特定技能1号の社員がいる電気工事会社を引き継ぐ前に|雇用主・在留手続・受入計画を確認する
記事中のモデルケースは、理解を助けるための架空の例です。 当社の成約実績ではありません。
「来月からも同じ現場で、同じ仕事をお願いします」。事業譲渡の説明を受けた社員がうなずき、社長も安心する。これは仮想例です。社員が建設分野の「特定技能1号」で働いているなら、その場で承継翌日の配置まで決めてしまう前に、雇用主と在留手続を確かめる必要があります。
本稿で扱うのは、主に建設分野の特定技能1号です。特定技能2号、技能実習、永住者などへ、受入計画や生活支援の説明を一律に当てはめないでください。国籍や「外国人社員」という呼び方だけでは、必要な手続は決まりません。
会社の株主が変わるのか、本人の雇用主が変わるのか
最初に並べたいのは、現在の雇用契約に書かれた会社と、承継後に雇用する会社です。
株式譲渡で同じ法人が雇い続ける場合と、事業譲渡で社員が別法人へ移る場合は、出発点が違います。株主が交代することだけを、本人の転職と同じ扱いにはしません。ただし、同じ法人でも社名、所在地、代表者、担当業務などの変更があるなら、その変更に対応する届出・申請を確認します。
特定技能1号で、転職により「指定書」に記載された所属機関を変える場合は、在留資格変更許可を受ける必要があります。指定書は、在留カードとともに交付され、働く機関や分野を示す書類です。「カードの期限がまだある」「仕事は同じ」という二点だけでは、新会社での就労開始を判断できません。出入国在留管理庁・運用要領11〜12頁
入管要領は、個人事業主の死亡・法人化や、吸収合併・吸収分割等で所属機関の法人格に変動が生じるとき、変更許可申請が必要な場合があるとしています。
その事由が予見されたら、実行前に地方出入国在留管理局へ相談します。再編なら一律に同じ手続で済むとは考えず、存続する法人と本人の所属関係を示してください。出入国在留管理庁・運用要領9頁
従業員への説明と同意についても、実際の承継方法に合わせて検討します。
建設分野では、受入計画も別に確認する
「建設特定技能受入計画」は、建設分野の1号特定技能外国人をどう受け入れるかについて、国土交通省の認定を受ける計画です。在留手続と同じ書類ではありません。
国土交通省は、計画の記載事項が変わる場合を、変更認定を求める「変更申請」と「変更届出」に分けています。
現行掲載の手引きでは、商号・本店所在地、建設業許可番号、CCUSの事業者IDなどは変更申請の対象に挙げられています。代表者の氏名などは変更届出の一覧にあります。会社の変更が全部同じ手続になるわけではありません。国土交通省・変更申請/変更届出の手引き
ただし、これを見て「合併も会社名の変更で済む」とは判断しないでください。国交省のQ&Aは、合併・分割・法人成りなどの組織変更について、形態で扱いが異なるため、本店所在地を管轄する地方整備局へ直接相談するよう案内しています。既存計画をどう扱うか、新たな申請が必要かを、承継前に確認します。国土交通省・制度Q&A 8-4
「申請した」と「働き始められる」を分ける
冒頭の仮想例では、譲渡日と新会社での就労開始希望日を、別々の欄に書きます。
そのうえで、在留資格変更の申請・許可、受入計画の申請・認定、必要な届出を並べ、誰がどこへ確認するかを決めます。
国交省は受入計画と入管への申請を並行して行えると案内する一方、受入計画の認定が出なければ入管の許可等も出ないと説明しています。審査の所要期間は地域や補正によって変わるため、希望日から機械的に逆算するだけでは足りません。国土交通省・申請時期等の注意事項
入管要領は、上記の転職に伴う在留資格変更許可申請中に、変更予定の就労先で働くことは認められないと明記しています。
切替前後の働き方を管轄入管へ確認する前に、本人に退職日や新会社での初出勤を確約させないようにします。出入国在留管理庁・運用要領12頁
相談資料には、本人の在留資格・期限・指定された所属機関、雇用条件書、認定済み受入計画、承継方法と予定日をそろえます。資格を要する電気工事を任せる場合は、在留資格だけで判断せず、電気工事士資格と実際の作業範囲も別途確認します。本人の書類は、手続に必要な担当者だけで取り扱います。
本人が暮らし続けるための窓口も引き継ぐ
特定技能1号では、会社または委託を受けた登録支援機関による生活・就労の支援があります。公式案内には、住居の確保、生活上の手続、日本語学習、理解できる言語での相談などが含まれます。出入国在留管理庁・会社から受けられる支援
社長が社宅や相談の窓口まで担っていたなら、承継後の連絡先と担当者を具体的に決めます。
別の登録支援機関へ切り替える場合は、支援計画変更と、支援委託契約の終了・締結の届出が関係します。以前の担当者が当然に続けるものと考えず、変更内容に応じた書類と期限を確認してください。出入国在留管理庁・運用要領110〜115頁
本人には、理解できる言葉で、決まったことと確認中のことを伝えます。
承継の相談では、人数だけでなく、雇用主が変わる予定か、いつまでに確認が必要かを相談窓口へお聞かせください。在留・受入計画の個別判断は、管轄入管、地方整備局、入管業務を扱う行政書士等にも確認します。「働き続けてほしい」という希望を、本人が安心して次の勤務予定を立てられる準備につなげましょう。
参照した一次資料
- 出入国在留管理庁・運用要領11〜12頁 (2026年10月20日確認)
- 出入国在留管理庁・運用要領9頁 (2026年10月20日確認)
- 国土交通省・変更申請/変更届出の手引き (2026年10月20日確認)
- 国土交通省・制度Q&A 8-4 (2026年10月20日確認)
- 国土交通省・申請時期等の注意事項 (2026年10月20日確認)
- 出入国在留管理庁・運用要領12頁 (2026年10月20日確認)
- 出入国在留管理庁・会社から受けられる支援 (2026年10月20日確認)
- 出入国在留管理庁・運用要領110〜115頁 (2026年10月20日確認)
知りたかったことは分かりましたか
執筆:松本電業株式会社(電設承継パートナーズ)