月から1年、テール期間が最長でも2年から3年です。更新まで含めた総計で見ると、目安との距離が分かります。この足し算は当社の見方で、国が示した計算ではありません。
6. 解約は、通知の方法と、終了後に残る条項の一覧で聞く
国は、契約の解除に関する事項と、依頼者が中途解約できると明記する場合はその事項を、契約前に書面で説明するよう仲介者に求めています。契約が終わっても効力が残る条項(該当する条項と有効期間)も、説明の対象です。原文を確認した範囲では、解約の予告期間や違約金の水準までは示されていません。ここは契約書の文言で決まります。読んで判断がつかないときは、弁護士に契約書を見てもらってください。
終了後に残る代表が、直接交渉の制限です。依頼者が候補先と仲介会社を介さずに交渉することを禁じる条項で、国は3つの条件を示しています。
- 範囲:仲介会社が関与・接触して紹介した候補先だけ。依頼者が「自分で候補先を探さない」「自分で見つけた候補先と直接交渉しない」と明示的に了解している場合は別
- 目的:依頼者と候補先のM&Aに関するものだけ。通常の事業のための交渉まで止めない
- 期間:契約が終了するまで
電設の会社では、2つ目の「目的」が効きます。元請との見積、仕入先との受発注、協力会社との日常のやりとりまで止まる書き方になっていないか、読んでください。仲介契約とは別に結ぶ秘密保持契約にも、直接交渉の制限が入っていることがあると、国は注意を促しています。
7. 秘密保持は、顧問税理士・弁護士・引継ぎ支援センターに見せてよいかで聞く
M&Aの手続は、情報が漏れると頓挫することがあります。そのため、仲介会社にも依頼者にも秘密保持義務が課されるのが通常です。国が加えて確認を勧めるのは、義務の一部が解除されていて、士業や、公的な相談窓口である事業承継・引継ぎ支援センターへの情報共有が許されているかどうかです。
契約を結んだあとは、元の仲介会社が、セカンド・オピニオンを許容しない場合もあると、国は書いています。そこで国は、契約後に他へ意見を聞くつもりなら、秘密保持条項をよく確認し、受けられる内容になるよう元の会社とよく相談しておくよう勧めています。署名の前に、「顧問税理士と弁護士に契約書を見せてよいか」を書面で確かめておくのが、いちばん安い手当てです。
署名の前に確かめておけば、署名の後の選択肢は減らない。
買い手と成約後は、選定の関わり方、責任の範囲、担当者の3つを聞く
8. 買い手の選定への関わりは、誰が何を調べ、結果を誰が受け取るかで聞く
国は、仲介者に、譲り受け側(買い手)への調査を求めています。調査の概要は、売り手に契約前に説明しなければなりません。例として示されているのは、調査の実施主体、財務状況(財務諸表の確認)、コンプライアンス(反社会的勢力への該当性や、過去のM&Aでのトラブルの有無)、事業実態(商業登記簿の確認や事業所の訪問)、最終契約を実行できる資金があるか(預金通帳や融資証明書の確認)です。説明を受けて売り手から見直しの依頼があれば、見直しを検討しなければならず、リスクが見つかれば、最終契約の前に開示できる範囲で報告することも求められています。
加えて、国は、不適切な買い手の情報を業界内で共有する仕組みへの参加の有無(参加していなければその旨)も、契約前に説明するよう求めています。聞き方はそのまま、「買い手候補は誰がどの項目を調べるのか」「その結果を、最終契約の前に私は受け取れるのか」「業界内の情報共有の仕組みに参加しているのか」です。
9. 成約後の責任は、免責の範囲と、クロージング後の窓口で聞く
仲介契約には、一方が相手に損害を与えたときの賠償責任について、その要件や範囲を修正する条項が置かれることがあります。国が求めるのは、仲介会社の関与で依頼者に損害が出たとき、適切に負担を求められる内容になっているかの確認です。ただし、その条項が法的に有効かどうかを、ガイドラインは述べていません。説明を受けたことと、有効であることは別の話だと、国自身が書いています。
成約したあとのもめごとで仲介会社が動ける範囲は、契約書より先に、国の資料が限界を認めている。
国は、クロージング後の当事者間の紛争解決への関与・支援は、基本的に仲介者の役務がクロージング時点で終わっていることと、弁護士資格のある者だけができる業務(弁護士法第72条の非弁行為)にあたるおそれがあることから、支援に限界があると書いています。紛争が生じたら弁護士に支援を求めることを検討する、とも書かれています。だからこそ、最終契約の前後を通じて継続的で実質的な支援が受けられるかを、契約前に確かめるよう勧めています。
売り手の社長にとって重い論点が、経営者保証です。国は、最終契約に、買い手が経営者保証を解除または引き継ぐ義務と、実行されなかった場合の契約解除や補償を定めるかを、検討事項に挙げています。M&A支援機関協会は、特定事業者リストの登録事由の一つに、最終契約までに解除を合意したのにM&A実行日から60営業日を過ぎても保証が解除されていない場合を挙げています。解除の進め方は経営者保証の解除で別に整理しています。
10. 担当者は、資格と経験年数と成約実績を、本人の数字で聞く
国は、仲介者が説明すべき事項として、担当者の保有資格(公認会計士、税理士、中小企業診断士、弁護士、行政書士、司法書士、社会保険労務士など)、経験年数、成約実績を挙げています。担当者を補佐する人がいれば、その人についても同じです。契約前の説明をする人は、依頼者の質問に答えられる十分な経験と能力のある人が望ましい、という書き方もあります。
