消防設備の会社の値打ちは、毎年同じ建物に入る点検契約にある
消防設備の会社の値打ちを考えるとき、軸になるのは工事の実績より、毎年同じ建物に入る点検契約です。点検は消防法が建物の関係者に義務づけていて、結果は消防署に報告されます。ただ、点検が「法律で決まった売上」になるのは、資格者に頼まなければならない建物の分だけで、建物全体の一部です。
点検の義務を負うのは建物の関係者で、点検会社ではない。
資格者に点検させなければならない建物は、政令で決まっている
消防法17条の3の3は、防火対象物の関係者に、消防用設備等を定期に点検して、消防長か消防署長に結果を報告するよう求めています。点検をだれがするかは建物で分かれます。政令で定める建物は消防設備士か消防設備点検資格者に、そのほかは関係者が自分で点検します。
その政令(消防法施行令36条2項)と、報告の周期(消防法施行規則31条の6第3項)を並べると、次のとおりです。
| 建物 | 点検する人 | 結果の報告 |
|---|---|---|
| 特定防火対象物(劇場・飲食店・物販店・病院・ホテル等)で、延べ面積1,000㎡以上 | 消防設備士または消防設備点検資格者 | 1年に1回 |
| 同じ用途で、延べ面積1,000㎡未満 | 関係者が自分で点検してよい | 1年に1回 |
| 共同住宅・事務所・工場・学校等で、延べ面積1,000㎡以上 | 消防長・消防署長が指定した建物だけ、資格者 | 3年に1回 |
| 同じ用途で、延べ面積1,000㎡未満 | 関係者が自分で点検してよい | 3年に1回 |
表のほかに、面積に関係なく資格者に点検させる建物が二つあります。特定の用途の部分が避難階以外の階にあり、避難階か地上へ直通する階段が二つ以上ない建物(階段が屋外にある場合などは一つでよい)と、二酸化炭素を全域に放出する消火設備がある建物です(同令36条2項3号・4号、規則31条の6の2)。
点検の周期は、消防庁の告示にあります。自動火災報知設備、スプリンクラー設備、屋内消火栓設備、非常警報設備などは、機器点検が6月ごと、総合点検が1年ごとです(平成16年消防庁告示第9号)。
点検先の一覧に「資格者が必要な建物か」の列があれば、資格者が退職したときに請けられなくなる契約が、どれかを読めます。
16,075は会社の数ではなく、許可の数である
国土交通省の調査で、消防施設工事業の許可を持つ業者は、平成12年3月末が16,013、令和8年3月末が16,075でした。26年で62業者、0.4%の増加です。建設業全体の許可業者が19.5%減り、483,823業者になったなかでは、目立つ動きです。
| 業種 | 平成12年 | 令和8年 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 建築 | 226,778 | 140,967 | -37.8% |
| 土木 | 167,891 | 130,833 | -22.1% |
| 造園 | 35,033 | 24,070 | -31.3% |
| 電気 | 53,743 | 66,534 | +23.8% |
| 電気通信 | 10,847 | 16,764 | +54.5% |
| 消防施設 | 16,013 | 16,075 | +0.4% |
(許可の業種は「〜工事業」。各年3月末現在。国土交通省「建設業許可業者数調査」令和8年3月末現在、表-3)
ただし、「26年間ずっと横ばい」とは言えません。同じ表に載る年のなかで、消防施設工事業がいちばん少ないのは平成25年3月末の14,925業者で、そこから令和8年の16,075まで、当社の計算で7.7%増えています。いったん減って、戻った数字です。
数え方にも、読み違えやすい点が二つあります。
一つめは、この表が「業種別の許可の数」だということです。令和8年3月末の許可業者は483,823ですが、業種別の許可の総数は1,787,977で、1社が複数の業種を持つ分を重ねて数えています。平成12年と比べると、業者は19.5%減り、業種別の許可の総数は28.4%増えました。複数の業種の許可を持つ業者の割合は、43.5%から54.1%に上がっています。消防施設工事業の+0.4%には、新しく許可を取った会社も、ほかの許可に消防施設を足した会社も、許可をやめた会社も、区別なく含まれています。
