電気通信工事の許可は26年で54.5%増えた。その数字から読めることと、読めないこと
電気通信工事業の許可を持つ業者は、平成12年3月末の10,847から、令和8年3月末の16,764へ、54.5%増えました。建設業全体の許可業者が19.5%減るなかでの数字です。ただ、数えているのは許可で、会社ではありません。承継で効いてくるのは、この増加そのものより、許可の中身と、それを支える人の側です。
会社を売る・継ぐときの手続きから確認したい方は、建設業許可・電気工事業登録の承継早見表へ。株式譲渡・事業譲渡・相続など、承継の方法ごとに確認する点を並べています。
26年で増えた約5,900の許可のうち、新しい会社が取った分は、国の調査から分からない。
許可の数は、複数の業種を重ねて数えられている
国土交通省の調査は、29の業種ごとに許可の数を公表しています。業種別の許可の総数は、令和8年3月末で1,787,977。許可業者は483,823ですから、1社が複数の業種の許可を持つ分を重ねて数えています。
| 電気通信工事業の許可 | 業者数 | 前の時点との差 |
|---|---|---|
| 平成12年3月末 | 10,847 | |
| 平成24年3月末 | 13,578 | +25.2% |
| 令和8年3月末 | 16,764 | +23.5% |
(国土交通省「建設業許可業者数調査」表-3。増減率は当社計算)
平成12年と比べると、建設業の許可業者は19.5%減り、業種別の許可の総数は28.4%増えました。複数の業種の許可を持つ業者の割合は、43.5%から54.1%に上がっています。電気工事業の許可も、同じ期間に53,743から66,534へ23.8%増えました。
総務省の情報通信白書によると、光ファイバの世帯カバー率は97.09%(2023年度末)、5Gの人口カバー率は98.4%(2024年度末、全都道府県で85%超)です。カバー率は整備の到達度で、工事の量ではありません。新設の余地が小さくなった分、案件の中身がどう変わるかは、この数字から読めません。
許可が増えていることは、買い手にとって「競合が多い」とも「需要がある」とも読めます。どちらかを決める材料は、数字の外にあります。
特定建設業の技術者の枠は、電気工事より広い
電気工事業は、建設業法上の「指定建設業」です。指定建設業は、土木・建築・電気・管・鋼構造物・舗装・造園の7業種で、特定建設業の営業所技術者や監理技術者は、1級の国家資格者などに限られます。電気通信工事業は指定建設業ではありません。1級電気通信工事施工管理技士や技術士のほかに、一般建設業の営業所技術者の要件を満たす人が、元請として4,500万円以上の工事で2年以上の指導監督的な実務経験を積んでいれば、その人も特定建設業の技術者になれます(国土交通省の基準通知)。
営業所技術者は、令和6年12月13日の改正で、条文上の名称が「専任技術者」から変わりました。今も旧称で呼ばれることがあります。一般建設業の許可で、電気通信工事業の営業所技術者になれる資格は、次のとおりです(基準通知の別表)。
| 資格 | 条件 |
|---|---|
| 電気通信工事施工管理(1級または2級) | 第二次検定の合格 |
| 技術士 | 電気電子部門、または総合技術監理部門(選択科目が電気電子部門) |
| 電気通信主任技術者 | 資格者証の交付を受けてから、電気通信工事の実務5年以上 |
| 工事担任者 | 第1級アナログ通信、第1級デジタル通信、総合通信のいずれかで、資格者証の交付を受けてから、電気通信工事の実務3年以上 |
学歴と実務経験の組み合わせや、10年以上の実務経験で満たす道もあります。承継では、この表のどれで、いまの許可の技術者要件を満たしているかを、確かめます。技術者が退職したときの手続きは、専任技術者(営業所技術者)が退職したらに書きました。
工事担任者の行には、見落としやすい点があります。工事担任者は、電気通信事業法71条が定める資格で、端末設備や自営電気通信設備を接続するとき、この資格者に工事を行わせるか、実地に監督させなければなりません。建設業の許可、営業所技術者、工事担任者は、三つの別の制度です。工事担任者の資格を持つ社員がいても、種別によっては営業所技術者の要件に使えません。
許可の技術者になれる工事担任者は、第1級アナログ通信、第1級デジタル通信、総合通信の3種別で、さらに実務3年が要る。
電気工事の許可で通信工事もしている会社は、請けている工事を並べる
電気工事の会社が、LAN配線や防犯カメラの工事を請けることは、珍しくありません。国土交通省の許可事務ガイドラインの例示で、電気工事は「構内電気設備(非常用電気設備を含む。)工事」「照明設備工事」など、電気通信工事は「有線電気通信設備工事」「データ通信設備工事」「情報収集設備工事」「情報表示設備工事」「放送機械設備工事」などです。LAN配線や防犯カメラという語は、どちらの例示にもありません。
