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公開: 最終更新: 計装工事

計装工事会社は「どの建設業許可で成り立っているか」で承継の難易度が変わる

計装工事の会社を譲るとき、最初に確かめるのは決算書ではなく、どの建設業許可で工事を請けているかです。建設業許可に「計装工事業」はなく、電気工事業・管工事業・機械器具設置工事業・電気通信工事業のどれかで請けているからです。この組み合わせが、1級計装士を営業所技術者として数えられるか、誰が買い手になれるかを決めます。

計装工事業という建設業許可は、存在しない。

建設業法の別表第一は、許可の対象になる工事を29種類並べています。土木、建築、大工、左官と続き、電気、管、機械器具設置、電気通信、消防施設、解体で終わる表のどこにも、計装はありません。法律の本文にも、計装という語は一度も出てきません。

では、計装工事の会社は何の許可で仕事をしているのか。業界団体の入会案内が、答えの形を示しています。日本計装工業会の正会員になれるのは、次のような法人と個人です。

建設業の規定に基づく電気工事業、管工事業、機械器具設置工事業、及び電気通信工事業の許可を受け、計装工事業を営む法人及び個人

計装という業界は、四つの許可の上に成り立っています。会社ごとに、どの許可を軸にしているかが違います。

土台の許可で、現場の領域と買い手の候補が分かれる

次の表は、許可の種類ごとに現場の領域と買い手の候補を整理したもので、買い手の候補は当社の見立てです。公表事例で確かめた対応ではありません。

軸にしている許可現場の領域(例)買い手の候補(当社の見立て)
電気工事業制御盤まわり、配線、電源設備電気工事会社、盤メーカー、電材商社
管工事業空調・給排水の自動制御空調の設備工事会社
機械器具設置工事業プラント機器の据付・調整プラントエンジニアリング会社、機械商社
電気通信工事業遠隔監視、ネットワーク計装通信工事会社

同じ計装工事会社でも、電気工事業を軸にしている会社と管工事業を軸にしている会社では、買い手の絞り込み方が変わります。許可の種類は、許可通知書に書かれています。

計装の会社を誰に引き継ぐかは、許可通知書に書かれた業種の並びから考え始める。

1級計装士が営業所技術者になれるのは、電気と管だけ

営業所ごとに専任で置く技術者を、法律は営業所技術者と呼びます(建設業法第7条第2号。2024年12月13日の改正で、旧称の専任技術者から名称が変わりました)。許可の維持に欠かせない人です。1級計装士は、この営業所技術者になれる資格として、建設業法施行規則第7条の3に名前が挙がっています。

ただし、挙がっているのは二つの許可の項だけです。

許可の種類登録計装試験の合格者が営業所技術者になる条件
電気工事業合格後、電気工事に関し1年以上の実務経験(第7条の3の表の電気工事業の項)
管工事業合格後、管工事に関し1年以上の実務経験(同表の管工事業の項)
機械器具設置工事業第7条の3の表に登録計装試験の記載なし
電気通信工事業第7条の3の表に登録計装試験の記載なし

1級計装士が営業所技術者として数えられるのは、電気工事業と管工事業の二つだけだ。

日本計装工業会は、1年の実務をもって電気工事業と管工事業の両方の主任技術者になるわけではない、と注意を出しています。数えられるのは、実務を積んだ業種のほうだけです。公共工事を直接請け負うために受ける経営事項審査では、同じ条件の1級計装士は、その電気工事または管工事に対して1点の加点になります。技術職員として申請できる業種は、1人につき二つまでです。

ここに、承継の落とし穴があります。機械器具設置工事業を軸にしている計装会社の営業所技術者は、1級計装士の資格では務まりません。別の資格か、10年以上の実務経験の道(法第7条第2号ロ)で立てた人です。その人が抜けたとき、1級計装士を採れば代わりになる、とは限りません。

1級計装士は、取るのに5年、数えてもらうのにさらに1年かかる

1級計装士の受験資格は、計装工事の設計・施工の実務経験5年以上です(2級計装士の合格者は4年6か月以上)。どちらも、年数のうち1年以上は指導監督的な実務経験でなければなりません。合格したあとに、電気または管の実務を1年積んで、はじめて営業所技術者として数えられます。資格を取るまでに5年、数えてもらうまでにさらに1年かかる計算です。

計装士の累計合格者は、日本計装工業会の沿革によれば、2015年2月に3万人を超えました。大きな数字に見えますが、制度が始まってからの累計です。すでに引退した人も入り、1級と2級の内訳も分かりません。いま現場に立つ人数は、この数字からは読み取れません。

資格を持つ人を新しく育てるのは、年単位の仕事です。

買い手が欲しいのは、技術人員だった

2025年2月、上場会社の東テクは、神戸市の三王機工(自動制御設備工事、中央監視システム工事等)の株式を取得して子会社化すると適時開示しました。理由は、計装業界で技術人員の不足が続くなか、経験豊富な技術人員を多く抱える会社をグループに加えて、計装工事事業を広げるためと書かれています。

三王機工の従業員は58名(臨時雇用者等を含む)、売上高は2024年1月期で21億2,700万円でした。社長ひとりの会社ではありません。取得価額は非公表です。それでも、買い手が自分で書いた取得の理由は、設備でも顧客でもなく、人員でした。