二つめは、許可が要る工事に下限があることです。1件の請負代金が500万円に満たない工事だけを請けるなら、建設業の許可はいりません(建設業法3条1項ただし書、同法施行令1条の2)。点検や整備が中心で、大きな工事を請けない会社は、許可を持たないまま営業している場合があります。そういう会社は、この表に載りません。
16,075は、消防設備の会社の数ではなく、消防施設工事の許可の数だ。
消防設備の会社が全国に何社あるかは、国土交通省の許可の統計からは分かりません。「許可業者が増えていないから、新しく入る会社が少ない」という読み方は、この数字だけでは裏づけられません。
資格者は希少ではない。在籍して現場を回せるかを見る
消防庁の消防白書によると、令和7年3月31日現在の消防設備士は延べ137万6,123人です。消防設備点検資格者は、特種が831人、第1種(機械系統)が17万6,341人、第2種(電気系統)が16万5,573人です。免状の数だけを見れば、希少な資格ではありません。見るべきなのは、その会社に在籍して、点検の現場を回している人が、何人、どの種類を持っているかです。
資格の入り口は、思ったより広く開いています。消防設備点検資格者の講習を受けられる人には、消防設備士のほかに、電気工事士(第一種・第二種)、管工事施工管理技士、一級・二級建築士、工事や整備の実務経験が5年以上ある人が並んでいます(消防法施行規則31条の6第7項)。電気工事の会社が点検に手を広げる道は、この条文に書かれています。
工事のほうは、事情が違います。自動火災報知設備やスプリンクラー設備などの設置工事は、消防設備士でなければ行えません(消防法17条の5、同法施行令36条の2)。甲種が行えるのは工事と整備、乙種が行えるのは整備です(同法17条の6)。ただし自動火災報知設備の電源の部分は、この独占から除かれています。
建設業の許可の側では、営業所技術者(旧・専任技術者)の要件に、甲種または乙種の消防設備士免状が入っています。1級の電気工事施工管理の検定に合格した人が、そのあと消防施設工事の実務を3年積んでも、要件を満たせます(国土交通省の基準通知別表)。許可を支える人の要件と、工事に従事できる人の要件は、別の法律で決まっています。乙種の免状で許可の技術者になれても、工事はできません。
資格者には、免状を取ったあとの講習があります。
消防法施行規則33条の17の数え方をあてはめた例で、日付は仮のものです。免状に記載の交付日と、都道府県の案内で確かめてください。
消防設備点検資格者も、消防庁長官が定める期間ごとの講習を修了しないと、資格を失います(施行規則31条の6第8項)。社長が現場から離れて何年もたっているなら、免状が手元にあることと、講習が切れていないことは、別に確かめる必要があります。
買い手が点検契約で確かめる4点
消防設備の会社の売買で、公表された成約の事例を、当社は一次資料で確認できていません。次の4点は、点検という仕事の構造と、ここまでの法令から読める、確かめどころです。
1. 契約の本数、周期、書面
何件の建物を、どの周期で、いくらで点検しているか。契約書があるか、だれと結んでいるか(建物の所有者か、管理会社か)、解約の条件はどうなっているか。口頭の約束のまま続いている契約は、売上として数えにくくなります。
2. 建物の区分
先の表のどこに当たる建物か。特定防火対象物で1,000㎡以上なら、資格者がいないと請けられません。点検の周期は設備の種類で決まり(機器点検6月、総合点検1年など)、建物の区分で変わるのは、消防署への報告が1年に1回か、3年に1回かです。
建物の区分は、契約の本数と同じくらい、点検契約の中身を決めます。
3. 資格者の人数、種類、講習の期限
甲種か乙種か、どの類か、何歳か。次の講習はいつか。社長だけが持っている会社では、退任と同時に請けられなくなる契約があります。残る期間を契約に書くか、承継の前に社員が資格を取るか。後者は取得までの期間を見込んでおく必要があります。
