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公開: 最終更新: 電気工事

社長より先に経理の家族が引退したいとき|電気工事会社の事務をどう引き継ぐか

この記事にはモデルケースが含まれます

記事中のモデルケースは、理解を助けるための架空の例です。 当社の成約実績ではありません。

「社長はまだ現場に出られる。でも、経理をしている家族は、そろそろ仕事を終えたい」。会社の引継ぎを考えるとき、この二つの予定を別々に聞いているでしょうか。

以下は説明のための仮想例です。電気工事会社で、社長の配偶者が請求、支払、給与資料、税理士への連絡を担っているとします。息子が次の社長になる話は進んでいても、月末に誰が資料を集めるかは決まっていません。経営の後継者がいる安心だけでは、事務の引継ぎは終わりません。

経理担当の家族が先に引退したいなら、その希望日を置いたうえで、仕事の受け皿を考えます。本人が望まない延長を、会社が続くための当然の条件にしないことが出発点です。

家族の引退も、会社の予定に入れる

経理を支える家族の変化が、承継を考える契機になることはあります。日本政策金融公庫が紹介する防犯工事会社の事例では、経営者が、経理担当の妻の体調変化について話しています。公庫が掲載した一社の取材であり、当社の支援事例ではありません。

この一社の事例から業界全体の傾向は判断できません。

以下では、事務担当者の引退に備えるための本稿の提案として、家族に事情が生じる前から仕事の受け皿を検討する方法を整理します。元気なうちに退きたい、毎月の締め切りから離れたい、少しずつ勤務を減らしたい。理由を細かく説明できなくても、希望する働き方は確認できます。

家族の中で話すと、会社への協力と家庭の役割が混ざることがあります。最初の相談では、いつまでに辞めたいか、引継ぎのためにどの程度なら働けるか、辞めた後の質問対応を引き受けるかを別々に聞きます。退任日だけを決め、電話対応を無期限に残すと、生活上の区切りはつきません。家族への話の切り出し方も参考にしてください。

「経理を全部」の中に、違う仕事が入っている

会計ソフトを使える人を採れば解決すると考える前に、現在の担当者がしていることを見ます。帳簿への入力、翌月の支払資金の確認、勤怠資料の回収、取引先への問い合わせは、それぞれ必要な情報も判断する人も違います。厚生労働省の事務系職種の能力評価基準も、経理と資金財務を別の職務として整理しています。

工事会社では、事務所に届いた請求書だけでは処理が終わらない場面があります。

材料の納品先は分かるが工事番号がない。現場の立替経費に用途のメモがない。応援を頼んだ日の記録が、職長の手元に残っている。これらは仮定の例ですが、後任が会計に詳しくても、会社の誰かが現場の情報を補わなければ先へ進めません。

引き継ぐのは操作手順に加えて、資料をどこから集め、不明な内容を誰に聞くかという経路です。家族の担当者が覚えていた相手の名前を、そのまま次の一人に暗記させるより、現場責任者が説明を添えて戻す運用をつくる方が引継ぎ後も続けやすくなります。

締め日から逆にたどると、抜けている担当が見える

最初から分厚いマニュアルを作る必要はありません。直近の一か月について、支払日、給与の計算に資料が必要な日、請求書の提出締め切りをカレンダーに置きます。その前に誰の資料が必要で、最後に誰が判断しているかを逆にたどってみます。

例えば、月末払いの外注費を翌担当へ渡すなら、請求書の保存場所だけで終わらせません。現場での稼働を確認する人、金額に相違があったときの照会先、修正後の書類を承認する人まで記します。後任が判断に迷う場面を、一件の資料に沿って残す方法です。

一方、毎月は起こらない仕事も別に拾います。

年末調整の資料集め、保険の更新、決算前の棚卸し資料など、自社にある業務を過去一年の予定表や受信履歴から確かめます。期限そのものは税理士や社会保険労務士、契約先の案内で確認し、記憶だけで新しい日程表を完成させないようにします。

この段階で「誰も担当していない」が見つかれば、それは引継ぎ資料の欠陥ではありません。社長が新しい分担を決めるための情報です。整理する仕事まで、引退を希望する本人一人に背負わせないことも大切です。

後任は、一人で全部を引き受けなくてもよい

受け皿は、既存社員、採用する担当者、外部への委託を組み合わせて考えられます。例えば、現場ごとの資料整理は社内、記帳は委託、支払の承認は社長という分担です。これは選択肢の一例で、どの会社にも同じ形を勧めるものではありません。

外部へ依頼するときは、入力する件数だけでなく、資料が欠けた場合の問い合わせ、締め切り直前の修正、給与資料の受渡し、担当者の休暇時の対応を確認します。税務や労務の専門業務は、資格や契約に応じて依頼先と分担を確かめてください。顧問契約があるから、日々の資料回収や資金の用意まで含まれるとは限りません。

採用費や委託費を見積もる際には、これまで家族が担った時間も書き出します。月末の夕方だけに見えていた仕事が、日々の電話確認に支えられていたかもしれません。費用を把握する目的は、その働きを責めるためではなく、引退後に必要な体制を会社の予算へ入れるためです。後継者の配偶者が当然に引き受けるという前提も置きません。

最後は「説明した」より、次の担当が動けたか

引継ぎの試行では、後任が資料を集めて処理を進め、現在の担当者が確認する形へ少しずつ移します。

初めの一回で迷う箇所が出るのは自然です。そのとき、操作が分からないのか、資料が足りないのか、判断する権限がないのかを分けると、必要な対策が見えてきます。

銀行や会計サービスについても、一覧に暗証番号を書いて渡して終える方法は避けます。会社として必要な利用者の変更、操作権限、承認権限を各サービスの手続で整えます。給与などの個人情報は、仕事に必要な範囲で扱えるようにし、引退後も私物端末に資料が残り続けないかを確認します。

引継ぎの終わりは、例えば「後任が一連の月次処理を行えた」「年一回の業務の担当と資料が決まった」「未処理事項の確認先がある」といった、自社で確かめられる状態で決めます。一か月で十分とする基準ではなく、例外の多さや業務周期に応じて試行期間を考えるための目安です。

会社を続ける方法と、本人が辞められる条件を一緒に考える

こうして分けると、社長が経営を続けながら家族が先に退く道も、承継先の管理部門へ事務を移す道も比較しやすくなります。

譲渡を考える場合も、買い手に管理部門があるだけで移行が終わるとは考えず、受入開始日と残る作業を具体的に確かめます。

承継準備のチェックリストに加えて、経理担当者の引退希望月、毎月の締め日、今の人しか説明できない仕事を一枚にしてみてください。相談窓口では、その整理をもとに会社を続ける選択肢を考えられます。家族の引退を先送りせずに済む体制を、会社の計画としてつくっていくことが大切です。

※2026年10月19日確認。業務分担は検討例です。税務・労務・銀行手続や委託範囲は、顧問専門家と各契約先に確認してください。

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執筆:松本電業株式会社(電設承継パートナーズ)

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