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公開: 最終更新: 電気工事

工事がキャンセルになった後の発注済み部材はどうする?会社承継で残る支払と請求の引継ぎ

この記事にはモデルケースが含まれます

記事中のモデルケースは、理解を助けるための架空の例です。 当社の成約実績ではありません。

例えば、受注一覧から消した工事について、翌月も資材代の請求が届く。長納期の盤や特注の照明器具を先に手配する電気工事会社では、工事の中止と、仕入先への注文の終了が同じ日になるとは限りません。

会社承継の前に確認したいのは、現在の受注残に加えて、中止・延期・解除になった案件です。工事がなくなっても残る部材、支払、顧客との精算を、一件ずつ引き継げる形にします。

「なくなった工事」が何を意味するかを確かめる

社内でキャンセルと呼んでいても、実際の状態には違いがあります。契約を解除したのか、着工を延期しただけなのか、施工範囲の一部が減ったのか。再開の見込みがあるなら、部材を保持すべき期間も変わります。

担当者の記憶だけで判断せず、顧客からの通知、変更注文、議事録、メールを確認します。

指示した相手と日時、止める範囲、再開や精算について合意した事項を並べてください。「年度内には再開するらしい」という話は、確定した受注とは分けて管理します。

国土交通省が公表する民間建設工事標準請負契約約款(甲)第33条は、工事完成前に発注者が必要と認める場合、書面で通知して工事を中止し、又は契約を解除できるとし、それにより生じる受注者の損害を発注者が賠償すると定めています。ただし、標準約款がすべての契約へ自動的に適用されるわけではありません。実際に結んだ契約の条項と、今回の中止理由を確認する必要があります。民間建設工事標準請負契約約款(甲)

注文者都合の場合と、自社側の契約違反を理由に解除された場合を一緒には扱えません。金額や責任をめぐって争いがあるときは、交渉を担当する弁護士へ資料を渡し、請求できる範囲を確認します。

工事の注文と、部材の注文を並べて読む

顧客から工事を請ける契約と、盤メーカーや電材店へ部材を注文する契約は、それぞれ確認します。顧客が中止を通知しただけで、仕入先への発注が無償で取り消されたと考えないようにしましょう。

部材ごとに、発注書、注文請書、製作承認、納期の連絡を集めます。まだ製作に入っていない物、加工途中の物、完成して出荷を待つ物、すでに自社へ届いた物では、止められる作業と発生している費用が異なります。

仕入先に確認する項目は、取消しの可否、回答期限、必要な費用、納期延期の条件、保管場所です。電話で確認した場合も、後任が読める形で回答を残します。工事側との精算が終わるまで仕入先への確認を待つと、選べたはずの対応が減ることがあります。

ここで、会社を渡す日までに決める事項と、引渡し後も協議する事項を分けます。

例えば、取消し回答の期限が承継日より先に来るなら、誰の判断でどこまで発注を止めるかを先に決める必要があります。

部材の金額を、そのまま顧客への請求額にしない

説明のための仮想例を考えます。ある工事会社が、特注盤を先行発注した後に工事中止の連絡を受けました。メーカーは製作を進めており、契約上の費用が残る見込みです。しかし、顧客が負担する精算額はまだ合意できていません。

この状態で「メーカーに払う分は、いずれ顧客から全額入る」と説明すると、買い手は入金の時期や確実性を判断できません。支払予定と回収見込みを別の欄にし、それぞれの根拠を付けることが必要です。

建設工事標準下請契約約款第36条は、工事完成前の任意解除によって下請負人に損害が生じた場合の賠償と、賠償額の協議を定めています。第43条は、完成前の解除について、出来形部分と部分払の対象となった工事材料の引渡し、それに相応する代金の支払を定めています。設計図書に適合しない出来形は引渡しを受けないことができ、前払金がある場合は所定の精算もあります。これらの条項だけを根拠に、未納品の発注部材がすべて全額買い取られると判断することはできません。建設工事標準下請契約約款・第36条、第43条

承継準備の実務上の整理として、少なくとも次の三つを区別することを勧めます。

  • 仕入先に対して確定した支払と、まだ協議中の費用
  • 顧客と合意済みの精算額と、請求を検討している額
  • 手元に残る部材の状態と、返品・転用・保管の可能性

別現場へ転用できるとしても、型式だけで決めることはできません。

仕様や納期が合うか、保管状態に問題はないか、顧客側の承認が必要かを担当者が確認します。返金や転用ができた場合は、その結果を精算資料にも反映し、同じ部材を複数の費目で重ねて説明しないようにします。

買い手へ渡すのは、残高と交渉の現在地

中止案件の資料は、契約書を束ねるだけでは読み取りにくいものです。一件につき一枚の状況メモを付け、最後に何を確認し、次に誰が何を決めるのかを書きます。

例えば、「顧客へ費用明細を提出済み、回答待ち」「メーカーは納期延期のみ了承」「特注品は工場保管、保管料の条件は未合意」といった事実です。連絡先に加え、関連するメールや発注書を参照できるようにします。主張と合意、概算と確定をはっきり書き分けるのが要点です。

支払が先に来る場合は、工事が止まった後の資金繰りにも載せます。譲渡後に入るかもしれない補償金と、翌月の確定した資材支払を相殺して考えると、当面必要な資金が見えなくなります。会計上の債権・債務や評価損の扱いは、交渉の記録を基に税理士等と確認してください。

承継方法を検討する際は、譲る範囲を先に確かめます。日本政策金融公庫の解説は、譲渡契約の主な項目として、株式譲渡では譲渡予定の株数、事業譲渡では譲渡対象の資産・負債の範囲を挙げています。日本政策金融公庫「事業を譲り受けたい方」契約締結の項

中止案件については、部材、関連契約、請求権、支払義務を一覧にし、何をどのように引き継ぐ計画なのか、必要な手続は何かを弁護士等と確認することを勧めます。

売り手と買い手の費用負担の合意と、顧客・仕入先との権利義務は、それぞれ整合させます。旧社長が説明に協力する場合も、連絡窓口、協力する期間、判断できる範囲を決めておくと、引退後にすべての電話を受け続ける状態を避けやすくなります。

まずは、仕入先の請求が残る一件から

中止案件があることだけで、会社承継を諦める必要はありません。

何が未確定なのかを見えるようにすることが、準備の第一歩です。

受注一覧、仕入先の発注残、倉庫に残った専用部材を照合してみてください。そこから見つかった案件について、通知書、注文書、支払日、精算の状況を集めます。継続して施工する現場については、受注残・未成工事・前受金の整理も合わせて確認すると、動いている工事と止まった工事を並べて説明できます。

キャンセル費用が決まっていない、社長しか交渉経緯を知らないという段階なら、承継の相談窓口へ状況をお伝えください。買い手へ説明する資料と、法律・会計の専門家に確認する事項を整理するところから始められます。

材料が残る盤の案件については、盤メーカーの仕掛品も参照してください。

参照した一次資料

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執筆:松本電業株式会社(電設承継パートナーズ)

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