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「うちは何屋なのか」を説明できない会社は、買い手に見つけてもらえない

防犯カメラを付けて、入退室のカードリーダーを入れて、非常放送も面倒を見ている。

そういう会社の社長さんに、こう聞かれることがあります。

「うちは、何屋ということになるんでしょうか」

これは謙遜ではなく、承継における実際の問題です。

この仕事には、業種の名前がない。

消防設備でも警備業でも電気工事でもない

日本の産業分類にも、建設業許可の29業種にも、「防犯設備工事業」という区分はありません。

実際にやっている仕事を分解すると、こうなります。

扱っているもの制度上の位置づけ
防犯カメラ、入退室管理電気工事業または電気通信工事業の許可で施工
非常放送(非常警報設備)消防用設備等。消防法の点検・報告の対象
センサー異常の受信と駆けつけ機械警備業務。警備業の認定が必要
防犯設備の保守・点検法定義務ではないが、契約で継続

ひとつの会社が、3つの制度にまたがっています。

だから統計に出てきません。国が公表する業者数にも「弱電・セキュリティ設備工事業」という項目は存在しません。この領域の会社の多くは、電気通信工事業の許可(令和8年3月末で16,764業者)に含まれる形で数えられています。

業種として定義されていないということは、統計にも出ず、業界団体もなく、M&Aの検索キーワードにもなっていないということです。放っておくと、買い手から見つけてもらえません。

定義されていないことは、弱みではない

ただし、これを弱みだと受け取る必要はありません。

谷間にあるということは、両側から必要とされる位置にいるということでもあります。

  • 警備会社:警備の契約は取れる。だが設備の施工と保守を自社でやりたい
  • ビル管理会社:建物には毎日入っている。防犯設備も面倒を見たい
  • 電気通信工事会社:配線はできる。だがセキュリティ機器の知見と実績がない
  • 防災設備会社:消防設備はやっている。防犯まで広げたい

4つの業界から見て、いずれも「自分たちに足りないもの」を持っているのが、この領域の会社です。

名前がないから探されない。だが、見つかれば複数の業界が欲しがる。

だから、輪郭を言葉にすることが承継の第一歩になる

売却の相談を受けたとき、私たちが最初にお願いするのは、決算書ではなくこの整理です。

1. どの制度で、何を請けているか

電気工事業の登録なのか、建設業許可の電気工事業なのか、電気通信工事業なのか。非常放送を扱っているなら消防設備の点検はどうしているか。機械警備をやっているなら警備業の認定はあるか。

境界が曖昧なまま渡すと、買い手は譲渡後に請けられなくなる仕事があるかもしれないと考え、その分を価格に織り込みます。

2. どのメーカーの認定を持っているか

防犯カメラも入退室管理も、メーカーごとに施工や設定の認定制度があります。認定がないと保守を引き継げない機器もあります。

これは新規に取ろうとすると時間がかかるため、買い手にとっては「買う理由」そのものになります。

3. どういう建物に入っているか

学校、病院、工場、物流倉庫、店舗、マンション。施設の種類によって求められる仕様も、担当者も、更新周期も違います。

特定の分野に食い込んでいるなら、それは規模より価値があります。

4. 保守契約の本数と更新周期

防犯カメラは、おおむね数年から10年程度で更新期を迎えます。次のリプレースがいつ来るかが読めることは、買い手にとって将来の売上が見えることを意味します。

この4つは、いずれも紙にまとめるだけの作業です。今日から始められて、売却を決めていなくても損はありません。

人の側の事情も、確認しておく必要がある

制度と設備の話をしましたが、承継で最後に効いてくるのは人です。

建設業の後継者不在率は57.3%で、全業種のなかで最も高い水準にあります(帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」)。全業種の平均が50.1%まで下がったなかでの数字です。

さらに、建設業就業者のうち55歳以上が占める割合は36.7%(全産業では32.4%)にのぼります(国土交通省「建設業を巡る現状と課題」)。

設備は更新すれば新しくなる。だが、その設備を据えて設定できる人は、更新できない。

つまり、この領域で会社を買う側が本当に欲しがっているのは、機器でも契約書でもなく、現場を分かっている人がそのまま残ることです。

だから譲渡の設計では、価格と同じくらい「社員の処遇」と「引き継ぎ期間」が重要になります。

隣の業種との関係も見ておく

非常放送や自動火災報知設備まで扱っているなら、消防設備の会社としての価値も持っています。消防施設工事業は26年間ほぼ業者数が変わっておらず、参入が実質増えない希少な領域です。

一方、LAN配線や光ファイバの比重が高いなら、電気通信工事としての見られ方になります。こちらは26年で54.5%増えている、まったく逆の構造の市場です。

どちらに寄せて話すかで、買い手も価格も変わります。

資材を納めてきた側から見ています

私たちは1950年から電設資材を扱ってきました。

防犯カメラも、カードリーダーも、非常放送のアンプも、電設資材の商流に乗って現場に届きます。どの会社がどのメーカーを扱い、どの建物に納めているか。それは、資材を納めていると自然に見えてきます。

「何屋か分からない」という会社ほど、実は複数の業界から欲しがられる位置にいます。

売却をお決めでない段階で結構です。まず、御社が何をできる会社なのかを、一緒に言葉にするところから始めましょう。

参照した一次資料

よくあるご質問


防犯カメラの設置に、警備業の認定は必要ですか。
設置工事そのものだけであれば、通常は警備業の認定は必要ありません。認定が必要になるのは機械警備業務、つまりセンサーの異常を自社で受信し、待機している人員が現場へ駆けつける業務を行う場合です。監視だけを請けている場合や、駆けつけを警備会社に委託している場合は扱いが変わるため、承継の前に自社がどこまでやっているかを整理しておく必要があります。判断に迷う場合は所轄の公安委員会にご確認ください。
非常放送も扱っています。これは消防設備になりますか。
非常警報設備としての放送設備は消防用設備等に含まれ、消防法に基づく点検・報告の対象になります。一方、防犯カメラや入退室管理はその対象外です。同じ「弱電」として一括りに請けていても制度上は別扱いになる部分があるため、どこまでを自社の資格・許可で行い、どこから外注しているかを整理しておくと、承継の話が早く進みます。
業種として認知されていないと、買い手も少ないのではないですか。
買い手は少なくありません。むしろ警備会社、ビル管理会社、電気通信工事会社、防災設備会社と、複数の業界から関心を持たれる位置にあります。問題は買い手が少ないことではなく、御社が何をできる会社なのかが外から見えにくいことです。そこを言語化できれば、選択肢はかえって広がります。
保守契約が売上の半分近くあります。これは評価されますか。
強く評価されます。この業種で買い手が最も欲しがるのは、建物に定期的に出入りする理由です。保守契約は、その理由が契約という形で毎年続くことを意味します。工事の受注が変動しても保守は残るため、将来の売上が読める部分として高く見られます。

執筆:松本電業株式会社(電設承継パートナーズ)

「うちの場合はどうなのか」を聞いてください。

売却をお決めでない段階のご相談で結構です。費用はかかりません。

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