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公開: 最終更新: 防犯・防災設備(弱電・セキュリティ)

弱電工事の会社は、法律の上では何屋なのか。承継の前に引く5本の線

たとえば、防犯カメラを付け、入退室のカードリーダーを入れ、非常放送の面倒も見ている会社があるとします。許可通知書を開くと、載っている業種は一つか二つ。この会社が何屋かは、一つの答えでは決まりません。法律ごとに、別の線が引かれているからです。

「弱電」という業種はない。線を引くのは、五つの法律である。

29業種のどこにも「弱電」はない

建設業の許可は、土木工事業、建築工事業など29の業種に分かれています(国土交通省の許可業者数調査)。防犯設備や弱電の名前の付いた業種はありません。国土交通省の許可事務ガイドラインの例示を見ると、電気工事は「構内電気設備(非常用電気設備を含む。)工事」「照明設備工事」など、電気通信工事は「有線電気通信設備工事」「無線電気通信設備工事」「データ通信設備工事」「情報収集設備工事」「情報表示設備工事」「放送機械設備工事」など、消防施設工事は「火災報知設備工事」「非常警報設備工事」などです。防犯カメラや入退室管理という語は、どの例示にもありません。

許可だけでなく、資格や届出の線も、法律ごとに別の場所にあります。

法律と、線の引かれている場所弱電の仕事への当てはまり
建設業法:1件500万円以上の工事は、工事の中身に合う業種の許可が要る防犯カメラや入退室管理は例示にない。工事の中身で、許可行政庁に確かめる
消防法:非常ベル・自動式サイレン・放送設備は非常警報設備で、点検と報告の対象。設置工事と整備は、消防設備士の独占工事の一覧に入っていない非常放送
電気工事士法:電鈴・インターホーン・火災感知器・豆電球などの小型変圧器(二次電圧36V以下)の二次側の配線工事は、軽微な工事で資格者が要らないインターホン、火災感知器の配線。防犯カメラの電源が当たるかは条文から言えない
警備業法:他人の需要に応じて、盗難などの事故の発生を警戒し、防止する業務が警備業務。営むには公安委員会の認定が要る。機械警備は届出と管理者の選任が要る遠隔の監視や駆けつけを契約に付けている場合
電気通信事業法:端末設備や自営電気通信設備を接続するときは、工事担任者に行わせるか、実地に監督させる(総務省令で定める場合を除く)LANや電話の接続。防犯カメラのネットワーク接続が当たるかは、条文から言えない

一社の仕事が、この表の複数の行にまたがります。承継で買い手が確かめるのは、その会社がどの行のどちら側に立っているかです。曖昧なまま渡すと、買い手は、譲渡のあとに請けられなくなる仕事がないかを確かめるのに、時間を使います。

仕事の名前ではなく、法律ごとの線で並べ直すと、自社が持っている許可・資格・届出の穴と重なりが見えます。

非常放送は、三つの線の上にある

非常放送には、建設業の許可、消防法の点検、消防設備士の独占工事という三つの線がかかります。

建設業の許可では、国土交通省の例示にある「非常警報設備工事」が消防施設工事に入ります。消防法では、非常ベル、自動式サイレン、放送設備が、警報設備の一つである非常警報設備です(消防法施行令7条3項)。設置が義務づけられる建物の範囲も、同令24条が定めています。

その非常警報設備の点検は、消防法の点検と報告の対象です。延べ面積1,000㎡以上の特定防火対象物などは、消防設備士か消防設備点検資格者に点検させなければなりません(同令36条2項)。ところが、設置工事と整備を消防設備士でなければ行えないとする一覧(同令36条の2)には、非常警報設備が入っていません。自動火災報知設備やスプリンクラー設備は入っています。

非常放送は、点検には資格者が要る建物があり、設置工事には消防設備士の免状が要らない。

点検の中身と周期は、消防設備の会社の値打ちは、毎年同じ建物に入る点検契約にあるに書きました。

機械警備になるのは、受信機器が施設の外にある場合に限られる

警備業法は、警備業務を「他人の需要に応じて」行う業務と定めていて、警察庁の解釈運用基準は、それを「他人との契約に基づき、他人のために行うこと」としています。盗難などの事故の発生を「警戒し、防止する」業務が対象で、条文の定義に、機器の設置工事は挙げられていません。

機械警備業務は、警備業務用機械装置を使って行う、施設の警備業務です(警備業法2条5項)。解釈運用基準は、警備業務用機械装置を、各種のセンサーや非常通報装置などを使った機器の全体としたうえで、受信機器が警備業務対象施設以外の施設にある場合に限っています。同じ建物の内部で完結する装置は、警備業務用機械装置ではありません。

受信機器が同じ建物の中にある装置は、警備業務用機械装置ではない。

防犯カメラとレコーダーが同じ建物のなかで完結しているなら、機械警備には当たりません。自社の事務所で他人の施設の異常を受信し、対応を契約に含めている場合は、警備業務に当たらないかを、所轄の公安委員会に確かめる範囲に入ります。認定を受けて機械警備を営む会社は、届出と機械警備業務管理者の選任が要ります(同法40条、42条)。

