電材卸の補充発注を誰に渡す?在庫表だけでは残らない「明日何を頼むか」の判断
記事中のモデルケースは、理解を助けるための架空の例です。 当社の成約実績ではありません。
棚卸表には商品がある。それでも、明日の注文を受けられる数量が分からない。すでに別の現場へ取り置いた分や、仕入先へ頼んだまま入荷していない分を、社長だけが覚えているからです。
これは説明のための仮想場面です。実在する相談や成約実績ではありません。電材卸の承継では、在庫をいくらと見るかに加え、次の補充を誰が判断するかも残しておきたい仕事です。
在庫評価と、補充する判断を分ける
在庫年齢や棚卸評価は、会社を引き継ぐ際の重要な確認です。一方、補充発注では、次の入荷までに何が出ていくか、いつ頼めば間に合うか、誰が発注を決められるかを見ます。評価額が分かっても、この判断ができるとは限りません。
中小機構のJ-Net21は、品切れと過剰在庫の双方に配慮し、発注する時期・数量・相手先をルール化する考え方を示しています。一定の在庫水準を下回ったら決まった量を頼む定量発注と、決まった周期で必要量を考える定期発注も紹介しています。J-Net21「仕入品を管理するには」
どの方式を使うか、どれだけ持つかは、自社の商品と取引条件で検討します。すべての商品へ同じ発注点を置いたり、他社の数字をそのまま使ったりするための説明ではありません。
発注前に、同じ時点の情報を並べる
まずは、前任者が日々補充している定番品を選び、判断に使っている情報を確認します。次の一覧は引継ぎ作業の提案です。特定のシステム導入を前提にはしていません。
- 現物の数量と、販売管理上の数量
- 受注済み・取り置き済みで、ほかへ出せない数量
- 発注済みでまだ届いていない数量と、回答された入荷予定
- 近く必要になる受注と、まだ確定していない見込み
- 仕入先の締切、発注単位、通常と異なる納期の連絡
表を作った日時も残します。昨日の在庫と今朝の受注を混ぜると、その後に出荷された分を二重に使えると考えるおそれがあります。数量の単位がそろっているかも確認しましょう。
特に注意したいのは、発注済みの数量です。まだ届いていない品を、今日すぐ出せる在庫へ加えることはできません。入荷日が確認できないものは、入荷待ちのまま区別します。納期回答が変わった場合に、誰が受注担当へ伝えるかも決めておきます。
いつもの補充と、案件のための仕入れを混ぜない
たまたま大きな現場へ出た数量を、そのまま通常の補充量に置き換えると、工事が終わった後も同じ量を仕入れ続けるかもしれません。反対に、普段の売れ行きだけを見ていると、すでに受けた案件で必要な分を見落とします。
日常の補充分、特定の現場へ納める分、受注前の見込みとして検討している分を分け、前任者がどの情報を見ていたかを聞きます。
J-Net21も、商品に応じて発注方式を検討し、必要なときに必要量を頼む都度発注を紹介しています。小売一般の解説なので、電材卸の最適な持ち方は自社条件へ置き直す必要があります。J-Net21「小売業の在庫費用削減策」
「もうすぐ注文が来るはず」という話には、確認先と次の確認日を付けます。見込みを消すのでも、確定受注と同じ扱いにするのでもなく、判断に残る不確かさとして示します。後任が、前任者の期待まで確定した注文として受け取らないためです。
発注した理由だけでなく、見送った理由も聞く
引継ぎの確認では、ある日の情報を使い、前任者と後任がそれぞれ発注候補を考えます。実注文を二重に送らないよう、机上の一覧で比べてください。
違いが出た商品は、数量の正解を急いで決めるより、理由を聞きます。「入荷予定が未確認」「次の便にまとめる」「案件分を別に確保した」「支払予定を見て責任者へ相談する」。前任者が発注を見送った理由にも、引き継ぐ条件があります。
通常の担当者だけで決められる範囲と、例外として相談する範囲を分けましょう。仕入先変更、普段と違う数量、納期未確定など、どの状態なら誰へ戻すかを明らかにします。前任者の個人連絡先へ毎回電話しなければ決まらないなら、後任の権限や情報が足りていない可能性があります。
発注担当の交代日までに確認すること
一覧ができたら、注文を受ける人、仕入先へ頼む人、入荷を確認する人の間で、どこへ記録するかをそろえます。納期変更や取り置き解除が口頭だけで終わると、補充の判断材料が古いまま残ります。
担当者が休む日の代行者と、未回答の発注を引き継ぐ場所も決めておきます。会社承継で仕入口座や決裁者が変わる場合は、同じ条件で注文できるかを個別に確認します。従来の運用を紙に書けば、取引条件まで続くという意味ではありません。
価格や棚卸資産としての整理は電材卸の在庫評価、出荷後のサービス負担は朝一便・緊急便の採算へ分けて考えます。
「在庫表は出せるが、明日の発注は社長しか決められない」。
その場合は、承継の相談窓口へ、担当者の退任予定と、日々の発注判断が集中している状況を伝えてください。まずは、よく動く商品の発注と見送りの理由を、後任と一緒に確認するところから始めましょう。
資料確認日:2026年10月21日。
参照した一次資料
- J-Net21「仕入品を管理するには」 (2026年10月21日確認)
- J-Net21「小売業の在庫費用削減策」 (2026年10月21日確認)
知りたかったことは分かりましたか
執筆:松本電業株式会社(電設承継パートナーズ)