電気通信工事だけが増え続けている──26年で54.5%増、そこで買われる会社の条件
建設業の許可業者は、この26年で2割近く減りました。
そのなかで、増え続けている業種があります。
電気通信工事業だけは、26年間で54.5%増えている。
減る業界のなかの、増える業種
国土交通省が毎年公表している建設業許可業者数の調査を見ると、全体の傾向は明らかです。
令和8年3月末時点で全国の建設業許可業者は483,823業者。ピークだった平成12年3月末から117,157業者、19.5%の減少です。
ところが業種別に見ると、動きが正反対のものがあります。
| 業種 | 平成12年3月末 | 令和8年3月末 | 26年間の増減 |
|---|---|---|---|
| 建築工事業 | 226,778 | 140,967 | -37.8% |
| 土木工事業 | 167,891 | 130,833 | -22.1% |
| 電気工事業 | 53,743 | 66,534 | +23.8% |
| 電気通信工事業 | 10,847 | 16,764 | +54.5% |
(国土交通省「建設業許可業者数調査」令和8年3月末現在)
建築が4割近く消えるなかで、電気通信工事業は1.5倍になりました。
理由は分かりやすいはずです。LAN配線、光ファイバ、無線、防犯カメラ、入退室管理、そしてデータセンター。建物にネットワークが入らない時代がもう終わっているからです。
ただし、承継の場面では「増えている業種」であることが、そのまま追い風にはなりません。むしろ見られ方が厳しくなります。
増えている業種では、代わりが利くかを見られる
業者数が26年間ほぼ変わらない消防設備の会社とは、買い手の心理がまったく違います。
消防設備なら「参入できないから買う」という動機が働きます。
電気通信工事は逆です。業者は増えている。だから買い手はこう考えます。
「同じことができる会社は、他にもあるのではないか」
ここで効くのが、短期間では真似できない資産です。
増えている市場で評価されるのは、規模ではなく「他では代われないもの」を持っているかどうか。
買い手が代わりが利かないと判断する4点
1. 元請との継続的な取引関係
電気通信工事は多重下請けになりやすい構造があります。だからどの位置にいるかが価値を分けます。
通信キャリア、ゼネコン、システムインテグレータ、あるいは施設のオーナー。一次で受けているのか、三次なのか。それによって粗利も安定性もまったく違います。
2. 扱える設備の幅
LAN配線だけを請けている会社と、防犯カメラ・入退室管理・非常放送まで一括で請けられる会社では、後者が明確に強くなります。
建物の担当者は、別々の業者を呼びたくないからです。
3. 保守・監視契約の本数
工事は毎年ゼロから積み直しですが、保守は継続します。将来の売上が読める部分を、買い手は高く評価します。
4. 有資格者の構成
電気通信工事の施工管理には資格者が必要です。誰が何を持っていて、何歳か。ここは必ず確認されます。
この4つは、いずれも1年あれば「見える形」にできます。契約書を交わし直す、資格者の一覧を作る、扱える設備の実績を整理する。売却を決める前にやっておくと、条件が変わります。
「電気工事の許可で通信もやっている」を先に整理する
電気工事会社が、ついでのようにLAN配線や防犯カメラを請けているケースは非常に多くあります。
電気工事と電気通信工事は、現場では地続きです。同じ天井裏を通し、同じ盤に集約します。
ただし制度の上では別の許可です。
- 建設業許可の「電気工事業」と「電気通信工事業」は別の業種区分
- 電気工事業法に基づく「電気工事業者の登録」も、また別の制度
承継の場面で買い手が最初に確認するのは、いま請けている工事が、いま持っている許可で説明できるかどうかです。
ここが整理されていないと、譲渡後に請けられない仕事が出ます。買い手はそのリスクを価格に織り込みます。
同じ論点は計装工事にもあります。計装は電気工事業・管工事業・機械器具設置工事業・電気通信工事業のどれを軸にしているかで買い手が変わるという話を計装工事会社は「どの建設業許可で成り立っているか」で承継の難易度が変わるに書きました。
判断に迷う工事がある場合は、許可行政庁に確認するのが確実です。曖昧なまま進めるより、確認した記録があるほうが買い手に対して強くなります。
増えている業種でも、社長は高齢化している
業者数が増えていることと、経営者が若いことは別です。
帝国データバンクの調査によれば、全業種の後継者不在率が50.1%まで下がったなかで、建設業は57.3%と全業種で最も高い水準にあります(「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」)。
電気通信工事もこの建設業に含まれます。
市場は伸びている。仕事はある。だが継ぐ人がいない——これがこの業種で最も多い形です。
資材を納めてきた側から見ています
私たちは1950年から電設資材を扱ってきました。
LANケーブルも、光ケーブルも、防犯カメラも、入退室のコントローラも、電設資材の商流に乗って現場に届きます。
どの会社がどの設備を扱えるか。どのメーカーの認定を持っているか。どの元請の現場に入っているか。それは、資材を納めていると自然に見えてきます。
決算書だけを見て「電気通信工事の会社」とひとくくりにする会社には、この違いが分かりません。
売却をお決めでない段階で結構です。まず、いま持っている許可と、実際に請けている工事の対応を一緒に整理するところから始めましょう。
参照した一次資料
- 国土交通省「建設業許可業者数調査の結果について-建設業許可業者の現況(令和8年3月末現在)-」 (2026年5月15日公表)
- 帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」 (2025年)
よくあるご質問
電気工事業の許可だけで、LAN配線や防犯カメラの工事を請けています。問題がありますか。
増えている業種だと、売却は不利になりますか。
元請から一次で受けています。これは評価されますか。
保守や監視の契約が売上の大半です。工事が少ないと弱いですか。
執筆:松本電業株式会社(電設承継パートナーズ)