電気工事会社を売るときの受注残|未成工事と前受金を工事別に整理する
記事中のモデルケースは、理解を助けるための架空の例です。 当社の成約実績ではありません。
受注した工事があるのは、よい話のはずです。ところが会社を引き継ぐ話では、「まだいくら入るか」だけでは足りません。「その入金までに、いくら出ていくか」が続きます。
工事の看板を次の会社へ渡す日と、現場が完成する日は、必ずしも同じではありません。完成前の現場が残るなら、誰が工事を終え、誰が材料代を払い、誰が代金を受け取るのか。そこまで並べて初めて、受注残の説明になります。
これから入るお金と、これから払うお金
ここでいう前受金は、工事の完成より先に受け取ったお金です。すでに入金されていても、残る工事の材料代や外注費に充てる分があるかもしれません。入金済みの額と、これから自由に使える額を同じにしないようにします。具体的な勘定科目や売上計上の判断は、税理士・会計士に確認してください。
受注額が同じでも、材料をほぼ買い終えた現場と、これから材料・外注の支出が出る現場では、必要な資金が違います。請求済み、入金済み、未請求も別に確認します。受注残をそのまま将来の利益や現金と説明するのは避けてください。
国土交通省は標準請負契約約款を公開しています。実際の取引では、自社の契約書・注文書と適用される約款を確認する必要があります。標準約款に書いてあるから、自社契約も必ず同じ条件だとは扱いません。
工事別の一枚に、進捗とお金を並べる
次の表は、当社が引継ぎの説明用に提案する項目です。会計処理の正否を判定する表ではありません。
| 項目 | 確認資料 | 食い違いを探す点 |
|---|---|---|
| 契約額と工期 | 契約書、注文書、変更書類 | 追加工事を含む金額か |
| 完了した作業 | 工事台帳、日報、検収 | 現場の実態と一致するか |
| 支出 | 材料・外注の発注と請求 | 発注済みだが未請求の分 |
| 請求・入金 | 請求書、入金記録 | 前受金、出来高請求の区別 |
| 残る作業 | 工程表、見積の内訳 | 追加費用、担当する人 |
| 引渡し後の対応 | 契約書、対応履歴 | 保証や不具合対応の範囲 |
決算書の数字と合わない場合は、日付の基準や集計の範囲を確認します。工事別の管理資料と税務・会計の数字が違う理由を、税理士と整理してください。差を埋めるために、実態を確認せず残工事を少なく見せることはできません。
比べるための仮例として、残る入金予定がどちらも500万円の二現場を考えます。一つは材料も外注もほぼ支払い済み。もう一つはこれから支出が出る。入金予定の欄が同じでも、引継ぎ後に必要な資金は同じとは言えません。ここで利益額や会計処理を計算し切るのではなく、税理士や買い手に渡す確認項目を見つけます。
追加工事は、受注と見込みを分ける
現場で追加を頼まれたものの、金額や範囲が決まっていない仕事があれば、契約が確定した分と分けます。見積提出、先方確認、注文、施工、検収、請求のどこまで進んだかを記録すると、誰の確認が必要かが見えます。
工事ごとの完成責任と請求を誰が扱うかは、株式譲渡か事業譲渡か、実際の契約条件でも変わります。売り手と買い手の合意だけで発注者への説明が済むと考えず、契約の確認をする専門家と調整します。
見積書の外にある約束を、社長と一緒に探す
現場の採算や追加の約束が社長の記憶に集中している場合は、引継ぎ時に説明する担当と資料を決めます。赤字見込みや未解決の問題があれば、隠さず、現状と対応案を分けて説明する必要があります。
全体の買収確認は電気工事会社を買う前の12項目、盤の受注生産は仕掛品と資金繰りにあります。許可の引継ぎは承継早見表で別に確認します。工事別の一覧を作ることと、許可・契約の手続きを終えることは別の仕事です。
受注残は多いほど安心か。現場ごとの支出、契約、残る作業を見ないままでは答えられません。最初に一現場だけ、工事台帳と契約書と入金記録を並べてみましょう。「残り500万円」の横に「その前に払うもの」を置けたら、会社を引き継ぐ相手に説明する数字が、一つ具体的になります。
参照した一次資料
- 国土交通省 建設工事標準請負契約約款について (2026年10月16日確認)
- 国土交通省 建設工事標準下請契約約款 (2026年10月16日確認)
知りたかったことは分かりましたか
執筆:松本電業株式会社(電設承継パートナーズ)