1件の請負代金が500万円に満たなければ、建設業の許可はいりません(建設業法3条1項ただし書、同法施行令1条の2)。それを超える工事を請けているなら、工事ごとに、持っている許可の業種で説明できるかを確かめます。迷う工事は、許可行政庁に確認した記録を残しておくと、買い手に説明できます。計装工事で同じ整理をした例が、計装工事会社は「どの建設業許可で成り立っているか」で承継の難易度が変わるにあります。許可を持つ会社を引き継ぐ条件は、建設業許可は買えるのかにまとめました。
保守の売上は、建設工事としては数えられない
国土交通省のガイドラインは、すでに設置された電気通信設備の改修、修繕、補修を「電気通信工事」としています。一方で、保守(電気通信施設の機能、性能、耐久性を確保するための点検、整備、修理)に関する役務の提供などの業務は、「電気通信工事」に当たらないとしています。
保守の価値を示す書類は、許可通知書ではなく、契約書と請求の記録である。
保守契約の比率が高い会社では、売上の多くが、許可業種の側からは工事として見えません。買い手に見せる資料は、契約の本数、期間、解約の条件、請求の記録の側で、そろえることになります。
大手2社の計画は、M&Aを成長投資の用途に挙げている
通信工事の大手2社は、中期の計画でM&Aに触れています。
| 会社と計画の期間 | 成長投資 | M&Aに関する記載 |
|---|---|---|
| エクシオグループ(2026〜2030年) | 5年累計3,000億円。うち事業成長・拡大投資が1,000億円程度 | 用途に「新たな技術領域の補完や担い手確保等に向けたM&A」 |
| コムシスホールディングス(2025〜2030年度の6年間) | 2,000億円以上 | 主な計画に「新たなプレーヤーとの共創」「既存リソースとのシナジー発揮」。M&Aの規模によっては追加の資金調達 |
計画に書かれているのは、方針です。どんな規模の会社を、どんな条件で買うかは書かれていません。小さな電気通信工事会社が、これらの会社の買収対象になるかどうかを、当社は確認できていません。確かなのは、通信工事の大手2社が、M&Aを成長投資の用途として公表している点と、エクシオグループが用途の一つに担い手の確保を挙げている点です。
買い手がだれであっても、確かめられるのは同じ項目です。許可の業種と、一般か特定か。営業所技術者が、どの資格のどの条件で足りているか。工事担任者や電気通信主任技術者が、社内に何人いるか。保守契約が何本あるか。
許可、技術者、資格者、保守契約。この四つを一枚に並べておけば、買い手が大手でも同業でも、同じ資料で話を始められる。
建設業の後継者不在率は57.3%で、8業種のなかで最も高い水準です(帝国データバンク、2025年)。売る、社員に継がせる、いまの形で続ける、たたむ。どれを選ぶ場合でも、許可と技術者と保守契約を一枚に並べる作業は、先にしておいて損がありません。業種ごとの見方は電気通信工事会社の承継のページに、隣り合う業種は消防設備会社の点検契約、弱電工事会社の業種の整理にあります。電設インフラの買い手の動きは電設インフラの会社を、いま誰が買っているのかにまとめました。
参照した一次資料
- 国土交通省「建設業許可業者数調査の結果について-建設業許可業者の現況(令和8年3月末現在)-」 (2026年5月15日公表)
- 国土交通省「国土交通大臣に係る建設業許可及び建設業者としての地位の承継の認可の基準及び標準処理期間について」(国総建第99号)別表・注2・注3 (令和6年12月13日最終改正)
- 国土交通省「建設業許可事務ガイドラインについて」(国総建第97号)第2条関係(18)電気通信工事、別表 (令和7年2月1日最終改正)
- e-Gov法令検索「建設業法」第3条、第7条/「建設業法施行令」第1条の2 (現行)
- e-Gov法令検索「電気通信事業法」第71条(工事担任者による工事の実施及び監督) (2026年5月27日施行版)
- 総務省「令和8年版 情報通信白書」(光ファイバ・5Gのカバー率) (2023年度末・2024年度末)
- エクシオグループ「中期経営計画(2026-2030)」 (2026年)
- コムシスホールディングス「コムシスグループ2030ビジョン」 (2025年5月9日)
- 帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」 (2025年)
よくあるご質問
電気工事業の許可だけで、LAN配線や防犯カメラの工事を請けています。問題がありますか。
電気通信工事業の営業所技術者には、どんな資格でなれますか。
工事担任者の資格を持つ社員がいれば、許可の技術者になれますか。
保守や監視の契約が売上の大半です。工事が少なくても承継できますか。
大手の通信工事会社は、小さな会社も買いますか。
知りたかったことは分かりましたか
執筆:松本電業株式会社(電設承継パートナーズ)