資格者が社長一人の会社では、退任の日が、請けられなくなる契約の始まりの日になる。
4. 点検から改修工事への流れ
点検で不備が見つかれば、改修を提案できます。500万円未満の改修だけなら許可はいりませんが、それを超える工事を請ける実績があるなら、許可の業種と営業所技術者が、だれで足りているかが確かめられます。許可の維持については、経営業務の管理責任者が退任・死亡したら、専任技術者(営業所技術者)が退職したらに書きました。
買い手になりうる会社と、売らない場合の使い道
点検契約が価値になるのは、毎年その建物に入る理由になるからです。その理由を欲しがる側として、次の会社が考えられます。いずれも構造からの整理で、実際の売買の事例ではありません。
- 同業の消防設備会社:点検は物件を回る仕事なので、隣り合った地域の点検先が増えると、移動が効率的になります
- 電気工事・設備工事の会社:電気工事士は点検資格者の講習を受けられ、自動火災報知設備の電源の部分は消防設備士の独占から除かれています。電気と消防を一括で請けられる会社になる余地があります
- 建物の管理や警備を請けている会社:すでに建物の担当者と取引があり、点検を足せば窓口が一つになります
点検先の一覧は、売る場合も、売らない場合も、先に作って損がない書類です。
売らない選択肢でも、点検先の一覧は役に立ちます。社員や親族に継ぐ場合、一覧があれば、点検先ごとの契約と資格者の組み合わせを、引き継ぎの順番に並べられます。会社をたたむ場合は、点検の義務を負う建物の側が、代わりの点検先を探すことになります。一覧を渡せば、その時間を短くできます。
消防設備の会社に限った後継者不在率は、帝国データバンクの調査では見当たりません。建設業全体の後継者不在率は57.3%で、8業種のなかで最も高い水準です(帝国データバンク、2025年)。非常放送や防犯設備まで請けている会社は、弱電工事の会社は、法律の上では何屋なのかを、電気と通信の許可で動いている会社は電気通信工事の許可は26年で54.5%増えたを読んでください。業種ごとの見方は消防設備会社の承継のページに、売る・残す・たたむで許可と登録がどうなるかは許可と登録の整理にあります。
参照した一次資料
- 国土交通省「建設業許可業者数調査の結果について-建設業許可業者の現況(令和8年3月末現在)-」 (2026年5月15日公表)
- e-Gov法令検索「消防法」(第17条の3の3、第17条の5、第17条の6、第17条の10) (2025年6月1日施行版)
- e-Gov法令検索「消防法施行令」(第7条、第36条、第36条の2) (2025年10月1日施行版)
- e-Gov法令検索「消防法施行規則」(第31条の6、第31条の6の2、第33条の17) (2026年6月26日施行版)
- 消防庁告示第9号「消防用設備等又は特殊消防用設備等の種類及び点検内容に応じて行う点検の期間、点検の方法並びに点検の結果についての報告書の様式を定める件」 (平成16年(令和2年改正まで))
- 総務省消防庁「令和7年版 消防白書」(消防設備士・消防設備点検資格者の数) (令和7年3月31日現在)
- e-Gov法令検索「建設業法」第3条/「建設業法施行令」第1条の2(軽微な建設工事) (現行)
- 国土交通省「国土交通大臣に係る建設業許可及び建設業者としての地位の承継の認可の基準及び標準処理期間について」(国総建第99号)別表 (令和6年12月13日最終改正)
- e-Gov法令検索「電気工事士法」第2条 (現行)
- 帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」 (2025年)
よくあるご質問
消防設備の点検をするのに、建設業の許可は必要ですか。
点検が中心で、工事はほとんどしていません。承継で評価されますか。
消防設備士が社長だけの場合、承継はできませんか。
電気工事士の資格で、消防設備の点検はできますか。
点検先の台帳は、何を載せておけばよいですか。
知りたかったことは分かりましたか
執筆:松本電業株式会社(電設承継パートナーズ)