輪郭を言葉にする4つの確認

整理は、決算書を開く前にできます。並べるものと、確かめる相手は次のとおりです。

確認並べるもの確かめる相手・根拠
1. 工事の例示への当てはめ直近の工事の一覧許可行政庁、国土交通省の例示
2. 資格と届出資格・登録・認定ごとの名義と保有者免状、登録通知、公安委員会への届出
3. メーカーとの契約認定・代理店契約の名義と条項契約書
4. 保守契約本数・期間・解約条件・更新の時期契約書、請求の記録

1. 工事を例示に当てはめる

直近の工事を一覧にして、電気工事、電気通信工事、消防施設工事のどの例示に近いかを並べます。1件500万円に満たない工事なら許可はいりませんが(建設業法3条、同法施行令1条の2)、超える工事は、持っている許可の業種で説明できるかが問われます。迷う工事は、許可行政庁に確かめた記録を残します。

2. 資格と届出を、人に結びつける

電気工事士、主任電気工事士、消防設備士、消防設備点検資格者、工事担任者。電気工事を請けるなら、電気工事業の登録かみなし登録も関わります。みなし登録電気工事業者とは、主任電気工事士がいない・退職したらに手続きを書きました。警備業の認定や機械警備の届出があるなら、その名義がだれかも一覧に入れます。

3. メーカーとの契約を見る

メーカーの施工認定や代理店の契約があるなら、契約の名義と、会社が変わるときの扱いを確かめます。契約の条項で、引き継げるかが決まる場合があります。機器商社の例は、機器商社の価値は、決算書より先に代理店契約書で決まるで整理しました。

4. 保守契約を、更新の時期とともに並べる

保守契約の本数、期間、解約の条件、機器の更新が来る時期。電気通信設備の保守は、国土交通省のガイドラインで「電気通信工事」に当たらないとされています(電気通信工事の許可は26年で54.5%増えたに詳しく書きました)。保守の価値は、契約書で示すことになります。

買い手の側から見ると

この領域の売買で、公表された成約の事例を、当社は一次資料で確認できていません。次は、仕事の構造から考えられる買い手の整理で、実際の事例ではありません。

  • 警備会社:警備の契約があり、設備の施工と保守を内製したい場合
  • ビル管理・設備管理の会社:建物に毎日入っていて、防犯設備まで窓口を一つにしたい場合
  • 通信工事の会社:配線や機器の施工はできるが、防犯・入退室の機器の実績を足したい場合
  • 消防設備の会社:点検先の建物で、防犯設備まで請けたい場合

買い手に渡す書類も、社員に引き継ぐ書類も、中身は同じ一覧になります。

売らない場合にも、この整理は使えます。社員に継がせるなら、許可・資格・届出の名義を、だれが引き継ぐかを決める材料になります。たたむ場合は、保守契約の引き継ぎ先を探す順番を決められます。

人の側では、総務省の労働力調査(2025年平均)で、建設業就業者478万人のうち55歳以上は175万人で、約36.6%です。全産業では約32.8%です(当社計算)。建設業全体でこの年齢構成です。弱電の分野の数字ではありませんが、許可・資格・届出の名義が一人に集まっている会社では、その一人が抜けた日に動かせない仕事が出ます。業種ごとの見方は防犯・防災設備会社の承継のページに、許可と登録の行き先は許可と登録の整理にあります。

参照した一次資料

よくあるご質問


防犯カメラの設置に、警備業の認定は必要ですか。
警備業法は、他人の需要に応じて、盗難などの事故の発生を警戒し、防止する業務を「警備業務」とし、それを営むには公安委員会の認定が要ると定めています(2条、4条)。条文の定義に、機器の設置工事は挙げられていません。遠隔での監視や駆けつけを契約に付けている場合は、警備業務に当たらないかを、所轄の公安委員会に確かめてください。
機械警備とは何ですか。
警備業務用機械装置を使って行う警備業務です(警備業法2条5項)。機械警備を営む警備業者は、公安委員会への届出と、機械警備業務管理者の選任が必要です(同法40条、42条)。警察庁の解釈運用基準は、受信機器が警備業務対象施設以外の施設にある場合に限っていて、同一建造物の内部で完結する装置は警備業務用機械装置ではないとしています。
非常放送も扱っています。これは消防設備になりますか。
非常放送は、消防法施行令7条の警報設備のうち、非常警報設備(非常ベル、自動式サイレン、放送設備)にあたります。点検と報告の対象です。一方、設置工事と整備は、消防設備士でなければ行えない工事の一覧(同令36条の2)に入っていません。建設業許可の例示では、非常警報設備工事は消防施設工事に入ります。
「弱電」は、建設業許可のどの業種にあたりますか。
「弱電」という業種はありません。国土交通省の例示では、電気工事は構内電気設備工事や照明設備工事など、電気通信工事は有線・無線電気通信設備工事やデータ通信設備工事など、消防施設工事は火災報知設備工事や非常警報設備工事などです。防犯カメラや入退室管理という語は例示にないので、工事の中身で、どの業種に当たるかを許可行政庁に確かめます。
インターホンや火災感知器の配線に、電気工事士は必要ですか。
電鈴、インターホーン、火災感知器、豆電球などに使う小型変圧器(二次電圧36ボルト以下)の二次側の配線工事は、電気工事士法の「軽微な工事」で、資格者でなくても行えます(電気工事士法施行令1条4号)。一次側の工事は別です。防犯カメラの電源が、この例示の「これらに類する施設」に当たるかは、条文からは言えません。

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執筆:松本電業株式会社(電設承継パートナーズ)

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