買い手が開示した取得の理由は、技術人員の確保だった。

人を買う取引は、許可の取引でもあります。株式を譲り受けるなら、許可を持つ法人が変わらないので、承継の認可は要りません。事業を譲り受けるなら、あらかじめ認可を受けることで許可を引き継げますが、認可は新規許可と同じ基準で審査されるので(建設業法第17条の2)、買う側にも営業所技術者と経営業務の管理体制が要ります。どちらを選んでも、許可の根にある「人」は避けて通れません。

売り方による許可の扱いの違いは、許可・資格の承継早見表に一枚にまとめました。

承継でつまずく3点

1. 経営業務の管理体制を満たす人が、社長だけ

建設業許可には、経営業務の管理体制の基準があります(建設業法施行規則第7条第1号)。2020年10月の改正で、社長ひとりが5年以上の経験を持つ形のほかに、役員経験2年以上と役員等5年以上の経験を持つ人に、財務・労務・業務運営の経験者を直接補佐者として付ける形が加わりました。

満たす人が社長だけの会社は、社長が退く日に基準を満たさなくなります。基準を満たさなくなったら2週間以内に届け出る義務があり、許可行政庁は許可を取り消さなければなりません(建設業法第11条第5項、第29条第1項第1号)。裁量ではなく義務です。代わりになる人や体制があるなら、2週間以内に書類を出します(施行規則第7条の2第2項)。許可がなければ、工事は請けられません。詳しくは経営業務の管理責任者のコラムにまとめました。

経営業務の管理体制を満たす人が社長だけなら、社長が退く日が、許可の期限になる。

2. 営業所技術者の資格が、社長の個人に載っている

資格は個人のものです。社長が営業所技術者を務める会社で、他に同じ業種の要件を満たす人がいなければ、退任と同時に営業所技術者が欠けます。期限は同じ2週間です。

選べる道は二つです。残っていただく期間を決めて、その間に後任を育てるか、譲渡の前に有資格者を置くか。社長が営業所技術者のまま会社の役員を退く形(営業所技術者は役員である必要がありません)も、条文の上ではあり得ます。営業所技術者の交代の手続きは、営業所技術者が退職したらで書いています。

資格は個人のものなので、会社に残るのは、その人が在籍している間の効力だけだ。

3. 設定値が図面に載らず、人の頭の中にある

計装は現場ごとに調整する仕事で、最終の設定値が図面に反映されていないことがあります。これは法令にも統計にも出てこない、現場の仕事の性質から考えられる論点です。

そのラインがその係数でなければ動かない、という知識が一人にしかなければ、買い手は引き継げるかどうかの判断ができません。調整履歴と設定値を、誰が見ても分かる形で記録に残しておく。譲渡を決めていない段階から始められる作業です。

建設業の後継者不在率は、帝国データバンクの8業種で最も高い

帝国データバンクの2025年の調査では、全国の後継者不在率は50.1%でした。業種を8つに分けた集計で最も高いのは建設業の57.3%です。過去最も高かった2018年の71.4%からは、14.1ポイント下がっています。

区分後継者不在率(2025年)
全国・全業種50.1%
建設業(8業種で最高)57.3%
建設業の過去最高(2018年)71.4%

計装工事は建設業に含まれますが、この数字は計装工事だけの値ではありません。電気工事や設備工事の個別の値も、この調査には載っていません。後継者がいないという悩みを抱える会社が周りに多い、という大づかみの事実と読んでください。

自社でできる、3つの確認

確認すること見る場所
四つの許可のどれを持っているか許可通知書
営業所ごとの営業所技術者が誰で、どの資格で要件を満たしているか。1級計装士なら、電気か管の実務で数えているか営業所技術者の届出の控え、資格証
経営業務の管理体制を満たしているのは、社長だけか、他にもいるか許可申請書の控え

この三つが書き出せていれば、誰かが辞めると言い出した日に、2週間の中で何から動くかが決められます。許可の可否の判断は、許可を出した行政庁と行政書士に確認してください。

計装工事会社の許可と有資格者の残し方を相談する

参照した一次資料

よくあるご質問


計装工事業という建設業許可はありますか。
ありません。建設業法の別表第一に並ぶ29の工事の種類に、計装は入っていません。計装工事を請ける会社は、電気工事業・管工事業・機械器具設置工事業・電気通信工事業のうち、実際の工事の内容に合う許可で請けています。承継では、自社がどの許可で請けているかを最初に確かめます。
計装士の資格は、会社を譲るときに引き継げますか。
資格は個人のもので、会社には移りません。引き継げるのは、その資格を持つ人が会社に残るかどうかだけです。1級計装士が営業所技術者を務めている会社でその人が抜けると、後任がいなければ2週間以内の届出が要り、許可は取り消されます(建設業法第11条第5項・第29条第1項第1号)。残留してもらう期間を決めるか、譲渡の前に別の有資格者を置いておく必要があります。
買い手になるのはどんな会社ですか。
公表された例では、計装工事事業を持つ上場会社が、技術人員を求めて計装工事会社の全株式を取得しています(東テクによる三王機工の子会社化、2025年2月)。盤メーカーや設備工事会社が買い手になりうる、という整理は当社の見立てで、公表事例で確かめたものではありません。
株式譲渡と事業譲渡で、建設業許可の扱いはどう変わりますか。
株式譲渡は、許可を持つ会社そのものが変わらないので、承継の認可は要りません。ただし、役員が変われば30日以内の変更届が、経管や営業所技術者が欠けるときは2週間以内の手続きが要ります。事業譲渡は、あらかじめ認可を受ければ許可を引き継げますが、譲り受ける側が許可の基準を満たす必要があります。個別の可否は許可を出した行政庁に確認してください。

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執筆:松本電業株式会社(電設承継パートナーズ)

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