資格がなければ悪い、という話ではありません。確かめるのは、説明があるかどうかです。会社単位の実績は、国の登録支援機関データベースで、支援業務の開始時期、専従者数、手数料の算定基準を確認できます。ただし、同データベースは各機関の自己申告をもとにしていて、中小企業庁自身も、登録支援機関でも支援の質は異なると書いています。登録があることは、確かめる入口にとどまります。
登録は確かめる入口で、答えは担当者本人の書面にある。
契約を続けながら意見を聞くなら、相談先を選ぶ
署名の前なら、迷う理由はありません。契約書の案と重要事項説明書を持って、顧問税理士、弁護士、事業承継・引継ぎ支援センターに見てもらえます。中小企業庁のチラシも、疑問があれば引継ぎ支援センターや士業への相談を挙げています。
署名の後は、順番があります。
- 契約書の専任条項と秘密保持条項で、何が禁じられ、誰への共有が許されているかを読む
- 士業と事業承継・引継ぎ支援センターに相談する。ガイドラインは、秘密保持義務のある者や公的機関に相談先を限る配慮を認めていて、どちらもこの配慮に合う
- 疑問の中身が、手数料の考え方や契約書の読み方なら、まず契約した仲介会社に書面で質問する
- 他の仲介会社に案件そのものを重ねて依頼する、ノンネーム・シートを出す、といった行為は、専任条項に触れるおそれがあるため、条文を確かめるまでしない
同業の仲介会社に意見を求めることを、ガイドラインは「狭義のセカンド・オピニオン」と呼び、相談先が営業の機会と捉えるなどして、意見が中立性・客観性を欠くおそれがあると指摘しています。譲渡対価の決定や最終契約の内容といった重要事項は、M&Aに詳しい士業や、全国に設置されている事業承継・引継ぎ支援センターに相談するのが望ましい、というのが国の整理です。
当社も仲介を営む会社で、ここで言う「同業」にあたります。他社と専任契約中の案件を引き取るよう勧めることは、契約違反を誘うことになるため、この記事でもお勧めしません。当社の手数料や、テール条項などの条件は、同じ項目を手数料のページに載せています。秘密保持条項で他の仲介会社への開示が禁じられているなら、契約書は見せないでください。
国と業界団体は、契約書の見えにくさを減らす方向に動いている
2025年8月5日、中小企業庁は「中小M&A市場改革プラン」をとりまとめました。M&A支援機関の支援の質と倫理観の向上、業務内容と手数料に関する情報の見える化が柱で、令和8年度の登録制度の公募要領で触れられています。令和8年度からは、登録支援機関の実績報告に、案件ごとの手数料算定方式、支払手数料の水準(最低手数料との比較)、デュー・ディリジェンスの実施を把握しているかどうかが加わりました。登録支援機関のデータベースでは、手数料体系でも探せます。契約前の説明に不適切な点を感じたときは、同じ登録制度の情報提供受付窓口に、匿名でも情報を送れます(紛争の解決や助言をする窓口ではありません)。
業界団体では、M&A支援機関協会が、「倫理規程」「広告・営業規程」「コンプライアンス規程」「契約重要事項説明規程」の4つの自主規制ルールを置いています。規律が及ぶのは協会の会員だけですが、契約前の説明について、国の指針とは別に、業界側のルールがあることは知っておいてよい点です。
契約書の中身を、自分の言葉で説明してもらえるようになるまで、署名を急ぐ理由はありません。説明を受けても腑に落ちないなら、仲介を頼まず、親族や社員への承継、廃業、現状維持に戻る道も、同じ重さで残っています。それらは廃業以外の道で整理しています。電話を1本かけた時点から、どの段階で義務が生まれるかは、入門ガイドの電話を1本かけた時点で、あなたはいくつの義務を負いますかに書きました。営業の電話や手紙をきっかけに話が進んでいる方は、M&A会社から手紙や電話が来たらも合わせてどうぞ。
契約書の読み方を相談したい方は、契約書を一緒に読む相談からご連絡ください。
参照した一次資料
- 中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」(ガイドライン本文・Q&A・参考資料の掲載ページ) (2024年8月改訂、2026年10月14日に本文を確認)
- 中小M&Aガイドライン(第3版)本文 (2024年8月)
- 中小M&Aガイドライン(第3版)に関するQ&A
- 中小M&Aガイドライン 参考資料6「仲介契約・FA契約締結時のチェックリスト」
- 中小M&Aガイドライン 参考資料11「M&A仲介契約/FA契約 重要事項説明書サンプル」
- 中小企業庁「M&A支援機関の選定・契約時に確認すべき事項」(M&A支援機関登録制度)
- 中小企業庁財務課・M&A支援機関登録制度事務局「不適切な営業行為に係るトラブルの発生を踏まえた対応について」(別紙2のトラブル事例) (2026年9月1日)
- 中小企業庁財務課「M&A支援機関登録制度 公募要領改訂(令和8年度)について」 (2026年5月)
- 中小企業庁「M&A支援機関登録制度 公募要領(令和8年度)」 (令和8年度)
- M&A支援機関登録制度「登録支援機関データベース」の概要と留意点 (2026年10月14日に確認)
- 一般社団法人M&A支援機関協会「自主規制ルール」 (2026年10月14日に確認)
- 一般社団法人M&A支援機関協会「特定事業者リスト」 (2026年10月8日時点の利用者数)
よくあるご質問
テール条項の期間は何年までが一般的ですか。
専任契約の期間は何か月までと決まっていますか。
仲介契約を途中で解約できますか。違約金はかかりますか。
契約中の仲介会社に黙って、他の会社に意見を聞いてもよいですか。
手数料が高いと感じたとき、交渉してよいですか。
知りたかったことは分かりましたか
執筆:松本電業株式会社(電設承継パートナーズ)