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公開: 最終更新: 電気工事

会社承継で古い会計システムを解約してよい?電設会社の電子取引データを残す手順

この記事にはモデルケースが含まれます

記事中のモデルケースは、理解を助けるための架空の例です。 当社の成約実績ではありません。

買い手の会計ソフトに切り替え、古いシステムの利用料を止めたい。会社承継に伴う経理の統一では自然な検討ですが、解約を決める前に、過去の注文書や請求書を誰が取り出せるか確かめてください。

仕訳や残高を新しいソフトへ移せても、その根拠となる電子取引データまで移ったとは限りません。旧システムを止める日は、保存対象のデータを確保し、後任が必要な記録を表示できることを確認してから決めます。

保存するデータは請求書だけではない

電気工事会社なら、元請の受発注サイトで受けた注文書や、メールで送った見積書。

電材卸なら、仕入先から受けた納品情報や請求書。盤メーカーなら、電子的に取り交わした注文の変更に関する書類も確認の対象になります。

国税庁は、紙なら保存が必要な注文書、契約書、見積書、請求書などに相当する電子取引データを授受した場合、そのデータの保存が必要と案内しています。主な要件は、改ざん防止、画面や書面で確認できる環境、日付・金額・取引先による検索です。検索は、範囲指定・組合せ検索、又は税務調査時のデータのダウンロードの求めに応じる対応も確認します。検索要件の緩和や猶予措置には条件があり、保存が必要なデータ自体を削除してよいという扱いではありません。国税庁「電子取引データの保存方法」

自社開発のプログラムを使う場合には、システムの概要を記した書類の備付けも必要です。古い年度のデータへ現在の緩和措置を一律に当てはめず、取引時期に応じた要件を確認します。国税庁Q&A・問15、問18

まず確認するのは、会計ソフトの名前よりも、データの入口と保存場所です。経理担当のメール、営業担当が使う受発注サービス、共有フォルダ、証憑保存サービスを挙げ、どの期間の何が入っているかを書き出します。通常の連絡メールまで一律に保存対象とする必要はありません。税務上必要な取引情報を特定します。

同じPDFでも、受け取った方法を分けておく

ここは、移行を依頼する前に確認したい点です。メールに添付されて届いた請求書PDFと、紙の請求書をスキャナで読み取ったPDFは、見た目が同じでも保存制度の区分が異なります。前者は電子取引として確認します。後者は、紙原本の保存に代えてデータで保存する場合に、スキャナ保存の要件を確認します。紙原本を適切に保存したうえで作る閲覧用コピーまで、同じ扱いとするものではありません。

国税庁の令和8年7月版Q&A問102は、電子取引データのシステム移行について、移行中も改ざん防止の措置が必要としています。

タイムスタンプを引き継げない場合でも、移行時の訂正削除を防止する事務処理規程を定めて備え付け、その規程どおり運用する方法を示しています。

ただし、この方法を、同じシステムに入ったスキャナ保存データも含めて一括で適用することは認められないと注意しています。「全部PDFで取り出せば終わり」とせず、保存区分を分け、移行方法を税理士とサービス提供元に確認しましょう。国税庁「電子帳簿保存法一問一答・電子取引関係」問102

会計ソフトで作成した帳簿を電子保存している場合も、電子取引とは別の確認が必要です。国税庁のQ&A索引は、電子帳簿・電子書類、スキャナ保存、電子取引に分かれています。移行依頼書にも同じ区分を付けると、確認漏れを減らせます。

「解約しても見られる」はサービスごとに違う

法令上の保存期間と、サービスが解約後にデータを置いておく期間は、分けて確認します。

2026年10月19日に確認した公式FAQでは、NTTファイナンスの楽クラ電子帳簿保存サービスは、利用期間の最終日の翌営業日以降に登録データを削除するため、終了までのバックアップを案内しています。同サービスのFAQ

同日に確認したマネーフォワードのクラウドBoxの公式FAQでは、有償プランを解約しても、過去に保存したファイルの閲覧・検索が可能と案内しています。これは有償プランの解約についての説明であり、退会や事業者データの削除まで同じ扱いと考えないようにします。クラウドBoxの解約後データに関するFAQ

自社の契約について、次の点を提供元へ確認してください。

  • 解約後も閲覧・検索・ダウンロードできるか
  • データが削除される時点と、復旧できる範囲
  • 本文ファイル、検索項目、必要な履歴等を取り出す方法
  • 旧システムを閲覧用に残す選択肢と、その費用

保存要件に合う取り出し方が分かる前に、退会やアカウント削除を進めないことが大切です。

「バックアップ」という名前のファイルがあっても、専用ソフトがなければ読めない形式や、添付書類が別管理の形式では、後任が利用できるとは限りません。

移行完了は、後任が一件の取引をたどって確かめる

ここからは、移行漏れを調べる実務上の確認方法の提案です。例えば過去の一つの工事を選び、後任が取引先と日付から注文書を探し、請求書を開き、仕訳や工事台帳の記録と照合してみます。これは法令の全要件を判定する試験ではなく、移行漏れを見つける実務上の確認です。

直近の請求書だけでなく、保存期間の古い年度、訂正のある取引、複数の添付がある注文なども選びます。単にファイルが存在するかに加え、文字が読めるか、必要な検索ができるか、書面に出せるかを確かめます。確認に使った取引と、不足したデータの対応状況を記録しておきましょう。

全件の移行を確認する際は、期間別・データ種類別に件数等を突き合わせ、抜けがないかを調べます。形式が変わって件数も変わるなら、その理由を説明できるようにします。旧システムの説明書や、従来の保存方法が分かる資料も残しておくと、税務上の確認を頼みやすくなります。

解約を延期して閲覧用に残す方法にも費用と管理の負担があります。

すべてを新システムへ移す方法、保存用の環境へ取り出す方法、旧環境を維持する方法について、保存要件と残りの期間、管理できる人を合わせて比べます。

承継する日と、保存が終わる日は別に考える

法人税法上、法人の帳簿書類は原則として、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存します。青色申告書を提出した事業年度で欠損金額が生じた場合や、青色申告書を提出しなかった事業年度で災害損失金額が生じた場合は10年間です。ただし、これらの年度が2018年4月1日前に開始した場合は9年間です。書類を作った日から一律7年で処分できる、という意味ではありません。他法令や契約上の保管も含め、廃棄できる時期は税理士等と確認します。国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間」

会社承継では、どの法人のどの年度のデータかを保ち、保存責任者と問い合わせ窓口を決めます。

買い手が一部の事業を引き継ぐ場合には、売り手に残る記録もあります。すべてを渡せば保存の問題が解消するとは考えず、必要な引渡し範囲と双方の閲覧方法を調整してください。

最初の作業は、解約候補のサービスを並べ、そこに入っているデータと取り出し担当を付けることです。承継準備チェックリストの資料準備と合わせて進めれば、譲渡日直前に古い記録を探し直す負担を減らせます。

システムの解約と経理担当の交代が重なる場合は、承継の相談窓口で、引継ぎの順番から整理できます。保存要件の適合は税理士と提供元に確認し、過去の取引を説明できる状態を残してから、新しい運営へ移りましょう。

人が替わる際の業務分担は、家族の経理担当者が引退するときに分けて整理しています。

参照した一次資料

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執筆:松本電業株式会社(電設承継パートナーズ)

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